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ドラゴンの卵を孵して、大切な家族と王国一周旅行がしたい ~無職が無色で無双する~  作者: コヨコヨ
第七章 悲惨なフラーウス領

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フラーウス領に出発

「勉強以外に何かしたいことでもあるの?」

「ぼくはキースさんと愛を育みたいとずっと思っていますよ」


 ミルは僕の耳もとで呟き、耳たぶに食らいついてくる。唇でハムハムとされているだけなので痛くはない。


「イチャイチャするのも大概にしてほしい。全然集中できない」


 トロンくんは客室の扉を開けて、ぷんすかと怒りながら抗議してくる。勉強にすっかりはまってしまったようでミルよりやる気満々だった。

 確かに、ミルは少々うるさいかもしれない。


「羨ましいからって、ピーピー言っちゃだめよー」


 ミルは僕にしがみ付きながら、トロンくんに言い放つ。トロンくんは力強く扉を閉めてしまった。あまり強く締めると扉が壊れてしまうからやめてほしい。


「ミル、準備は終わっているの?」

「もちろん。新品の下着をトランクに沢山詰め込みました」

「お金の無駄遣いはしたらダメだよ」

「無駄遣いじゃないですよ。気持ちを高めるために必要なんです。キースさんがウハウハしちゃう姿が目に見えるようです」

「また、紐みたいな下着を買ったの?」

「へぇー、キースは紐みたいな下着でウハウハするのね」


 シトラは聞き逃さなかったわよといわんばかりに、耳をピクピクと動かしている。


「二人共、トロンくんの勉強の邪魔にならないよう話し合ってね……」


 僕は鉛筆をゴリゴリと削りながら丸くなった先を尖らせる。勉強なら、羽根ペンよりこっちの方が使い勝手が良かった。すでに大量に購入し、フラーウス領にも持って行くつもりだ。


 明後日の出発までに準備を終わらせ、三月一五日に王都を出る。

 一年前にインディクム領の学園に入ったクルス君は無事、初等部二年生にあがれたらしい。今でも頑張って勉強しているところだろう。


 僕たちは今年、高等部の卒業資格を取り、来年に大学の入学を目指す。簡単じゃないかもしれない。

 すでに、高等部卒業資格試験の内容が配布されており、八月に各領土で試験が行われる。

 年二回あり、一度に全て受かる必要はない。

 九科目あり、国語、地理、歴史、公民、数学、生物基礎、魔法学基礎、地学基礎、外国語を受けて、試験に合格出来れば高等部卒業の資格が取れる。簡単ではないけれど、不可能でもない。


 勉強はどこでも出来るけれど、どうせならば学園で勉強したい。

 年が近い者たちがいれば、友達ができるかもしれないし。少しでも、仲を深められたら良いなって思っている。白髪の僕だと簡単じゃないかもしれないけれど。


 ☆☆☆☆


 フラーウス領に出発する日がやってくる。

 トロンくんを屋敷に預け、駅に向かった。

 イリスちゃんに申し訳ないと思いながらも姫を危険にさらすわけにはいかないため、このまま逃げるようにしてフラーウス領に向かう。


「この人数で移動するのは、なんか久しぶりな気がします」


 ミルはトランクを持ちながら列車の一番高い貸し切り車両の中ではしゃいでいる。服装は春だからか、肌を曝している。

 短パンと、薄い布地の上着姿が日差しに照らされ、白い肌をより際立たせている。

 着ていても疲れない品が好きだからか、気温が温かくなって嬉しそうだった。


「そうね。久しぶりね」


 シトラは春に着やすいワンピースを身に纏い、外の空気を精一杯感じ取っていた。風に揺られる銀色の髪が生糸に見える。いつもはメイド服の姿なので、私服を身にまとっている彼女の姿は珍しい。その分、しっかりと見言ってしまう。


 アルブももちろん僕と一緒におり、移動を楽しんでいる。フラーウス領に行くにつれて、気温が下がってしまうので二人共もう少し暖かい恰好にした方がいい気もする。

 まあ、到着まで時間がかかるので日が経てば問題ないか。


 列車の中はあまりやることがない。そのため、いつも通り勉強に精を出すわけだけれど、ミルが僕に甘えてくるのも変わらない。


「にしても、この鉛筆は便利ね。列車の中だとガタつきでボトルが倒れそうになる時があるから、安心して文字が書けるわ」

「そうだね。でも、文字が消えちゃうから重要な書類に使えないらしいよ。それでも、勉強だけならこっちの方が使い勝手がいいよね」


 僕とシトラは列車の中で勉強を続け、ミルもやる気が戻って来たら勉強を再開した。

 アルブはベッドの上ですやすやと眠り、いつも通り過ごしている。

 昔は列車に乗るのが怖かったけれど、少しは慣れたと思う。時に怖くなってしまう時はあるけれど……。


 列車の移動中、少しずつ気温が下がっているような気がした。

 平野のような何もない景色が続く。

 何か人が作った品はないのだろうかと窓を眺めていても、特に何もない。あまりにも殺風景。でも、麦を育てるならちょうどいい気がした。

 今は春だから、種まきでもしているのだろうかと勝手に想像する。でも、フラーウス領の人と思われる者は誰もいない。


 列車の駅になる村や街に到着すれば、多少は人影が見られると思ったけれど駄目だった。


「えっと、フラーウス領の街とか村って、どこにあるんだろう」

「全然見当たりませんね。ここら辺から、見えてきてもおかしくないと思うんですけど」

「全員、フラーウス領の中心部にいるんじゃない?」


 僕たちは窓際の方に視線を向けながら考え込んでいた。

 二年前、第一王女の影響でフラーウス領の者たちは皆、壁の中に集められてしまったのだろうか。可能性はないと言えない。

 列車が駅に止まるが、人がいる気配がなかった。


 他の車両に視線を向けるがフラーウス領に行く者も、人数が少ない。こんなに少ないと、何かしらの原因があると思われる。


 フラーウス領に向って進む列車の中で一〇日ほど過ごしたころ、息が白くなりそうなくらい凍える寒さになっていた。朝っぱらだからだろうか。冬場に近い寒さな気がする。

 窓を開けて外を見てみると地面が黒い。黒い地面かと思っていたら、列車の移動音によって波打っている。そのまま、飛びあがった。


「なっ!」


 黒い蝗が霧のように辺り一面に広がっており列車に体当たりしてくる。窓をすぐに占めたが、何百匹も入り込んできていた。


「きゃあっ! む、虫っ!」


 シトラは体を丸めながら怖がっていた。ミルの方は表情をげんなりさせて叩き落としている。それでも倒せず、攻撃的で噛みつかれていた。


「い、いった! 蝗に噛まれました!」

「あ、あれがフラーウス領を襲っている蝗害……、う、嘘でしょ……」


 僕は生易しい考えを持っていたらしい。虫なら、大したことないでしょと。ただ、僕が目にしたのは巨大な魔物のような異様な雰囲気を放つ蝗の大群。でも、この数でまだ全体じゃないのかもしれない。


 アルブが蝗に食らいつき、ムシャムシャと食べる姿はシトラを驚愕させていた。

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