76
私は門番、名前は無い。
何故名前が無いのかって?それは私が門番になる為に、主によって生み出されたからである。
強いて言えば門番が名前かな?
私の仕事は、神殿に来る者を誰何する事だ。
誰何とは、誰だお前、何しに来た?って事を、聞く係だと思ってくれ。
まぁ、此処は主の御膝下、不埒な輩なんぞ早々来ない、来たとしても私が排除する。
そう思っていた時期が、私にもありました。
その日は珍しく転移門が起動した、…誰かが来るな。
油断無く観察する、人間?と、犬…いやアレは――。
ううむ、邪な気配は感じない、寧ろ何か神聖な祝福の力を感じる。
何処かの使徒だろうか?
此方の存在には、気付いていないのかな?何やら門の前で騒ぎ出したぞ。
騒いでいたと思ったら、クルクルしだした。
何がしたいのだこの二人は。
回りだしてから数分…何時まで回っているのだろう?
神殿に用があるんじゃないの?早くこっち来てよ!誰何させてよ!
来ない、こっち来ないよあいつら。
何時まで回ってるんだよ!…もういいよ、こっちが行くよ。
足は肩幅に、背筋を伸ばし、顔は少し上向きに、目に力を入れて、威圧する様に、腹の底から声を出し一言。
「誰か。」キリ
セリフと共に槍を、カッ!っと地面で鳴らす。
き、決まった、完璧だ、この瞬間が何時も気持ちいぃ~!
訪問者がいないとこれが出来ない、門番の唯一の見せ所、暇過ぎてシュミレーションはバッチリだ。
あれ?まだ回ってる。
聞こえなかったのかな?
ならもう一度。
「…誰か。」キリリ
決まった、コレも完璧だ。
今度は先程とは違い、左足を半歩引き、体を少し斜めに、胸を気持ち張り、顎を引き、睨みつける様に誰何した。
ふふ、どうだい凄いだろう?私の誰何は108式まであるのだよ。
…嘘でしょ?
まだ回ってるんだけど、何なのこいつ等。
ん~、流石にそろそろ門番的に限界ですね、真面目に誰何しましょう。
「ん!んん!誰か!!」
「うるせぇ!」「ウルサイ!」
「えぇ…。」
…処そうかな。




