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6話

私が階段を上がっていると慌てて追いかけてくる人影があった。


ぜいぜいと言いながら階段をかけ上がってきたのはまだ若い女性だった。

「あの。遅れてすみません。私、この宿の者でして。お嬢様様方をお部屋に案内致します」

「あ。もしかして、宿屋のご主人の娘さんかな?」

「そうです。名をアンネと申します」

アンネさんという宿屋の娘さんはにっこりと笑いながら自己紹介した。そして、私とルアンさんを二階の南側の部屋に連れていってくれる。私たちが南側の部屋に入るとウィルたちを案内してくると言って一旦、出ていく。私とルアンさんは部屋のソファーに座る前に置いてある荷物を片付けた。

「イルゼ様。こちらはわたくしがやります。お座りになっていてください」

ルアンさんにそう言われたけど私は首を横に振った。

「いいの。私が平民の育ちなのは知っているよね。手伝わせてほしいんだ」

「…わかりました。けど、重い物などはわたくしにおっしゃってください」

「わかった。じゃあ、カバンとスーツケースを開けよう」

そう言ってカバンのチャックやスーツケースを開けた。とりあえず、着替えや細々とした物を出したりする。洗面用具やお風呂用のシャンプーやリンス、タオルを出した。

とりあえず、ブラシや歯みがき粉などもベッド脇の机に置いた。ルアンさんも明日に着る用のドレスやコルセットを部屋に備え付けのハンガーに掛けてクローゼットに入れた。

黙々と荷物の整理もやって気がついたら壁掛け時計の針が午後二時を回っていた。

「イルゼ様。片付けも終わりましたし。お茶にしましょう」

「うん。そうしてくれるかな」

頷くとルアンさんは備え付けのティーセットで紅茶を入れ始めた。部屋に紅茶の良い香りが漂う。

ルアンさんは紅茶とカバンから出した焼き菓子を私の前に置いてくれた。紅茶はフルーティーな香りがして焼き菓子も刻んだレモンやオレンジが入ったパウンドケーキである。

私はパウンドケーキを手で掴んで食べた。ルアンさんは何も言わない。好きなようにさせてくれる。

パウンドケーキはオレンジとレモンの酸味が効いて甘味もありあっさりとした味わいだ。紅茶もアッサムでよく合う。

「おいしい。このパウンドケーキ、侯爵家のお手製なの?」

「そうです。ちなみにわたくしが料理長と作ったんです。レモンやオレンジはラム酒に漬けた物ですので保存がききます」

「ラム酒って確か。南方の国のお酒だっけ」

「そうです。アマーリエ侯爵家は南方や東国と交易をしていますから。ラム酒も入手できます」

ルアンさんはにっこりと笑いながら教えてくれる。私は興味深く頷いて紅茶を口に含む。ルアンさんにもパウンドケーキを食べるように言った。最初は遠慮していたけど二、三度勧めたら一個だけ食べる。

彼女もおいしいと言って相好を崩していた。それを笑いながら眺めたのだった。


そうして、紅茶とパウンドケーキで休憩した後、お風呂に入る。ルアンさんが髪や体を洗ってくれた。

シャンプーで髪を念入りに洗い、リンスで整える。体も石鹸で洗ってもらった。

けど妙に気恥ずかしい。それでも、ルアンさんはてきぱきと私にバスタブから上がるように言う。

そうして、体や髪の水気をバスタオルで拭いてもらった。簡素なコルセットをつけて足首までの丈のワンピースを着る。ワンピースは淡い水色で可愛いというよりも大人っぽいデザインだ。

髪も丁寧にブラシで梳いてから香油を塗りこむ。乾いてきたら上の髪の毛だけをハーフアップにして編み込んだ。

バレッタでまとめてもらい、お化粧も薄くして部屋から出る。ルアンさんが言うには食堂が一階にあるらしい。言われた通りに一階に下りて食堂に向かった。中には人がおらず、食堂はがらんとしていた。

宿屋のご主人や奥さんがやってきて私やルアンさんを席に案内してくれる。しばらくして食事が運ばれてきたのだった。

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