表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/25

一人足りない…

 朝、眠い目をこすりながらリビングに向かう。

「おはようございます、太市さん」

「おはようございます、ひかりさん」

 挨拶を交わしていると、先に席に着いていた早苗さんが俺に目をくれる。

「おはよう、神代くん、ちょっといい?」

「?」

 俺はテーブルに着く前に捕まって風呂場の方へ、

 でも、今日の朝食のチェックは忘れない。

 ゴハン、ベーコンエッグ、サラダにスープ、洋食風かな。

 脱衣所に連れ込まれて、早苗さんはドアをロックする。

「なんだかひかりと仲好くなってるみたいね」

「え?」

「太市くんなんて呼ばれてたわよね」

「はぁ……」

「朝、まいや籾もお兄ちゃんみたいに言ってたわよ」

「そうですか」

「話は聞いている、私は不安だよ」

「何が……です?」

 俺はどっちかというと、みんなと仲良くなっているように思ってた。

 それを不安がられるなんて……

「越野くんはなんとも思わないの?」

「何が……です?」

「越野くんはラッキーだと思っていてもだね」

「そのラッキーはなんだか嫌なんですけど」

「どっちにしても、私はそのラッキーがいつか間違いになるんじゃないかって思ってるんだよ」

 むう、それは確かに気をつけないといけないな。

 みんなかわいいから、ついついムラムラしちゃうかもしれない。

「いいかい、風呂場には鍵があるんだ」

「!!」

「風呂に入る時は鍵をするんだ、ここ」

 って、鍵をかけてみせる早苗さん。

「いいか、もう間違いを起こすんじゃないぞ」

 腕を組んで厳しい目をする早苗さんに俺は頷いたが、すぐに足音が近付いてきて、ドアがガタガタ言い出した。

「わーん、トイレー!」

 穂のかちゃんの声だ。

 俺、早苗さんに、

「ここ、トイレもあるんですよね」

「そ、そうだった……」

 って、ガタガタしていたドアが鎮まる。

 次の瞬間「バンッ」なんて言ってドアが強引に開かれた。

 穂のかちゃんがいそいそと入って来て、トイレのドアに消えて行く。

「あの、早苗さん」

「なんだい、越野くん」

「鍵、壊れましたね」

「うむ、見事にな」

「穂のかちゃんって、すごい力、強いですよね」

「ああ、小さいのにな」

 早苗さん、澄まし顔で「コホン」なんて咳払いして、

「ともかくこれ以上間違いを犯したら、私が許さんっ!」


 バスに揺られて学校へ。

 俺はひかりさんのとなりで、

「早苗さんに注意されたんですよ」

「昨日のはわたしのせいだから、ごめんなさい」

「俺が風呂に入ってると、誰か来る感じがするんだけどな~」

「今まで女ばかりだったから、みんな注意が足りないのかしら」

 俺は手であくびを隠しながら、

「あの、ひかりさん、朝のバスで寝過ごした事あります?」

「え?」

「すごい眠い」

「寝てないの?」

「いや……食事の後にこの揺れは眠くなりません?」

「それはちょっとあるかも……」

「ひかりさんのゴハン、おいしいからついつい食べ過ぎちゃってるのかな?」

「ふふ、うまいのね~」

 って、ひかりさん、真顔で俺を見つめて、

「ねぇ、太市さん」

「はい?」

「わたしのゴハン、おいしい?」

「ですね~」

 俺は家の食事や名古屋の頃の友達の家の食事を思い出してみた。

 ついでに外食も思い出したり。

「うーん、ゴハン、すごいうまいかも」

「!!」

「この辺田んぼばっかりだけど、お米もおいしいのかな」

 って、ひかりさんの目が今までになくキラキラ。

 スッと俺の手を取って、

「太市さんっ! もっと言ってっ!」

「お、おいしいですよ?」

「もっと、ゴハンがおいしいって!」

「ゴハン、おいしいですよ」

「もっと! もっと言って!」

「変なの……ゴハンおいしいです」

「うふふ」

 ひかりさんのうれしそうな顔が見れたのはよかったけど……

 なんだかちょっと、変な感じが。

 俺がじっと見つめていると、それに気付いたのかひかりさんは握る力を強くして、

「ふふ、太市さん、これからもおいしく作りますね!」

「よ、よろしくおねがいします……楽しみだなぁ」

「えへへ、今夜は何にしようかな~」

 話している間はよかった、でも、会話が切れるとまたまぶたが重くなる。

 何か話して……俺はなんとなく、

「あの、ひかりさん」

「何です?」

「確か米神荘は俺も入れて8人なんですよね?」

「ええ、そうよ、わたし達は7人姉妹なの、女ばっかり」

「7人なんですよね?」

「そうよ」

「早苗さん、芽衣さん、ひかりさん、まいちゃん、籾ちゃん、穂のかちゃん」

「?」

「一人足りません」

「……」

 ひかりさんは小さく頷きながら指折り数えていたけど、

「あ、みのり姉さん、抜かしたわね」

「みのり姉さん……姉さんがもう一人いるんですね!」

「えっと、太市さんはきっと会ってると思うんだけど」

「??」

「確か最初に迎えに行ったの、みのり姉さんなんだけど」

 バス停にいた女の人だ、あれがみのりさん。

「みのり姉さんはいつもフラフラしてるから……でも、いきなり現れるから」

 って、ひかりさん、また厳しい目で俺を見て、

「お風呂場にいきなり現れるかも!」

「あの、俺が覗いたならなんだけど、入って来られるのは俺のせいじゃないです」

「あ、そうだった、わたしがやらかしたんだった」

 ひかりさん、自分で頭をコツンしながら微笑んでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ