第十四話:買い物道中
第十四話
今日もバイトが終わった。明日からはバイトがないし、ゆっくり休めるぞ!最近ゆっくり出来なかったからな・・・。
そんなことを考えて、俺はのんびりと帰宅する。そのころの俺は有頂天だった。家へたどり着いた瞬間、そんなことは言えなくなった・・・。
「やっほ〜!空!遊びに来たよ〜!」
玄関を開けた瞬間、声が聞こえた。ピシャリとドアを閉じる。今のは幻覚と幻聴だ。花梨がこんなところへくるわけ・・・。
「なんでドア閉めるのさ〜?せっかくこんな美人が遊びに来ているのに〜。」
すぐにドアが開いた。幻聴じゃなかった・・・。なんでいるんだよ!
「美人は否定しないけど、ちょっとさぁ・・・。」
「な〜に?」
満面の笑みを浮かべた顔で言ってくる。こいつ・・・、確信犯だろ・・・。絶対気づいてる。
「くるなら連絡してからこい!こっちの都合があるだろ!」
「いいじゃ〜ん。久々に空の料理が食べたくなったし〜。着替えもあるし〜。この前置いておいたでしょ?玄関に。」
確かにどでかい荷物があった。あの驚きの光景を作っていたのはこいつか!それがわかった瞬間、俺はヘッドロックをかけてやった。
「痛い痛い!ギブ!」
離してやる。ほんとに痛かったのか、頭を押さえている。
「ったく、着替えの話をしたってことはここに泊まるのか?」
「うん。二泊三日で。」
まじかよ・・・。食材ないぞ?大変だ・・・。
「わかった。荷物は俺の部屋ん中においてあるから。じゃあ今から買い物行くからな。」
目の前の元凶はきょとんとした顔をする。こいつめ・・・。すぐ得心がいったのか、納得した顔になる。そして俺に声をかけてきた。
「仕方ないから私も行ってあげるわよ。」
なにが仕方ないんだ?全然意味がわかんないぞ?こんなやつが、どうして頭良いんだ?納得いかない。それを押し止め、言っておく。
「まぁいいけど?財布とってくるからちょっと待ってて。」
そういい、荷物を置き、財布をとって外へでた。
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スーパー○屋。今日はそこに買い物へ行った。
「ね〜空〜。なに買うの?」
「今日は・・・、親子丼だから卵と鶏肉とたまねぎかな。というわけでタイムサービスに行くよ。」
今日は、たまねぎがものすごく安く出るらしい。一個10円とか、確かそんなもんだったはず。俺は燃えていた。
「たまねぎが安くなってるから、できるだけとってきてね。俺も行くけど。」
「りょ〜かいっ!」
そしてタイムサービスが始まった。とろうとしてもおばちゃん軍団がいて、取れない・・・。
やっと一個つかんだところで終わりを告げてしまった。一個じゃあな・・・。
「そら〜っ!どうだった?」
俺はそちらを見ずに簡潔にいう。
「一個だけ・・・。」
「情けないなぁ・・・空。私が取ってきたから大丈夫!」
その自信満々な声を聞き、俺は振り返った。と同時に唖然とする。それもそのはず、花梨は6個もたまねぎを持っていた。
「どうやって、そんなとったの・・・?」
自分でもぬけた声になったと思った。でも、それが気になる。
でも花梨はにっこり笑ってごまかした。たまには話してくれよ・・・。
でも花梨をタイムサービスに連れて行くと、ものすごく成果を挙げることがわかった。
安く会計を済ませて、俺はとても上機嫌だ。成果を挙げた当の本人はのんびりと鼻歌を歌いながら歩いているけど。
そういえば花梨は、ここになにしに来たんだろう?
「なぁ花梨。」
「な〜に〜?空。」
「なにしに来たんだ?」
花梨は答えるか答えないか迷っているようだ。結構時間がかかったからまだ言えない内容なんだ、ってことは理解できた。
だから俺はいってやる。
「いえないなら、言わなくていいよ。」
花梨はそのときの俺の顔を見て、すごく驚いていた。どうして?
そして俺たちは歩いていく。そして反対の道からかけてくる人がいる。そして見覚えのあるシルエットが浮かんできた。
「あれ・・・?霧月先輩?なにしてるんですか?」
「空君・・・?っ・・・!」
まず俺の顔を見て、少し先輩は笑顔を浮かべた。その後花梨を見て先輩の顔は悲痛な顔になり、駆け出した。
なんで?
「先輩!?」
「空!今すぐ追いなさい!」
その声には強制力があった。そして俺は荷物を花梨にわたし、走り始めた。
花梨side
今日私がここへ来たのは確かにわけがある。それを空に見破られたのは計算外だった。そこまで鋭くないって思っていたから。
でも、私は答えられなかった。空にそのことを言っていいかわからなかったから。
だけど、いわなかったことをすぐ後悔した。
あんな、全てを諦めたことがあるような儚い表情を見せられたら・・・。なんか、ものすごく自分が小さく見える。
あんな表情をしないで!私は・・・、そう叫びたかった・・・。
そして空の先輩がやってきた。私のせいでその人と仲が悪くなってはだめ!そう思った私は、今度こそ声を出せた。
「空!今すぐ追いなさい!」
空は追っていった。そして私は自嘲する。いつも、肝心なところで手が届かないのよね・・・。
さつきside
空君のバカっ!私とはあまり一緒に歩いてくれないくせに、なんであの女とは一緒に歩いているのよ!
私は泣き叫びたかった。空君は私の彼氏なのに・・・。そこまで考えたところで顔が赤くなる。
あの子は誰?どうして私とは歩いてくれないの?どんどんいやな感情が私を支配する。
「先輩!」
空君の声がする。追ってきてくれたんだ。うれしいけどなんか逃げちゃう。
そして腕をつかまれた。
「離してよ!」
うれしいのに。体と心は相反する行動をとってしまった。でも、それでも空君は手を離さず、しっかりと私真摯な瞳で見つめてきていた。
そのきれいな瞳に私は少し感情が収まる。その瞬間を見計らったのかは知らないけど、空君は声をかけてきた。
「先輩。あれは・・・、ぼくの従姉弟なんです。父さんのほうの。」
「え?そうなの?」
聞いた瞬間私は顔を赤くする。何も聞かずに立ち去った自分のバカさが恥ずかしくなったのだ。空君がうそをついているとはまったく思いもしないくらい、しっかり私の疑問に答えてくれた。
そして二人してゆっくりと、従姉弟さんのところへ戻っていった。
空side
何とか誤解解けてよかったよ。本当に危ないし、花梨には感謝してる。俺の脚を動かさせてくれたことはありがたい。
二人が挨拶をしてる。花梨が余計なことを言わなきゃいいけど。
「それで、空とは付き合っているんですか?」
「花梨!」
俺のあわて方と、先輩の顔が真っ赤になったことですぐ知れた。爆弾投下はやめてほしい。
「空とはどこまで行ったんですか?」
「か〜り〜ん?いい加減にしろ!」
そしてかりんを強制的に引きずっていく。
家へついてつかれきったのか俺はすぐ寝てしまった。
朝目覚めたら、花梨はいなくなっていた。そしてテーブルの上にメモがある。
楽しかったからね〜!またくる!親子丼作っておいたから!
花梨
ありがとう。俺は何かに感謝したくなった。
花梨が作った親子丼は、たまねぎだらけだった・・・。しかも四苦八苦した跡が残ってるし。
「もうちょっと料理っての学べよ!」