祝勝の宴
以前投稿していた軍師日記の再投稿です。ただしベースにしているだけなので、中身については大幅に書き直しがしてあります。投稿間隔は不定期になるかもしれませんが、よければお付き合いください。
太陽大陸海興王国 高柳泉
大陸歴1305年
「恵楽の地にて我が王の示された策により、燕国の者たちは蜘蛛の子を散らすかの如く逃げ帰っていきました。この場にいる皆を代表し、大西将軍李雲玉がお祝い申し上げます。まことにおめでとうございます!!」
「「「おめでとうございます!!」」」
王宮の大広間にて執り行われる祝勝の宴。下座の最前列にて祝いの言葉を述べた白髪白髭の大男の言葉に続いて、背後に控えている男たちが一斉に祝いの言葉を述べて頭を下げる。
その圧は俺が立っている最後列に風を起こすほどの勢いで押し寄せ、どれほどのレベルで発声しているのかと驚くほどだった。
だが固まる俺の隣より小さな咳払いが聞こえ、慌てて隣人と同様に頭を下げる。チラリと視線を上げると、王座に座っておられる御方は満足げに頷いておられた。
その人物こそ、この太陽大陸の南部に位置する海興王国の長、高白麗である。歳は俺より少し上くらいで、たった一代で小さな領地から今の版図にまで勢力を広げた傑物であるとか。
どうして日本で18年間生きてきた俺がそんな場所にいるのかと言えば…。
「此度の勝利は皆の働きによるところが大きかった。長らく悩みの種となっていた燕国の者たちに痛手を負わせられたのだからな。もちろん恵楽の地で戦った者たちの功については理解しているが、此度の第一功労に相応しき者はこやつで間違いないであろう。柳泉よ、前へ」
突如として呼ばれた名前。ギョッとして思わず顔を上げてしまったが、誰も何も咎めない。少しばかり厳しい視線が突き刺さるものの、王である白麗様に呼ばれた人間に苦言を呈することが出来る人間などこの場にはいないわけで。
ただしこのような場において、呼ばれてそのまま出て行ってよいものかどうかが分からない。隣人に目を向けると小さく頷かれ、ようやく俺は覚悟を決めて足を踏み出した。
「柳泉よ、此度の勝利はおぬしの働きによるところが大きい。我らの知らぬ地よりやって来た異国人がこの国が数年抱えていた問題を早々に解決してしまったのだ。何か褒美を取らせねば、私の面目が立たぬであろう。遠慮なく申せ、何が欲しい」
こんなことになったのはほんの些細なやりとりからだった。ただ思ったことを口にしたことがきっかけで、俺の知らない戦場で何やらとんでもない成果を上げたらしい。それもすべて後から聞いた話である。
だが俺の言葉が結果的にこの国に勝利をもたらしてしまった。何度聞いても正気の沙汰とは思えない話であると身の震えが止まらないものの、白麗様直々の褒美となると慎重に考える必要がある。圧倒的弱者であるこの俺にとって何が最も求めるべきものなのか。どこが無礼にならないラインなのか。
だからこそ真っ先に出た褒美はこれだった。
「で、では私の身の安全を約束していただければ」
チラリと王座の方を見た。姿勢よく俺を見る白麗様は何を驚いておられるのか、随分と目を見開いておられる。
「そんなことは当たり前の話であろう。他に何か求めぬのか」
「…」
「欲のない男であるな。だからこそ幼い朱光が懐いたのやもしれんが」
何を言われてもやはり身の安全が第一である。どれだけ他を求められてもすぐには何も出てこないし、現状においてはそれさえ守ってもらえれば他は至れり尽くせり過ぎて必要なものなんてないくらいだ。
それにどこの狗とも知れぬ俺は危険視しておられる方々がこの王宮には大勢いるからこそ、白麗様にはここで手出しができないように宣言してもらいたかった。
「まぁよい、今はそれでよしとするとしよう。ただしそれは褒美と認めぬ。いずれ何かを欲した際に遠慮なく述べるがよい」
その白麗様の言葉に大広間はざわつく。そこらかしこより「王!?」だとか、「いけませぬ!」だとかとにかく白麗様を心配する声が上がった。
しかしその声は明らかに俺に視線を向けながら言われており、あまりにも居心地が悪すぎてさっさと退散することを決意する。作法なんてものは何も分からない。ただ「ありがとうございます」と頭を下げて、やや俯きながら最後列へとそそくさと戻る。
その後は臣下の方々への褒美が与えられ、祝勝の宴が終わると白麗様は大広間から出て行かれた。続いて臣下の方々が俺をとんでもない目で見ながら出て行かれる。
いったい俺がどうしてこんな悲惨な目にあっているのか。実は俺にもよくわかっていないのだ。
とは言っても今に至る過程の話など誰が聞いても鼻で嗤うんだろうけどな。
今投稿も最後までお付き合いしていただきありがとうございます。
次回投稿は未定です。更新をお待ちくださいm(_ _"m)




