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神に転生したが、石像から動けない ―管理社会における神性観測記録  作者: 鷹宮ロイド


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第28話 意味を探す人々

 集まりは、誰かが呼びかけたものではなかった。


 日時も、目的も、決められていない。

 ただ、同じ時間帯に、同じ場所に、人が集まるようになった。


 神殿の前。


 祈りはない。

 儀式もない。


 立っているだけだ。


 最初は、二人だった。

 次の日は、三人。


 会話は、ほとんど交わされない。

 挨拶も、名前も、聞かない。


 しばらく立って、帰る。

 それを、何度か繰り返す。


 誰も、それを問題視しなかった。


 集会ではない。

 抗議でもない。


 ただの、個人の行動だ。


 リア・ノートは、その様子を遠くから見ていた。


 彼女は、近づかなかった。

 声も、かけなかった。


 距離を保つことが、必要だと感じていた。


 そこにいる人たちは、何かを求めている。

 だが、それを言葉にしていない。


 だから、触れない方がいい。


 ある日、立っていた一人が、ぽつりと呟いた。


「……ここだと、考えなくていい」


 誰に向けた言葉でもない。


 それでも、周囲の空気が、わずかに緩んだ。


 別の人が、小さく頷く。


「分かる気がします」


 それだけだった。


 理由の説明はない。

 効果の証明もない。


 それでも、その言葉は、拒まれなかった。


 エリオ・クレインの元にも、報告は上がっていた。


「神殿前の滞留が、微増しています」


「問題は?」


「ありません。規定内です」


 それで、話は終わった。


 誰も、それ以上を求めない。


 制度は、行動を制限しない。

 危険がなければ、放置する。


 だから、この集まりは、育っていく。


 宗教にはならない。

 組織にもならない。


 規則がないからだ。


 ただ、「ここに来ると落ち着く」という感覚だけが、共有されている。


 石像は、何もしない。


 語りかけない。

 奇跡を起こさない。


 ただ、在る。


 俺は、それを見ている。


 この場所は、かつて、責任を引き受ける場だった。

 祈りがあり、願いがあり、失敗も押し付けられていた。


 今は違う。


 誰も、俺に何かを頼まない。


 だから、俺は、何も奪わない。


 それでも、人は集まる。


 意味を、探しているからだ。


 答えではない。

 正解でもない。


 置き場を。


 夕暮れ時、神殿の前には、五人が立っていた。


 互いに干渉せず、同じ方向を見ている。


 それだけで、十分だった。


 世界は、正しいまま進んでいる。


 その正しさの隙間に、

 誰にも管理されない時間が、生まれ始めていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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