7-22
「黒い茨!」
リリアーヌが放つ魔法の呪文。
闇の足元に花が咲き誇る。春の花。夏の花。秋の花――だけど枯れている花は一つもない。
闇を包み込むように延びてきたのは棺桶だった。
否。地獄の扉のような蓋が錆びついた音を軋までながら口を開く。内側にはびっしりと無数の針が敷き詰められている。中に入ったものを救済する目的では断じてない!
魂を未来永劫苦しめる鉄の箱――アイアンメイデンだ。
メイデンの蓋が閉じて、闇を飲み込む。
だが闇はまるで軟体生物のようにメイデンの隙間という隙間から這い出て、再び人の――堕天使の形を取り始める。まるで効果がない。
「海に角砂糖を混ぜている気分ですわね。魔法使いとしてのプライドが傷つきますわ」
「いやー。面白い展開になってきたねぇ。お仕事はこうでなくっちゃ。どうする? リリアーヌ。どうししよう? リリアーヌ」
今日のおやつ何がいい? みたいな気軽さでレーツェルが問うた。
想定外の事態にもかかわらず、とても楽しそうにしている。
そうしている間にも闇は膨れ上がり、暴走は止まる気配がない。
リリーシャはどうにか竜巻で凌いでいるが、マナは減るしストレスは増える一方だった。
「あんた達! 口動かす余裕あるなら手ぇ動かしてくんないかな!?」
「あっははははは! あの黒いの面白いよ。いっそ僕らの仲間にしない?」
「話が通じないアレを?」
リリアーヌは鼻を鳴らした。
「生憎、レーツェル二号を養う余裕はありませんわよ」
「へえ、僕のこと愛してるんだ?」
「驚きましたわ。大きな独り言ですのね」
「聞けよ話!」
リリーシャが叫ぶが、返事は無視された。




