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The Tír na nÓg 〜ティル・ナ・ノーグ〜  作者: 佐藤つかさ
第二章 承
71/222

6-19

 嘘だ。嘘だ……。

 何度もこの言葉が、アイリスの頭の中で反芻はんすうする。

 

 嘘だ。嘘だ……。

 光が腐る音がする。

 カビが広がり虫食むしばまれていくような。

 あるいは心臓をむしり取られたかのような。

 

 どうしようもない絶望がのしかかる。

  

 アンドリューは悪だった。

 第十師団もそうだった。

 カーソンは……。

 

 どこか遠くで声がする。

 アイリス、アイリスと何度も呼び掛けてくる声が。

 

 るらるらりと心が落ちる。まるで枝から切り離された木の葉みたいに。

 動けない。動きたくない。

 死ぬかもしれない。

 それもいいかもしれない。

 

 

 ………………。

 

 

 ……嫌だ。

 

 

 意識が現実に戻る。

 手足に力が宿る。

 

 横薙ぎに振るわれていた斧の一閃を――アオリスは身を低くしてかわした。

 髪が何本か持っていかれたが、体は無事だった。

 

「……怖っ」

 

 思わずそんな声が漏れる。死を求めていない証だ。

 

「やっと気が付いた?」

 

 視界に入ったのは赤いリボン。――リリーシャだ。

 彼女も騎士をあしらいながら戦っていた。

 

「気が付いたなら話早いわ。今からこの一帯吹っ飛ばすから、適当に逃げて」

「は? 吹っ飛ばすってどうやって?」

 いうが早いか、リリーシャは手のひらに魔法陣を発現させる。それは魔法と呼ばれているシステムだった。ただしこことは別の大陸の。 

 

「ちょっとリリーシャ何する気!?」

「言ったでしょ。この一帯吹っ飛ばすって。耳塞いで口空けて! ドカンとやっちゃうから――」

「ちょっと待って心の準備が――」

 

 アイリスの絶叫は、眼前で発動した魔法の奔流ほんりゅうに飲まれて消えていった。 

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