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「……あんた、あたしの何を知ってるわけ?」
リリーシャは殺意を帯びた視線で隣の少年をにらみつける。その眼光だけで人を殺してしまえそうだった。
だけどその熱を一手に受け止めているアクチェの態度は、実に涼しいものだった。
「君の体は半分人間じゃあない。知っているかい? 異なる人種同士から生まれた子供はとても知能が優れているケースが多いんだ。研究で証明されている」
「すごい。忘れないようにノートに書いておかなくちゃ」
「だけど君の魂は人間に近い。俯瞰ではなく、隣人として人を見ることができる。だからこそ、アイリス・リベルテを守ってほしいんだ」
アクチェの突然の言葉に、リリーシャは毒気を抜かれてしまう。
そして視線を移す。リリーシャの前を歩いている少女の姿。必死に人を守ろうとする騎士の背中を。
「……あんた、あのバービー人形にどうしてそんな入れ込んでんの?」
「彼女の両親は、生き物が最後に流れ着く渦に飲まれて消えた。彼女は世界にたった独りで取り残され、魂をか細い添え木で支えているが……。……いつか、いともたやすく折れる日が来るだろう。僕が救いたいのはアンドリューじゃあない。――彼女だ」
「そこまでする理由は?」
純粋な疑問を持って、リリーシャは問う。
アクチェは眉をゆがめて、そして言った。
「彼女、出世のために頑張ってるらしいけど本当だと思うかい?」
答える気はナシかとリリーシャはため息をついた。
目の前の胡散臭いヒツジ頭をにらみつけて、リリーシャは答えた。
「絶対にウソか……あるいは自分で真実に気づいていないかのどちらかだと思う」




