4-4
「いい顔だね。アイリス」
突然声をかけられて、アイリスは思わず振り返る。
気づけば――右肩の先に――見知らぬ誰かが立っていた。
否、正確にはさっき出逢っている。
あの少年だった。
「とてもいい顔だ。大博打で大金をせしめたような顔だよ。僕にも経験がある。王都サフィールでポーカーをやったんだけど、上手くフルハウスを決めてね。アレはいい勝負だった。ゴブリンの彼はまだ恨んでるかな……」
「…………」
アイリスは横目で少年をにらむ。ちなみに少年はアイリスよりも頭一つ分小さい。
「君、歳いくつ?」
「15」
少年のさらりとした返事にアイリスはぎょっとする。2歳年下じゃないか。
「ポーカーは違反でしょ?」
「歳をごまかした」
肩にかけたカシミアウールのコートが、彼の笑いにつられて揺れる。仕立ての良いスーツは、この薄汚れた港には不釣り合いだった。
「……素晴らしい仕事っぷりだったね、アイリス。おかげで犯人を捕まえられた」
「それはどーも」
アイリスは腕を組んで、疲れをため息とともに吐き出した。
潮の香り。さざ波が木で作った足場を軋ませる。打ち付けた釘はどれくらいで塩分に負けて朽ち果てるのだろうと、全然違うことを考え始める。視線が泳ぐ。第十師団の騎士たちが犯人を連行して馬車に乗せていた。
(……カーソンさんに、会えなかったなぁ)
アイリスの想いを知ってか知らずか、少年はそれは良かったと答えて、かすかにほほ笑む。
そしてこう続けたのだ。
「またやろう」
……こいつ、今なんて言いやがった?




