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The Tír na nÓg 〜ティル・ナ・ノーグ〜  作者: 佐藤つかさ
第一章 起
35/222

4-4

「いい顔だね。アイリス」

 

 

 突然声をかけられて、アイリスは思わず振り返る。

 気づけば――右肩の先に――見知らぬ誰かが立っていた。

 否、正確にはさっき・・・出逢っている・・・・・・

 

 

 あの少年だった。

 

「とてもいい顔だ。大博打で大金をせしめたような顔だよ。僕にも経験がある。王都サフィールでポーカーをやったんだけど、上手くフルハウスを決めてね。アレはいい勝負だった。ゴブリンの彼はまだ恨んでるかな……」

 

「…………」

 アイリスは横目で少年をにらむ。ちなみに少年はアイリスよりも頭一つ分小さい。

 

「君、歳いくつ?」

「15」

 

 少年のさらりとした返事にアイリスはぎょっとする。2歳年下じゃないか。

 

「ポーカーは違反でしょ?」

「歳をごまかした」

 肩にかけたカシミアウールのコートが、彼の笑いにつられて揺れる。仕立ての良いスーツは、この薄汚れた港には不釣り合いだった。

 

「……素晴らしい仕事っぷりだったね、アイリス。おかげで犯人を捕まえられた」

「それはどーも」

 

 アイリスは腕を組んで、疲れをため息とともに吐き出した。

 潮の香り。さざ波が木で作った足場を軋ませる。打ち付けた釘はどれくらいで塩分に負けて朽ち果てるのだろうと、全然違うことを考え始める。視線が泳ぐ。第十師団の騎士たちが犯人を連行して馬車に乗せていた。

 

(……カーソンさんに、会えなかったなぁ)

 

 アイリスの想いを知ってか知らずか、少年はそれは良かったと答えて、かすかにほほ笑む。

 そしてこう続けたのだ。

 

 

「またやろう」

 

 

 ……こいつ、今なんて言いやがった?

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