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シリルと名乗る彼が告白してきて暫く、シリルはデリックと共に毎週末にこの屋敷へとやってくるようになった。
ルチアが婚約者の存在を明かして告白を断ったとしても、「絶対に俺の方が幸せにできる」と、とにかく贈り物から愛の言葉まで毎回熱心だった。
この屋敷で過ごす日々も以前よりずっと賑やかになり、使用人たちも人懐っこいシリルに心を許し始めていた。月に一回の顔合わせの時にしかやってこない婚約者のミリウスよりずっといいと、彼の片思いを応援してくる使用人までいるほどである。
しかし、ルチアは彼の瞳の秘密を知っていた。
「その瞳、貴方隣国では王家に連なる方よね」
この国ではあまり知られていないものの、高位貴族としてある程度の周辺国の知識を学ばされていたルチアにとっては容易く気付いてしまうものだった。
ただそのことに触れていいのか分からず、普通に接していたルチアだが…シリルからの求婚が続いたある日、ルチアは彼の瞳の話題に触れることにする。
「あー、まぁ立場上はそうです。でもこの色だから後継者の座に相応しくないんですよね。俺自身も王位には興味ないですし、王位を継ぐのも優秀な兄になると思います」
そう話したシリルの言葉に、ルチアはつい最近調べた隣国の状況を思い出す。確かに隣国の王太子は次々と周辺国との貿易関係を進めている人物であり、ここ最近でも大きな影響力を持った人物だった。
そうして、隣国では瞳が紅に近いほど王位に近いというしきたりもある。
目の前のシリルの瞳はほぼ黄色に近いからこそ、王位は余計に遠い存在なのだろう。
「父も兄も考えは一緒で、順調にいけば来月俺が留学から戻ったタイミングで兄の王位継承が国民たちにも発表されるはずです」
シリルはそう告げたあと、ルチアの手を取る。
「俺は国に戻って絶対に、父を納得させて結婚の話をもぎ取ってきます。だから、それまで俺のことを待っていてください」
それはルチアの悩ませるような台詞だった。




