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心が壊れる音がした。
「貴方がそのセリフを言うのね」
爪が食い込んだ掌が痛い。彼をこの場で罵りたい言葉はいくつも出てくるのに、それを口に出すのを躊躇している自分の気持ちに気付いてしまう。
(今更、嫌われるのを怖がる必要なんてないはずなのに)
そうして、ルチアは初めてこの結婚を後悔したくなる思いに駆られた。
「いいわ、全てを終わらせましょう」
そう口にした後、頭につけられたティアラを外したルチア。王族の妻だけが付けられるそのティアラは数多くの宝石が付けられた特注品であり、日の光に煌めくようにして宝石たちが輝いていた。
彼があんなにも思いを込めて選んだ宝石たちも、今はただの石としか思えない。
しかし、ルチアはこちらを見つめる女の視線に気付いた。
まるでこのティアラを渇望するかのような浅ましい視線を向けてくる女。それでいて、ルチアと目が合ったことに気付くと、まるで見せつけるかのようにして隣にいる彼に体を寄せて笑みを浮かべる。
(…あぁこの女、消してしまいたいわ)
女の視線に気付いた後、ルチアは目の前でわざとティアラから手を放すことにした。
ルチアの手から落ちていったティアラは、装飾されていた宝石が欠ける音を鳴らしながらその場にカラカラと転がっていく。
ついさっきまで笑っていた女は、今は小さく肩を震わせてこちらを睨みつけていた。
「ベル、大丈夫だから安心して。君には綺麗に直したティアラをあげるから」
静寂の後、そう口にしたのはルチアの夫であるシリルである。
彼は優しく囁いてベルの肩を引き寄せた後、落ちたティアラに手を伸ばすようにして跪いた。しかし、そんなシリルの手をルチアはヒールで躊躇なく踏みつける。
「っ痛…」
「きゃぁ!シリルに何するのよ!!」
耳障りな女の声を聞きながら、ルチアは驚いたようにこちらを見上げるシリルと視線を合わせた。困惑したような彼の表情が余計にルチアを苛立たせる。
「あの時の選択は間違いだったようね」
そう告げたルチアは、2人を置いてその場を去る。
ルチアは愛した夫の姿を消し去るようにして、今は害虫を駆除する計画を立てていくのだった。




