-1(ジュール視点)
「侯爵夫人はどこだ!!!!」
それは突然の怒声だった。もう1度、ディーナとは話をした方が良いかもしれないと考えながら、うろうろと室内を歩き回っていたジュールは、突然激しい足音と共に部屋にやってきたラジェイア公爵に驚くことになる。
「一体、なんてことをしてくれたんだ!!」
そう怒声を浴びせてきたラジェイア公爵は、ジュールの胸元を掴むと強い力で持ち上げてくる。
「っ、な…なんですか、一体」
ラジェイア公爵の怒りの理由が理解できなくて、慌てたようにそんな声を漏らしてしまうジュール。するとラジェイア公爵は鋭い視線でジュールを睨みつけた後、怒りをぶつけるようにしてジュールの体を床へと投げ出した。
「はぁ、この俺がしてやられるなんてな。もっと注意しておくはずだった。夫とその愛人を何もない森の奥の別荘に追いやるほどに性格の悪い女だって分かっていたはずなのに」
「…っ、ディーナが何かしたんですか!」
「はは、演技が上手いのか?それとも、本当に知らされていないのか…?惨めな奴だな、お前は」
その後、ジュールは付いてくるように言われ、公爵家の外に用意された馬車に乗り込むように命じられる。一体どこに向かうのか理解できずに少し戸惑うことになったジュールだったが、悩んでいる間にも置いて行かれそうになって、すぐさま馬車に乗り込んだ。
ふと玄関の辺りに赤子を抱いて慌てて追いかけてきたようなハワードの姿が見えたものの、ジュールを乗せた馬車はそのまま走り出していくのだった。




