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無音の令嬢  作者: お狐
2章 『無音』の令嬢
40/48

弱さ

《毎日投稿期間中》

すこし短いです。

夢を見てた。

星がキラキラして、月が淡く煌めいている夜空をふわふわと飛んでいる夢を。

でも、だんだんと滲んで、消えてしまった。


キラキラと光る金色が私の手をすり抜けて、もう届かなくなって。


ぐらぐらとする頭を必死に持ち上げたら、



そこにはハルがいた。



「ライラ様。体調はいかがでしょうか?発熱されているようなので、安静にしてください。」



…………ああ、そっか。私は逃げたんだった。



「水分補給をしましょう。それと、食欲はありますか?いま、お粥をお持ちします。高名な薬師と治癒魔術師を呼び寄せましたので、診察してもらいましょう。」



…………金色、すり抜けてしまった金色は、届かなかった。



「ライラ様。ライラ様は素晴らしいお方です。」



…………え?急に?



「他人に優しく、自分に厳しい。そんな性格の方は滅多にいらっしゃいません。才色兼備な上に、努力も惜しまない。ただ、周囲に気を使いすぎて、自分を疎かにされるのはいかがな物かと。」



…………そんなことない。私は私のことしか考えてない。



「あなたは、あなたが思っている以上にお優しい。だから、周囲は知らぬ間にあなたに引き寄せられる。」



…………そんなことない。この世界で私の知り合いは数えるほどしかいない。



「ふふ。ライラ様のファンクラブが学園にできたこと、ご存知ないのですか?」



………ん?ファンクラブ?



「貴族の闇という名の悲劇のどん底から這い上がり、声が出ないというハンデを物ともせず、ライラック商会を立ち上げた敏腕商人で、王子に見染められ、しかも美人で高名な魔術師。そう思われているそうですよ?」



…………え、ちょ、ちょっとまって



「シンデレラストーリーとして、庶民や低位貴族の間で特に人気があるそうです。」



ストーーーーーップ!!!!


私は思いっきり起き上がって、布団を叩き抗議しました。

だって、そうでしょう!?私、商会立ち上げてないし、貴族の闇?這い上がった?どーゆーことよ!?まぁ、リュカ様に見染められたのも本当だし、ライラが可愛いのも本当だし、魔術師としても優秀かもしれないけど…………あれ?ほとんどあってない?



「っふふふふ。ライラ様、ご自分の魅力をお分かりになりましたか?」



いや、冷静になると私中々ハイスペックね。

………あ、急にめまいが。動きすぎた。



「あ、お熱があるんですから、そんなに激しく動かないでください。お身体に障ります。」



ポスンとハルに支えられて、ちょっと怒りながら布団に戻された。

優しい手つき、慈しむような目線。

一つ一つの動作に、私への想いが滲み出てるようで、すこし照れる。

でも、うーーん………



『ねぇ、ハル。一つお願いがあるんだけど。』


「はい。なんなりと。」


『もうちょっとこっちにきて?』



あーー。ハルってやっぱり美形。

こんなにかっこいい子が私のこと好きなのねぇ。

世の中ってわからないものねぇ。


お人形みたいに恐ろしく整った顔。近くで見れば見るほど、美しい。


もっと、もっと近くにいたい。


手が伸びる。ハルの手を引っ張って、胸に顔を埋める。


ハルがビクッとして逃げようとするから、背中に手を回して逃げられないようにする。

いやよ。逃げないで。


観念したのか動かなくなったから、グリグリと顔を押し付ける。んふふ。近くにいるってちゃんと分かる。





んーーー。人肌って温いわぁ。家族とか近寄ってくれなかったし、なんだかんだハグとかするの、ハルくらいじゃない?


案外がっしりしてるのね。男の子ね。

それにしても、いい匂いがするわ。お花かしら?フローラルね。


私の知らないところで、ハルも立派な大人になっているのね。ふふ。


んー。風邪うつしちゃうかもしれないからすぐ離れるけど、なんか今、すごい寂しくて悲しい気持ちだから、ちょっとだけ頼らせてもらおう。


金色の光がちらちらと視界の端っこに映る。

考えなきゃいけないのに、考えたくない。考えられない。

私、こんなに弱くちゃだめなのに。


そういえば、ハルに何か言われてそれで、私は………

んぅ。なんだっけ。………でも今は……










『ハル、ありがとう。風邪うつしちゃうかもしれないのに、くっついてごめんなさいね?』


「いえっ!とんでもないです!あ!お水!お水持ってきますね!あとお粥も!薬師と治癒魔術師も!」


『ええ、ありがとう。』



なんでハル焦ってたのかしらねぇ。

んぅ。眠い。ハルが戻ってくるまで少し寝よう。

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