弱さ
《毎日投稿期間中》
すこし短いです。
夢を見てた。
星がキラキラして、月が淡く煌めいている夜空をふわふわと飛んでいる夢を。
でも、だんだんと滲んで、消えてしまった。
キラキラと光る金色が私の手をすり抜けて、もう届かなくなって。
ぐらぐらとする頭を必死に持ち上げたら、
そこにはハルがいた。
「ライラ様。体調はいかがでしょうか?発熱されているようなので、安静にしてください。」
…………ああ、そっか。私は逃げたんだった。
「水分補給をしましょう。それと、食欲はありますか?いま、お粥をお持ちします。高名な薬師と治癒魔術師を呼び寄せましたので、診察してもらいましょう。」
…………金色、すり抜けてしまった金色は、届かなかった。
「ライラ様。ライラ様は素晴らしいお方です。」
…………え?急に?
「他人に優しく、自分に厳しい。そんな性格の方は滅多にいらっしゃいません。才色兼備な上に、努力も惜しまない。ただ、周囲に気を使いすぎて、自分を疎かにされるのはいかがな物かと。」
…………そんなことない。私は私のことしか考えてない。
「あなたは、あなたが思っている以上にお優しい。だから、周囲は知らぬ間にあなたに引き寄せられる。」
…………そんなことない。この世界で私の知り合いは数えるほどしかいない。
「ふふ。ライラ様のファンクラブが学園にできたこと、ご存知ないのですか?」
………ん?ファンクラブ?
「貴族の闇という名の悲劇のどん底から這い上がり、声が出ないというハンデを物ともせず、ライラック商会を立ち上げた敏腕商人で、王子に見染められ、しかも美人で高名な魔術師。そう思われているそうですよ?」
…………え、ちょ、ちょっとまって
「シンデレラストーリーとして、庶民や低位貴族の間で特に人気があるそうです。」
ストーーーーーップ!!!!
私は思いっきり起き上がって、布団を叩き抗議しました。
だって、そうでしょう!?私、商会立ち上げてないし、貴族の闇?這い上がった?どーゆーことよ!?まぁ、リュカ様に見染められたのも本当だし、ライラが可愛いのも本当だし、魔術師としても優秀かもしれないけど…………あれ?ほとんどあってない?
「っふふふふ。ライラ様、ご自分の魅力をお分かりになりましたか?」
いや、冷静になると私中々ハイスペックね。
………あ、急にめまいが。動きすぎた。
「あ、お熱があるんですから、そんなに激しく動かないでください。お身体に障ります。」
ポスンとハルに支えられて、ちょっと怒りながら布団に戻された。
優しい手つき、慈しむような目線。
一つ一つの動作に、私への想いが滲み出てるようで、すこし照れる。
でも、うーーん………
『ねぇ、ハル。一つお願いがあるんだけど。』
「はい。なんなりと。」
『もうちょっとこっちにきて?』
あーー。ハルってやっぱり美形。
こんなにかっこいい子が私のこと好きなのねぇ。
世の中ってわからないものねぇ。
お人形みたいに恐ろしく整った顔。近くで見れば見るほど、美しい。
もっと、もっと近くにいたい。
手が伸びる。ハルの手を引っ張って、胸に顔を埋める。
ハルがビクッとして逃げようとするから、背中に手を回して逃げられないようにする。
いやよ。逃げないで。
観念したのか動かなくなったから、グリグリと顔を押し付ける。んふふ。近くにいるってちゃんと分かる。
んーーー。人肌って温いわぁ。家族とか近寄ってくれなかったし、なんだかんだハグとかするの、ハルくらいじゃない?
案外がっしりしてるのね。男の子ね。
それにしても、いい匂いがするわ。お花かしら?フローラルね。
私の知らないところで、ハルも立派な大人になっているのね。ふふ。
んー。風邪うつしちゃうかもしれないからすぐ離れるけど、なんか今、すごい寂しくて悲しい気持ちだから、ちょっとだけ頼らせてもらおう。
金色の光がちらちらと視界の端っこに映る。
考えなきゃいけないのに、考えたくない。考えられない。
私、こんなに弱くちゃだめなのに。
そういえば、ハルに何か言われてそれで、私は………
んぅ。なんだっけ。………でも今は……
『ハル、ありがとう。風邪うつしちゃうかもしれないのに、くっついてごめんなさいね?』
「いえっ!とんでもないです!あ!お水!お水持ってきますね!あとお粥も!薬師と治癒魔術師も!」
『ええ、ありがとう。』
なんでハル焦ってたのかしらねぇ。
んぅ。眠い。ハルが戻ってくるまで少し寝よう。




