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14話 アルパカとおさんぽする生活


 パワーさんとは積もる話もあり、立ち話もなんだってことでパワー食堂へと移動することにした。


「それにしてもネェチャンが魔王軍で領主とは驚いたぜ!」


「あのー、ごめんね? 騙すような事になっちゃって」


「なぁに、俺ぁ昔っからあちこちの国を旅してまわってるからな! 別にこの街の領主がどこの誰になろうが構わねぇってワケよ!」


 大ざっぱな考え方だなぁ。


 まぁでも確かに大河ドラマとか観てて思うところではあるよね。


 敵国が攻めてきて、そこの領主が「民百姓を守るために戦わねば!」とか気合い入れてるけど、民からすれば領主が真田幸村だろうが徳川家康だろうが生活はそんなに変わらないだろうし。



 とはいえ、魔王軍に侵攻されたらさすがに不安な気がするけど……。


 

「領主が変わってパワーさんはなんか困ってないの?」


「おぁ? うーむ。 税金は安くなったしケッタクソ悪い奴隷制度もなくなったし、良いことづくめよ」


「そうなんだ。そりゃよかったねぇ」


「ただまぁアレだな……店を続けられねぇな、とは思ってるけどよ」



 えっ!


 それって、他の土地の商人たちが魔族を怖がって流通が滞ってるとかそういう関係の話だろうか。


 すごい大問題じゃないかと私は胸が苦しくなる。



「そんなんじゃねぇよ。最近、ウチの店にブタ人間がよく来るようになったんだが」


 申し訳なさそうに話を聞く私に対してパワーさんはブンブンと手を振って否定した。


「ブタ人間……オーク君たちのこと? 何か迷惑かけてるとか?」


「いやぁなんかよ、ブタみたいな顔した連中がウチのブタ肉をムシャムシャ喰ってる所を見ると共食いさせてるみたいでスゲー罪深い気分になってよォ」



 オーク君たち、ブタ肉食べるの平気なんだな。


 私はブタ顔のオーク君がブタの丸焼きを食べているところを想像した。


 うわぁ……なんかそれって人間がチンパンジーを食べるような……?

 


 いや、あんまり深く考えるのはやめよう。


 

「そんなワケでよ、ネェチャン。なんか良い仕事ねぇか?」


「え、ホントにパワー食堂やめちゃうの?」


「いや、マジメな話、俺はどうとでもなるが元奴隷の連中がな。奴隷じゃなくなった途端、今までのご主人から暇を出されて無職にクラスチェンジしたヤツが多いんだ」


 奴隷から無職へ。


 それは前に進んでいるのだろうか。


 うーん。


「あ、じゃあパワーさんもその人たちもチョコ作りする?」



 カカオをチョコにクラスチェンジさせる作業方法はイベっちにサラッと聞いていたのでその内容をパワーさんに伝えてみる。


 お給料も領主によって保証されて安定するワケだし悪くない話をもちかけたつもりだったけど、パワーさんは険しい顔をした。


「ふぅむ、豆を焼いたり潰したりするってのか。ラクそうだが地味そうだ。生涯、コソコソと豆を焼くだけの人生なんて俺には耐えられねぇ」


 豆を焼くのも肉を焼くのも同じような仕事だと思うけど……。


「いいじゃん。今まではコソコソと肉を焼いて生きてきたんでしょ」


「バッカ、ネェチャン分かってねぇな! 肉を豪快に焼くとか男らしいだろうが!? 男らしいということはオンナにモテるということであり、しかしマメごときシコシコ焼いててもモテるワケがねぇ!!」


 この人どんだけ豆を軽んじてるんだろうか。


 

「あ、でもチョコレートって女子にも人気だよ。スイーツと言えば女子であり、それを作り出せる数少ないチョコ職人のパワーさんもそれなりに敬意を払われると思うけど」


「なにっ、そいつは本当か? ウソだったらハリセンボン3枚におろして食わすぞ」


「まじっすか。パワーさんチョー優しいじゃん」


「ああ、そうともよ。俺は優しいんだ。だからなってやるぜチョコ職人によ!」



 こうしてイベっちのチョコレート工場で働く危険人物を一人確保した。


 ついでに無職に昇格した元奴隷さんたちにも声をかけてくれるらしい。



 魔族扱いの私たちが斡旋した仕事なんて、スンナリ引き受けてくれる人がいるか不安だったけど順調でなによりな領主就任1日目でした。


 

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