現場訪問その2
通された社長室はとても広いものであった。正面には机の下に数人は隠れることができそうな大きな机、ふかふかの椅子。その背後には本棚がならび、観葉植物なんてものも置いてある。
中で待っていたのはきっちりしたスーツに身を包んでいる男性と、秩序の維持者たる制服を着た青年だった。スーツ男は眼鏡を押し上げ値踏みをするように友則を見てから口を開いた。
「君が支倉友則先生か。ご高名はかねがね伺っております。副社長の柴田真史でございます。先生が調べてくださるからには、それ相応の成果を期待しております。」
雅臣はこの男を見てまず第一に思い浮かんだのは慇懃無礼という言葉だった。口調こそは丁寧だが態度は高圧的で、どこかこちらを見下しているようにも見受けられる。
「この度はご愁傷様です。探偵風情が出しゃばってしまい申し訳ありません。全力で協力させていただく所存です。」
さすがの友則も看過しえなかったのだろうか、皮肉が込められた返答を受けた副社長は憎らしげに顔をしかめ、鼻を鳴らす。
「お久しぶりです、支倉先生。改めて、今回の事件を担当します、永野です。」
少し殺気立った雰囲気を和ませるかのように、そこにいた刑事が口を挟む。久しぶり、というのは、この永野刑事、過去に支倉が解決した連続空き巣事件の担当だったりで、事務所の全員と面識のある人物である。
友則も彼の気遣いを無下にするほど無神経ではなかった。副社長も場を読んで一歩引いた。
「それでは時間がないので、秘書さん、お話をお聞かせください。」
「わ、分かりました。」
しばらく緊張した面持ちで傍観に徹していた秘書は、強張った声で事件当日のことを語り出した。