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真・恋姫†無双-獣達の紡ぐ物語-  作者: わんこそば
第三章 戦乱の目覚め
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67話 喰らう鮫と破壊天使と

「だからお前に任せとくべきじゃ無かったんだ。シエル」



突如とした現れたアクーラはシエルに向かってそう言った。

アクーラから感じ取れるのはシエルが時間をかけたことに対する苛立ち。

表立って出てくると思ってなかったシエルは少々驚いていた。



「どうして此処に?」


「そんなもの、お前が失敗するって分かってるからに決まってるだろ」



さも当たり前のように言い切るアクーラにシエルは苦笑してしまう。

自信に満ちていながらその目には感情が感じられない。

あるのは絶望を通り越した闇。

ソラと全く似た性質のオーラを放ってる。

シエルは目の前のアクーラには勝てないと分かっており、諦めてアクーラの後ろへと下がった。

シエルが下がったことでアクーラの興味はソラへと向けられる。



「よう、久しぶりだなサイファー。7年ぶりぐらいか?」


「7年?……僕はそこまでの記憶を失っているのか……」



自身が無い記憶が7年と分かり軽く驚くソラ。

しかし、感情と言う感情は無い。

まわりからは無表情で事実を受け入れたにしか見えない。



「で、サイファー。そっち側につくつもりか?」


「そっち?……僕なんかに居場所はないよ」


「裏切り者は裏切り者のままってことで良いんだな」


「あれは違っ」


「お前の言葉に耳を傾ける事はしない。裏切り者のお前に」



ソラに弁明させず突き放すアクーラ。

2人の間に何があったのか分からない。

ただ、アクーラからソラに対する感情は負そのもの。

怒り、憎しみ、軽蔑……

そんな負の感情が戦場に恐怖を与える。



「俺はお前の手によって一度死んだ。死んでみて思ったのは何も感じない。感情も無い。ただ、虚無に身を任せ漂うな感覚。まあ、いい体験だったよサイファー。お前にもあの感覚を共有してもらうとしようか」


「本気、なんだね……」


「俺が冗談を言うと思うか?」


「思わない。だから、僕も本気で君を倒す」


「残念だが、俺は今完全に力を戻して無い。俺の変わりに戦って貰うとするか。丁度良く12万の兵なんているみたいだしな。だが、その前に、こいつを止めてみろよ」



アクーラは手をパンッと鳴らす。

すると何も無い空が歪み、先端が丸みを帯びた何かが顔を出す。

それは高速で飛び出るや、ソラに目掛けて軌道を変える。



「ミサイル……」


「全部で12発!全て撃ち落としてみろ!」




12発のミサイル全ての軌道は全てソラ1人に目掛けて飛来してくる。

ソラの後ろにはまだ一刀達やファントム達が居る。

ソラ1人がその場から離れればソラは助かるだろう。

だが、その場合ソラの後ろへに被害が起きる。

自分の命を取るか、それとも全て終わらせてからこの世界の情報を集めるのか二択を迫られた。



「あまり使いたく無い手だけど、仕方ない…………」



ソラはファントム達のもとへダッシュで駆け寄ると、ハルトマンとストームのアサルトライフルを奪うや、片手で一挺づつ構えた。



「意識切り替え………自己防衛モード起動。最適モード選択。……完了。モード追跡者(シーカー)



ルーラーの時に見せた機械的なソラに変わり飛んで来るミサイルに目を向けた。

そして構えたアサルトライフル2挺をミサイルの方へ構えるや、単発で何度も発砲する。

ガンッ!ガンッ!ガンッ!

立て続けに銃声が響く。

飛んで来るミサイルに銃弾が3発ほど当たると安定翼が壊され、地面に急降下して爆発していく。

セミオートで連続して撃っているのにも関わらず、反動はまるで機械に固定でもされたかのように規則的、機械的に受け流していた。

全弾を撃ち切る頃にはミサイルは全て地へと落下していた。



「脅威の排除を完了。自己防衛モード終了……。ふぅ、何とか落とした」


「相変わらず射撃はそっち頼りか?」


「仕方無い。僕は射撃が苦手だ」


「お前らしい。これでウォーミングアップも済んだだろう。なら、本番と行くか。扇動者(アジテーター)モード。さぁ、サイファー。今から12万の敵を殺せ。そうすればお前の勝ちだ」



アクーラの雰囲気が変わり右目が赤く輝き出す。

顔を隠すような外套なだけあって、右目だけが暗い影から覗かせる。

その姿はまるで片目の死神であり、その口は人を嘲笑うかのように釣り上がる。

隣で待機しているシエルは呆れると味方を完全に引っ込めた。

アクーラは空気を胸に吸い込み、演説をするかのような口ぶりでその声を張り上げた。



「聞け、弱き者共よ。俺の名はアクーラ。2番目に造られた隻眼の死神だ。お前達に聞きたい!お前達は何の為に戦いこの地に立つ‼︎ 金か?名誉か?使命か?運命か?お前達がこの場所にいる理由を断言してやる。お前達は戦いを欲した戦士達だ。殺す事に魅了された修羅達だ。金や名誉など、そんなものそこらの獣にでも喰わしてしまえ。お前達に必要なのはどこで誰を殺すかだ。ならば、俺が与えてやる。お前達に必要なのは圧倒的な力で潰し、英雄を喰らうこと。さぁ、殺せ!邪魔する者は叩き潰しぶち殺せ!」


『『『ウォォォォォォオオオオオ‼︎‼︎』』』



まるで何かに支配されたように獣より恐ろしい叫びを12万の兵士達が叫ぶ。

一刀側の兵士達は敵兵士や将兵は普通では無い様子に戸惑った。

さっきまで押されていた事で焦燥感に駆られていた様子が全くと言っていいほど無いのだ。

ただ「目の前の敵を殺す」と彼等のオーラから感じ取れた。



「なんだこれは⁉︎」


「何が起きている⁉︎」


「お兄ちゃん、これ、なんなのだ……」


「俺にも分からない……」



一刀達は困惑していた。

突然の敵の変化に頭がついてこれていない。

一刀はファントム達を見たが、彼等もまたあの獣すら寄り付かないであろう敵の集団に目が向けられていた。

誰一人として敵と戦える自信が無かった。

今や敵は死すら恐れない修羅そのもの。

銃弾を体に受けた程度では止まらないだろう。

恋すら恐怖で戟を強く握りしめて誤魔化しているのだから。

ただ一人、ソラだけは違った。

「ああまたか」と言うような顔でブレードを握り直す。

そして、アクーラと同じような雰囲気を放ち始める。



「死にたくないなら離れた方がいい。……死もまた救い。モード解放者(リベレーター)



ソラの右目も赤く輝きを放つ。

その雰囲気は狂った敵集団以上の圧倒的な恐怖を振りまく。

ソラの準備が出来た事を嬉しそうにアクーラは兵士達に指示を出した。



「さぁ、行け。殺したいように殺せ」



命令では無い指令。

修羅と化した12万は人の言葉すら理解してないと思いきや、何かに背中を押されたようにソラに向かって一直線に走り始める。

ゴゴゴゴゴッ!と馬や人の足が地面を鳴らす。

ただ一人、ソラに目掛けて。



「おいおいおい!なんだよアレ⁉︎」


「下がるか?いや、これもう下がるしか無いな」


「流石に死兵と殺り合うつもりは無いっすよ!」


「護衛しながら前線エリアから離脱する。総員行動開始!本陣まで後退しろ」



ファントム達はソラの警告通り警戒しながら一刀達と共に下がって行く。

取り残されたソラは死兵と化した兵士達のほうを向いた。



「まるで修羅だ……。でも僕は神を殺す為に造られた兵器。全てを壊す為に造られた死神。修羅になど一々苦戦などしてもられない。だから……絶望を持って殺す」



恐怖すら感じず最初にソラへと到達した兵士達は同時にその得物を振り下ろした。

しかしソラに刃が届く前に兵士達は細切れと化す。

手に握られたブレードが音速を超え肉を切り裂き骨を断つ。

返り血がソラにこびり付き体は血の赤に染まった。

ソラの血に染まった姿は悪鬼悪霊すら怯えるだろう。

それだけの恐怖を振りまいていた。

しかし今の修羅と化した兵士達に恐怖は感じない。

ソラはただの獲物でしか無い。

何度も何度もソラへと斬りかかる。

いつしかソラの足下には肉塊が出来ていた。



『『『ウガァァァァァアア‼︎‼︎』』』


「モード破壊者(デストロイ)増加(ブースト)



一刀達に見せたあの技をもう一度ソラは使う。



「……衝撃波(インパクト)



今度は外さずに当てた。

その瞬間何を殴ったか分から無い音が響く。

殴られた兵士の体の中にあったモノは全て外に飛び出て体には大穴が開く。

衝撃波だけで大穴の開いた兵士の後ろも纏めて吹き飛ばす。

当然、ソラの腕もおかしな方向へと向いていた。

それでもソラは止まらない。

直ぐさま自分の腕を元に戻すと敵が振るう斧を奪い、地面に音速を超えた速度で叩きつける。

愛紗や鈴々、星、恋達武将が一撃でクレーターを作るのが可愛く見えるようなソラの一撃は地面を割り、その衝撃波だけで敵を粉砕した。






「ちゃんと説明してくれるよねゴースト?」



ソラから距離を取り本陣まで戻った一刀達はゴーストへと詰め寄っていた。

ソラが心配なレインは敵意剥き出しでゴーストに今にでも斬りかかりそうな勢いでゴーストの掴みかかる。



「離せ、説明する」



ゴーストは掴みかかってきたレインをにらむと無理矢理にその手を振りほどくと、コンバットスーツを正したゴーストは真面目に様子で話し始めた。



「アレは隊長達と出会う前のソラ。隻眼の死神としてのソラだ。隊長なら調べてある筈だ。あの組織を知っているだろ?」


「ブラッドダイヤモンド……反政府武装組織のテロ集団だ」



ファントムは自分の知ってる情報を伝える。

この世界で産まれた人達以外なら誰でも知っている情報である。

しかし、その実態を知る者は数少ない。



「これから説明する事に口を挟むなよ。ソラの事を説明するにはまずブラッドダイヤモンドを知って貰う必要がある。あの組織の表向きは反政府組織だ。反政府組織、簡単に言えば国家転覆を狙う武装した集団。だがあの組織の真実は反政府組織を隠れ蓑に活動する研究者集団。その研究内容は人の至る事の出来る限界。要するに人体実験を繰り返していた組織だ。言わなくても分かってる奴はいると思うが、俺もそこの2人も同じ場所出身だ」



ゴーストがカミングアウトするとネロとデイヴッドの2人に目を向けた。

すると2人は頷き、それに答えた。



「そうネ。俺もデイヴッドもソラもロイも同じとこで育ったネ」


「ネロが言う通り俺の本名はロイだ。ファミリーネームは知らない。気付いた頃にはあの組織にいた。俺達は親を殺されるか攫われるかして来たような子供だった。いや、ブラッドダイヤモンドにいる子供は全て同じ境遇の子供達だ」


「……それは本当なんですか?」



驚愕した声が後ろから聞こえる。

そこにはご主人様こと一刀を心配して朱里と雛里に連れられて来た桃香が凄く聞いてはいけない事を聞いた顔をしていた。



「俺が言うんだ。嘘だと思うか?」



あまりにハッキリと淡々と言うゴーストに桃香は難しい顔をしながら顔を横にフルフルと振る。

しかし、納得は出来ない。

だって桃香が助けたいのはそう言う子供も含めてるのだから。



「知りたいんだろ。どうして普通に生きなかったか?普通に生きたいと願ったさ。けど、一度武器の味を知った者が生きれる世界は極端に狭い」


「待ってくれゴーストさん」



一刀が口を挟んだ。

桃香以上に納得出来ない一刀は異議を唱えた。



「俺はそういう子供達も助けたい!空だって助けたい。あなた達が無理だといってもそうするつもりだ!」


「お前に俺達の何が分かるんだよ。いいか、これからいうこと口挟まずに耳かっぽじってよく聞け!嫌でも聞け」



段々と口が悪くなるゴースト。

無理矢理に一刀を押し黙らせると、あまり言いたくは無い過去を語った。



「ソラはあの組織で段階移行(フェイズシフト)と言う計画に無理矢理参加させられた挙句、ソラ自身が家族だと思って慕っていた兄達や弟達を数多く殺してきた。それは俺も、そこの2人も同じだ。けど、俺達は後悔なんてしてない。そうでもしなければ生き残れないからだ」


「だけど残酷過ぎる!逃げる事も出来た筈だ!」


「逃げれば家族と慕う者が実験体にされて殺される。抗えば言いなりになるように洗脳される。殺すのを拒否すれば目の前で人が死ぬのを何度も目に焼き付けられる」


「それでも……それでも助けなければいけない命だってある筈だ!」


「なら、君の正義で何が守れるの?」



一刀に問いかけたのはゴーストでは無かった。

ここにいる誰にも当てはまらない声音。

声の高さからは男だとわかるのだが……肝心の姿が見えない。



「フフー、僕はここだよ」



中々気付いて貰えない声の主は持っていた鎌で地面を鳴らして場所を教える。

一斉に振り向く先、装甲車ストライカーの上で死神鎌を持ったソラと同年齢の男の子がようやく気付いて貰えたとニッコリと笑っていた。



「やあやあやあ、初めましてだね。僕は8番目に作られた死神、破壊天使(デストロイ・エンジェル)。他の死神からはエンジェルって呼ばれているよ。どうやら揉めてるようだったけど、大丈夫かな?」



その乾いた笑いは全員を地面に釘でも打ち付けたかのように体を縛った。

しかし、銃も持つ者達は容赦なくエンジェルへと向けた。

しかし発砲は出来なかった。

その中で白のフランチェスカ学園の制服を着る一刀を見たエンジェルはようやく見つけたと笑う。



「君が例のホンゴク君?ヘェ〜、中々に面白い素材だね君」


「俺は北郷一刀だ」


「ホンゴウだってホンゴクだってどっちもそんな変わらないさ。ウかクしか変わらないしね。で御使い君に一つ聞きたいんだ。ねぇ君は、君達は正義で全てを救えると思う?」


「少なくともこのイカれた世を正すぐらいは出来る筈だ」



先程の問いを繰り返し一刀に強い肯定を示す。

そんな一刀に寄り添うように桃香も肯定した。

するとエンジェルはケタケタと面白可笑しそうに笑った。



「アハハームリムリ〜、人間全員が君の唱う正義に同調するとは限らないのさ。それって全員に少しの優しさがあれば世界が平和になっちゃうとか言うタイプと一緒だよ?世界ってのは不平等で残酷ってのもう少し知った方が良いね。歴史は何度も繰り返すのさ」


「何故そんな事が分かる!お前だってそんな生きてる訳じゃ無いだろ!」


「フフー、教えてあげるよ僕の事。僕達は死神と呼ばれる者達の多くは人間の汚さを常に見てきた。だから世界が平和になるなんて幻想でしかないと思ってる。なぜなら僕達がそうだったからさ。僕達死神はフェイズシフト計画でうんざりするほど人の本性を見てきた。能力なんて不平等なほどに違うし、必死になる人間の残酷さと言ったらこれ以上上が無いんじゃ無いかとも思ったね。それに、今までにランセだのセンゴクだの世界大戦なんて腐る程あったでしょ?これでも分からないだろとか言う?」



その体験して来た事実に黙らせられる。

それは決して常人が体験する事は無いだろう。

目の前のエンジェルは常人では無い。

狂人の類いの人種だ。



「結局は正義の味方も悪の化身も自称でしかない訳だ。なら、君の正義が世界の望む正義とは限らないんだよ。僕達ワールドギアからしたら目の上のタンコブ。邪魔者でしかない。さらには敵国にとっては悪にだってなるのさ」


「先程から黙って聞いてれば!もう黙ってられん!」



今まで黙ってた愛紗の堪忍袋の尾が切れエンジェルに斬りかかった。

しかし、エンジェルはたった数センチの動きだけで軽く避けてしまう。



「難しい事ばっかじゃ分かんないのだ!」



更に鈴々まで愛紗に加勢し、エンジェルへと挑む。

気付けば星や恋、優二もが加勢しエンジェルに斬りかかった。

しかし、エンジェルは眠そうに死神鎌を振るい受け流す。

ローンウルブズや巨人の雷鎚、カーチスは銃を撃とうにも味方が邪魔でトリガーを引く事が出来ない。

今引けば誰かしらに弾が当たるだろう。



「いきなり斬りかかってくるなんて怖いなー君達。はい、ブラストエッジ」



エンジェルは鎌をヒョイと振るうと、その斬撃の風圧だけで4人を軽々しく吹き飛ばした。

エンジェルは無傷で一歩も動いてなかった。



「僕達死神は要らないモノを全て別の能力に振り分ける事が出来るんだ。心、感情、五感など、それらを一度放棄して別の五感や反応速度、思考速度に振り分けるんだ。だから、君達は止まって見えるし攻撃方法も簡単に見分けがつくんだ。今僕が放棄したのは何も無いんだ。実力差は大きく分かったでしょ?まぁ、分かったところでどうにかしないと君達死んじゃうけどね〜」



束になっても傷一つ付ける事がかなわない圧倒的な実力差に歯噛みするしか出来ない。

悔しいが、本気で挑んだところで傷付ける事は無理だ。

エンジェルは本気すら出さずに殺しに来るだろう。

誰しもがそう思っていると、砲弾のようにソラが飛んで来る。

厳密には吹き飛ばされて来た。

スリップターンで勢いを殺しきると飛んで来た方向へと睨んだ。

R.I.P-LSW/B05ことインセインブレードは柄より先が折れて無くなってしまっている。



「……多いな。」


「やぁ、久しぶりだねソラ」


「久しぶりエンジェル。今世間話してる余裕が無いんだ。その鎌借りるよ」


「フフー、ほら使いなよ」



一刀達は驚愕した。

なんせ敵と認識しているエンジェルがソラに鎌を普通に投げ渡したのだから。

言い換えれば自分の得物を敵に渡してるんだから。

ソラは飛んできた鎌を受けると構えて溜めに入る。



「ブラストエッジ」



エンジェルが先程見せた技をソラも繰り出した。

何重にも重なるカマイタチは地面を扇状に削りとって行く。

ソラを飛ばしたであろう大男は姿を見せるや、ソラのブラストエッジをモロに受けて細切れになった。



「ねぇねぇソラ、ソラ?何人やったんだい?」


「多分…今ので10万そこらだと思うよ」


「フフー、それってほぼ壊滅だよね」


「まだ残ってるよ?」


「手伝っても良いんだけど後で僕が怒られちゃうからな〜。で、久しぶりの鎌の感触はどう?しっくりきてる?」


「少し小さく見えて変な感じがするよ」



ソラが鎌を振るいながらそう言う。

すると、エンジェルは笑った。



「フフー、それはソラが成長したからだよ。その武器はあげるから好きに使いなよ。ああ、そうだった」



エンジェルは次に手を叩く。

すると、空中にコンテナのようなモノが降ってくる。

真っ黒のコンテナはドスンと音を立て地面に着地する。



「死神は72の武器を使うだったよね。君が扱える全てがそこに入ってる。これは僕からのセンベツだよ。必ず戻って来てくれると信じてのね」



ソラはコンテナに向けて手を伸ばした。

するとコンテナからバシュッと音がするとソラの手に黒塗りの手甲がハマる。

超がつくほど現代的な形をしており、グローブに近い金属手甲はソラの腕にハマるとその手に合うように自動で大きさを変えた。

死神鎌を再度構えるとソラは消えるような速度で再び行ってしまう。



「アレは話しを聞いてるのか分からないなー。で、シエルとアクーラ、何時までそうやってるつもり?アクーラに対してシンカー激おこだよ?」


「うわー……」


「チッ!なんで邪魔しにきた」



エンジェルに言われ出てくるや悪態を吐くアクーラ。



「フフー、君が出ると荒れるからねー。本当はシエルと僕でやる筈だったんだけど。君出しゃばるから僕が出れなかったんだよね。で、そろそろ帰らないと僕は庇わないから」


「チッ……あの壊れた人形はどうする?」


「アレはソラが何とかするさ」



ファントム達に銃を向けられているのにも関わらす3人で会話を続けるエンジェル達。

カーチスは人間の本能が危険と警告する3人の一人を仕留める為にトリガーを引き絞った。

それはファントム達も同じでトリガーはあと数ミリ引けば撃鉄が落とされるほどまで引き絞られていた。

しかし、一瞬のまばたきをすればそこに3人はいない。

既に目の前にいた。



「今なら好機なんて考えているなら止めといた方が身の為だよ兵隊さん。僕達に銃弾は効かないよ」


『…ッ⁉︎』



その場にいる全員が驚かされる。

一瞬で目の前に移動できる人間なんてあり得ない。



「フフー、なにその驚いた顔。今回は君達の話しを折る形になってゴメンね〜。でももう帰るから安心してよ」



「待て‼︎」


「何かな御使い君。そんな(すく)み上がった顔で睨まれても怖くとも何ともないよ〜。僕達がそんな気に入らないかい?」



睨む一刀に天使の様な微笑みを向けるエンジェル。

しかし、その微笑みは不気味と言う方が正しい。

それでも一刀は睨むのをやめなかった。

そうでもしなければ心が折れそうだった。

気に入らないんだなと受け取ったエンジェルはフフーと笑う。



「フフー、なら殺しに来ると良い。それが自分の思う正義だと思うなら実行しにおいでよ。だけど僕達死神のオリジナルはソラを合わせて10人いる。それを全部倒すつもりなら忠告しておくとするよ。オリジナルと呼ばれる死神は他の死神と格が違う。たった一人で国と渡りあえるんだ。たった一人で歴史を変える事が出来る存在なんだ。倒すなら修羅である事すら止めないと手も足も出ないかもよ?それと知らない事はそこのロイに聞くとほぼ全て分かると思うから問い詰めるなら彼にね。それじゃ〜ね〜」



エンジェルは空間を歪ませ穴を開けた。

アクーラとシエルは先に括り消えて行き、エンジェルをその空間の歪みに足を突っ込んで行く。

しかし何かを思い出したように立ち止まり一刀へと向く。



「それともう一つ。人を1人殺せば殺人者、10人殺せば殺人鬼、100以上殺せば英雄と呼ばれる。でも、1万人を殺せば殺戮者と呼ばれて恐れられる。これはソラが言った言葉さ。僕やソラ、アクーラはもはや殺戮者だ。君達は僕達を殺すときにまだ英雄でいられるかい?」



一刀の答えを待たずしてエンジェルは消えて行く。

戦場の悲鳴と喧騒を残して。



ソラが戦う戦場はほぼ一瞬で決着がついた。

戦争とは程遠い殲滅という戦いは一方的に残虐的に行われ、12万の兵はソラの武器の錆にすらならなかった。

そしてアクーラがいなくなった事により残った兵士達の我が返り敗走して行く。

その国の最高権力者達を置いてきぼりにして………

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