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エピローグ - 遊戯

神々にとっては、人間世界の出来事などお遊びに過ぎないのです。

+ ● & ○ + + + + + + + + +



「ああ、もう時間の様だね?」


「えっ? 何か身体が透けてる!」


 ゲンの言葉通り、彼の身体はあの女性達が現れた時とは逆に少しずつ存在感を減らして居る様だ。


「大丈夫だよ、ゲン。君の意識が戻るだけなんだからさ」


「そうか……、少しだけ楽しめたよ。ねえアルゴ、何故僕がここに呼ばれたんだ?」


「基本的には偶然だね、”窓”が開い世界から人が来るのは、多分僕が欲しているからだけどさ」


「欲している?」


「うん、例えばいきなり”窓”が開いてもそこがどんな世界かなんて直ぐには分からないよね?」


「見者アルゴでも?」


「おかしいかな? 世界は無数にあって、時代によって変わっていくんだ。同じ世界だって、場所によって全然言葉も常識も違うんだよ?」


「そうか……、とても憶えて居られそうもないね」


「いいや、幾らでも憶えていられるけど、瞬時に総てを見通すという訳には行かないからね。ゲンを通して”見る”事で、効率良くあの世界の事が分かると言う訳さ」


「じゃあ、今までこの部屋に来た人達も憶えているんだ?」


「まあね、総てと言う訳じゃないけど……」


 2人が会話を出来たのはそこまでだった。最後の一言を残して、ゲンと呼ばれた少年はその存在を薄めて、この部屋から完全に消え去ってしまった。


「アルゴ、元気でね」


「うん……」


「ゲン、君の物語ももう少し見せてもらうよ。伝え損ねたけど、この部屋に来た人達は、”窓”から見えた話に関係ある人達なんだからさ……」


 寂しそうにゲンがいた空間を見詰めながら、アルゴが呟いた。彼にとって2人で居た短い間よりもその部屋が広く感じられたのかも知れない。



+ ☆ & ● + + + + + + + + +



 理々に何故か妹が出来て数日後の夜、インターホンが鳴ったので俺が対応に出る事にした。そろそろ理々でも大丈夫なんだけど理夢がべったりなので自然とこうなるんだ。


「お待たせしました。両親は出かけていまして……」


「そうですか、まあ、引越しの挨拶なので、これを」


「ああ、ありがとうございます」


 引越しの挨拶に、挨拶品も持参とは結構律儀な人なのかな? トラックが突っ込んだ件で空き家になったお隣に引っ越してくるんだから、肝が据わっているのは確かなんだろう。


「改めて、隣に引っ越してきた、二宮です」


「不動です、よろしくお願いします」


「こっちの方がお世話になりそうだ。ああ、コイツが息子のアキトです」


「よろしくおねがいします! 今年高二になりました」


 高二か、この辺りだと俺の母校に転校なんだろうか? アキト君の体格は少し小柄で、顔付きも可愛い系だな。先輩の女子とかに可愛がられるタイプんだろうか?


「もしかして、アキト君は、西校かい?」


「あ、はい、もしかして先輩ですか?」


「ああ、落ち着いたらショートカットの道とか、色々教えるよ」


 少しでも早くかつ安全な道とか開発したからな……。(道じゃない所も通るけどさ!)


「お願いします、先輩」


「アキト君はどんな字を書くんだ? 明るい人とかぴったりだけど」


「あの……」


「現代人の代を抜いて現人(アキト)だよ。ゲンジンと呼ぶと怒るから呼ばないでやって欲しい」


「父さん、それ逆効果だよ!」


「大丈夫だよアキト君、君と俺が並べば、俺の方が”原人”に見えるさ!」


「先輩……、それはそれで悲しいですよ?」


 残念ながら、自虐ネタだけど事実でもあるんだよな。変装用に理々達と同じサングラスを買ったんだけど、サングラスをかけたままでいると露骨に人に避けられるんだぞ? すれ違った小さい女の子に泣かれたのはショックだった!


「こら~、クマ! 早く席に着きなさいよ、お姉様の手料理が冷めちゃうでしょ!」


「おっと、もう出来たんだな? 来客なんだからもう少し待ってくれ」


 別に話し込んだ積りは無いけど、理夢が文句を言いに来たぞ。理々の”妹”らしく覚えれば何でも出来るくせに、理々の手料理には目が無いんだよな。成長期だとか主張して料理を独り占めしようとするから暢気に世間話をしている場合ではないんだけどさ。


「リリム?」


「「えっ!」」


 その名前を呼んだのは、全く関係無い筈の現人君の口からだったのは何故なんだろう?



+ ◆ & ◇ + + + + + + + + +



 人間界ではない、天界と冥界の境に存在する”狭間の空間”がある。


 某中級管理職程度が作り出したのではない事は、見者でさえようやく中を覗けると言った点からも覗えた。その空間には2人(二柱と評するべきだろうか?)の住人がいる。


「のう、サレちゃん」


「何だ、モナとん?」


 呼び方はあれだが、れっきとした神々である。アンティークドールと言うより市松人形を思わせる少女の形をしたモノが天界神モナトウス、何処かのホストを彷彿とさせる軽薄そうな青年の形のモノが冥界神サウレニアだった。


 ちなみに互いの呼び名は相手が一番嫌がる呼び名を使っているだけの話だったりもする。ある意味意地の張り合いで決まった呼び名だが、本当は気に入っているのかも知れない。


「もしかして、我に隠れてこっそり人間界に干渉などしていないだろうの?」


「何を言う、我らが使徒に後を任せてここに居るのは互いに過度な干渉を監視しあう為だろう」


「ぞうじゃが、そちらの使徒が協定の裏をかこうとしたのじゃぞ?」


「ふっ、互いに監視しているのだよ。そんなに簡単に裏などかけない事は互いに分かっているのではないか?」


「ふん、それはそうじゃがの!」


「ただ今回は、使徒に施した我々の”教え”が蔑ろにされたと思わないかな?」


「何を言いたいのじゃな、サレちゃん?」


「少し冥界の規律を正そうと思ってね」


「冥界に規律とは、なんの冗談じゃな?」


「これは一本とられたな、確かに己の思う通りに生きるのが冥界の”教え”ではあるが、それを言っては協定の意味が失せる」


「じゃったの……、あんな小物が幅を利かせるようでは冥界自体も不安じゃろうな?」


「モナとん、他人事の様に言っているが、あの”腐天使”の様なのが増えれば誰も天界とは呼ばなくなるだろうな」


「腐天使とな! それは確かに由々しき問題じゃ……」


 思わぬ反撃に驚いた天界神だった。驚いて見せている様にも見えるが、冥界神は気付かない様子だ。


「どうだろうか、一度お互いの世界に戻って使徒達を再教育するというのは?」


「ふむ、良いじゃろう! 但し!」


「分かっているよ、妙な真似はしない。再教育の時間も最低限で構わないよ。天界の方は大丈夫か? 病根は深いと見たが?」


「サレちゃん、愛の形とは人夫々、”愛は与える物であって奪う物では無い”、それさえ気付けばあの使徒も正道に戻るじゃろう」


「結構だ、それでは」


「良いじゃろう!」


 次の瞬間、二柱の神はその空間から姿を消してしまった。各々の思惑を、胸に秘めて……。



+ ◆ +



「使徒へ向ける力を人間界に向ける、我ながらあれの監視を逃れる苦肉の策とは言え良く考えたものだ。多少暴走したのは想定外だったがな」


「しかし、あの人間、我が呪いを受けても死なぬとは中々楽しませてくれるな……」



+ ◇ +



「腐天使などと、あれに言われるとはの? 節操が無いのは冥界の十八番じゃろうに!」


「わが使徒が、あの人間に接触するまでは良くやったと褒めてやりたいものじゃがの。我からの”光”が薄れた為か妙な事をはじめたのは予想外じゃった」


「しかし、あの人間、わらわの祝福が無ければ、直ぐに死んでおったじゃろう……」



+ ◆ & ◇ +



「もう少し祝福を強化しておくかの!」

「もう少し呪いを強めておくか!」


 ”彼”の不幸はパワーアップして続く事が決定した瞬間だったが、今まで通り本人はその事実を知る筈も無かった。



+ ○ +



「成程ね、ゲンが巻き込まれないと良いけど……、やっぱり無理かな?」



+ + + + + + + + + + + + +



 十数年後、国際連合の停戦視察団の代表にヨウスケ・フジタのが任命される事になる。彼は積極的に世界中の戦乱に苦しむ国々を訪れ、交渉を奇跡的に成功させて行き、非公式に”救世主”と呼ばれる事になる。


 その”救世主”の身を守る鉄壁のボディーガードとしてコウスケ・フドウの名前も忘れてはいけないだろうが、夫を支えるリリ・フドウの存在は意外に知られていない……。


 そして、リリ・フドウを姉と慕う(慕い過ぎる)女性や、彼女に振り回されて苦労するその夫の事は何処にも記されない事実である。



救世主のお隣さんもこれで完結です。


短い話でしたがお付き合いいただき感謝致します。


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