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あなたに起こる奇跡 ~ まだまだ感染する知性『ミーム』 ~  作者: 風風風


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物語は大阪へ

「大阪か。……面白い」


湊は、窓から見える午後の柔らかな光を背にして、静かに微笑んだ。手元には、関西圏の主要な流行スポット、トレンドの発信地、そして何より「笑い」という名のエネルギーが渦巻く街、大阪の地図が広がっている。


「東京の洗練されたハックもいいけれど、大阪の『地』はもっと野性味があるわよ」結衣がタブレットを操作し、道頓堀や梅田の喧騒を映し出した。「ここなら、私たちのミームは一瞬で爆発的に増殖するわ。10人、20人なんて言わず、一気に『街そのもの』を塗り替えてしまえる」


「大阪の人は、笑いに対してとにかく厳しいからね」美咲が少し緊張した面持ちで、しかし期待を込めて言った。「でも、一度心を開いてくれたら、これ以上ない最高のパートナーになるわ」


健太は既にスパイクを磨き終え、やる気満々だ。「大阪といえば食い倒れ! 食と笑いと僕らのミームが混ざり合ったら、どんな化学反応が起きるか……ワクワクするね!」


四人は羽田から伊丹へと飛び、足早に大阪の街へと降り立った。


目指したのは、賑やかな御堂筋から一歩入った路地裏の、少し古びた喫茶店。そこには、SNSでのバズを追い求め、日々数字に追われて疲弊している、流行に敏感な若者たち、総勢20人が集まっていた。彼らは、高級なバッグや流行の服を身に纏っているが、その表情はどこか虚無的で、自分たちが「何を良いと思っているのか」さえ見失いかけていた。


「準備はいい?」湊が万年筆を指で回す。


湊が喫茶店の入り口に立つと、20人の視線が一斉に集まった。美男美女の四人組の登場に、店内の空気が少しだけ揺らぐ。


「……誰、あんたら」一人のリーダー格の男が、不躾に問いかけた。


「通りすがりの『演出家』さ」湊は微笑み、何も置かれていないテーブルの上に、スッと万年筆を立てた。「今日、君たちが持っているその流行という名の『枷』を、僕たちが少しだけハックしてあげる。……いいかい、君たちが必死になって追いかけているその『トレンド』は、君を輝かせるためのものじゃない。君を、ただの『記号』に埋没させるための防壁なんだ」


結衣が沙月のバッグをハックした時と同じように、空中に光のラインを引く。それは琳派の燕子花のように、店内を鮮やかな群青と金で塗り替えていく。


「な、なんだこれ……!」


店内は瞬く間に、都会の喧騒から切り離された「極彩色の舞台」へと変貌した。壁のポスターは動き出し、テーブルの上のコーヒーカップは、まるで茶道の粋を極めたような美しいフォルムを描き始める。


「さあ、飲みなよ」美咲が彼らの前に、ただの水が入ったグラスを差し出す。「今の君たちの感性なら、この水が最高に美味いカクテルに変わるはずよ」


「そんなバカな……」と呟きながらも、一人がグラスを口にする。その瞬間、彼の瞳が大きく見開かれた。

「……え? なんだこれ、すっごく……旨い!」


それを皮切りに、20人の若者たちが次々と笑い出した。

「おい、この店、何が起きてるんだよ! 面白すぎるだろ!」

「服のロゴが動いてるぞ! なんだこれ、光琳の模様か!?」


湊は彼らの中心で、指揮者のように万年筆を操った。

「大阪の心意気を見せてくれ! その流行の記号をただ消費するんじゃない。君たちのその笑いで、世界そのものを書き換えてしまうんだ!」


健太が軽やかにステップを踏むと、床のタイルが弾むようにリズムを刻み始めた。20人の若者たちは、もはやスマホの画面を見ることも忘れ、ただその場にいる仲間たちと笑い合うことに熱中していた。


「最高だ! もうブランド物なんてどうでもいい!」

「俺は、俺の面白いと思うことを、明日から全部発信してやる!」


喫茶店の中には、これまで彼らが隠していた「本当の自分」の輝きが満ちていた。それは、どんな高級なバッグを身に纏うよりも、ずっと眩しく、力強いものだった。


彼らは、自分の持っていた持ち物をその場に放り投げ、ただの人間同士として、お互いを認め合い、笑い転げていた。感染は瞬く間に広がった。喫茶店から外へと飛び出した彼らの「笑いの波動」は、御堂筋を通る人々にまで伝染していく。


信号待ちをしていたおばちゃんも、厳しい顔をしていたビジネスマンも、彼らの楽しそうな笑い声を聞くと、つられて笑い出し、持っていたスマホを閉じて、隣の人と会話を始めた。


「……成功ね」結衣が満足そうに微笑む。


湊は、街中のビルがまるで燕子花の庭のように、金色の光を放っているのを感じた。

「ああ。10人、20人じゃない。この街全体が、今、僕らのミームに染まった」


夕闇が迫る大阪の街。道頓堀のネオンが、いつもの極彩色の輝きから、琳派の抽象的な美しさに塗り替えられていく。人々の表情は、流行に追われる者の疲弊から、自由に遊ぶ者の輝きへと変わっていた。


彼らが残した「笑いの種」は、大阪という土地の持つ熱量と合わさり、きっと明日にはもっと大きな花を咲かせるだろう。


読者の君。

もし君が今、街で「妙に楽しそうに笑っている集団」を見かけたら、それは僕たちが大阪で仕掛けた「ハック」の余波だ。


君の心にも、その笑いが届いているはずだ。

さあ、次に塗り替えるのは、君の暮らすその街か、それとも、君自身の日常か。


僕たちは、まだまだ世界を笑いで塗り替え足りないんだ。

次の目的地は、どこにしようか? 君の街へ、僕たちを呼んでみるかい?

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