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悪魔オヤジのムソウ  作者: 祇神 安紀
王都
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従者

俺は一目見て絶句してしまった。

ディアナは目を()らし、白パンちゃんは口を押え涙目になっている。

一瞬だが、魔物が出てきたと勘違いしてしまった。

一見して身長は110センチくらいの男の子供のようだ。

俺は恐る恐るその子に思い切って声をかけた。


「ここの責任者の人か誰かいるかな?」


なるべく優しく聞こえる様その子供に声をかけた。


「ううぅぅ・・・」

その子供が(うな)り声を上げると、奥から一人の女性が現れた。


「何だい、どうしたんだい?」


「あ・・こんにちは、人を雇いたいのですが

 家事が出来る人を探してまして、

 住み込みで働いてくれる方がいいんですけど、誰かいますかね?」


なるべく、子供の方を見ないようにして女性に話しかけた。

40歳前後くらいだろうか、髪を短くまとめたやはり美しい女性だ。


「ふぅ~ん・・あんたがワーカーを雇いたいのかい?

 住み込みでね・・・あんたとかい?」


今回俺が雇いたいのは身の回りの世話をしてくれる人だ。

この案を出した時には、騎士団員皆が、自分がやると希望してくれたが

アイラを含め団員には別にやる事が多い。

なので却下した。

俺に(かま)っている余裕など無いはず・・・夜間もない!!


ここの女性は何か品定めでもするような目で俺を見て


「そうだね、家事ができる者はいるちゃあいるが、

 あいにくワーカーはもう一人しか残ってなくてね。

 最後の一人なんだけどさ。

 ちゃんと面倒見切れるのかい?

 場合によっちゃあ、ずっと面倒見ることになるんだよ、

 本当に良いのかい?」


「ええ、ちゃんと仕事をしてくれるなら、きっちり面倒を見ますよ。」

当然のことだ。

俺の身の回りの世話をしてくれるのだから。

きっちり給料も払う・・多めに払うつもりだ。


「どうする?働くかい?」

何故かここにいる子供に確認していた。

ハ、ハッ・・・・まさか・・・

今のこの国では10歳未満の労働は禁止で、親元で暮らすか

親がいない場合は官立の施設で暮らすことになっている。

ここにいる子はどう見ても5~6歳くらいにしか見えないのだが。


「ううううう・・」


何故か思い切り首を縦に振っている。


「最後の一人がこの子さ、こう見えても年は11歳だから。

 家事もちゃんと出来るから安心おし。」


他にいないのかよ、と思いつつも俺は契約を交わした。

男の子だがいいだろう・・まだ建前上は男子禁制で本当は宿舎に入れないが

俺が許可したで押し切ろう。

立場上は俺の従者って事にすれば問題は無いはず・・だよね・・

仕事さえしっかりやってもらえれば問題は無い。

契約に関して賃金は多めにして、休暇も与える。

(あれ?今の騎士団は休みが無いな・・)


この子は物心ついた時には既に奴隷だったらしい。

とある貴族の家で奴隷として扱われ、その貴族から虐待を受け

この様な体になってしまい話すことも出来なくなってしまったと言う事だ。

しかし、いくら奴隷だとは言えここまで(ひど)い扱いをしても

許されるのだろうか。

まあ、この様な事が無いよう奴隷制度を廃止し

ワーカー制度に切り替えたようだが

出来るならもっと早く取り組んで欲しかったと思った。


あとこの子の服や下着、靴など生活に必要な物を生活に必要な物を

ここの女性に買い付けを頼んだ。

女性に手間賃も含め少し多めにお金を渡し、それでも余ったら

彼女の小遣いにするように言ってある。


初め俺はこの子の年齢を疑い、また家事が出来るのか不安になったが

白パンちゃんやディアナが、ここの女性が言うなら

大丈夫だと言ったので雇うことにした。

後で分かったことだが彼女はここの、と言うより

国のワーカーに関する全責任を負っている人だった。

信頼に足る人物ってわけだ。


多めにお金を渡したからか

「あんた、お貴族様だったのかい?」

・・・思い切り否定した。

「ふ~ん、豪気だね、あんた、気に入ったよ。

 お前もこの人の所で頑張るんだよ。」

そう言って子供を励ました。


初めはその子の服をディアナが作ると言ってくれたが、

俺の身の回りの世話をする者のためにディアナの手を

(わずら)わせることは出来ないので既成の物を用意した。


ワーカーの契約手続きだが、雇用主である俺が

被雇用者に名前を付けることになった。

この子供は、物心ついた時からの奴隷だったので名前が無いらしい。

どちらにしても、魔族では雇用契約に関して

名付けをすることもあるので今回名付けることになった。

「そうだね・・・ケイ・・ケイってどうかな?

 気に入ったなら、ケイ・ロンヒルってことで・・」

この子を見て名前をどうしようかと思った瞬間、元いた世界の文字で 

慶・景・恵などの漢字が思い浮かんでしまい思わずケイと名付けた。

イメージ的に今後この子に良いことが沢山訪れますようにと言う

願いを込めてみた。


ここにいる皆がかなり驚いた。


「お兄ちゃん、あんた・・ありがとよ。

 この子を家族として迎え入れてくれて。」


この女性は涙ぐみながらお礼を述べた。

喜んでいるのかこの子の表情からは読み取れないが

嗚咽(おえつ)のような声がこの子から聞こえ、勝手な解釈だが

喜んでいるのだろうと思うことにした。

白パンちゃんは驚き、ディアナはしょうがないって感じだ。

姓まで与えるってことは家族として迎え入れるってことを意味している。

なのでケイは今日から俺の家族扱いと言う事になった。


・・・知らなかった、誰か先に教えておけよ!


しかし、今回契約を交わして初めて気が付いたが、この契約には数多くの欠点がある。

この点は早急に改善しなければならないとは思うが

それにその権限が俺にあるのかは不明だ。

これも内務卿に相談した方が良いだろう。

今更だが、ハチがここの国王を低能扱いした理由が分かった気がする。


契約も終わりケイを連れて帰るが、歩きが遅くかなり時間が

掛かりゆっくりの帰宅になってしまうので

ディアナと白パンちゃんを先に帰しついでに、今日の夕食や

明日の朝の食事の食材も買って帰った。



チャンと歩いてね、ケイ。


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