対峙
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本日更新分7話目になります。
翌朝、王城詰所より緊急連絡が入った。
外務卿が第4軍およそ2000を引き連れ詰所に押し掛けて来た。
防御魔法・回復魔法が得意な者を旧騎士団詰所後に送り全員を
王城詰所に送り、王城到着と同時にアイラが軍務卿と対峙した。
アイラが外務卿に昨日同様に道理を説くが
外務卿も昨日同様高圧的に抑え込もうとする。
・・平行線だね~。
ただ、昨日と違いアイラは殺気を徐々に漲らせてきた。
やる気満々、いいね~・・・・と少しだけ想った。
アイラは懇切丁寧に言葉を尽くし外務卿を説得しているが
その裏腹に殺気も高まってきて爆発寸前だ。
・・アイラのヤツ・・・あっ!
外務卿は後ろに控えていた第4軍に師団排除の命令を下した。
アイラの師団も負けじと即座に対応し臨戦の構えをとった。
俺は今日、手を出さず見守るつもりだった。
アイラたちの師団を構成する団員はみな軍人だ。
軍人であるから、怪我は勿論死ぬことも覚悟はしなくてはならない。
死は恐れるべきものだが、その覚悟は別だ。
死を恐れていても、覚悟が無ければ軍人なんかやっていられない。
別に覚悟の程を見極めるつもりとかでは無いのだが、
軍人としてある程度の経験は必要になって来る。
戦闘経験皆無の優秀な軍人と、戦闘経験豊富な平凡な軍人とでは普通
勝負にならないほど経験豊富な軍人が圧倒的に優位だ。
今回、俺は彼女たちに経験を積んで貰う為に、全てを任せた。
手を出すつもりではなかったが、状況がそうはさせなかった。
・・・・・面倒だ・・・・・
俺は両軍の中に割って入り声を荒げた。
「命令!両軍その場を動くな。」
辺り一帯に俺の声が鳴り響いた。
両軍ともその場で動きを即座に止めた。
王城の方を見れば多重の対魔法防御結界が張られている。
俺はひとつため息をつき、
「おい、おっさん。
お前今、何をした?
王国軍に何を命令した?」
近衛師団であるアイラの軍に国軍を差し向ける行為は国軍を私物化した
国家に対する反逆と同じだ。
「お、おっさんだと!?
こ、この俺を誰だと思っている!!」
「知るかヨ、知らねぇ~から、おっさんって言ってんだ。」
本当は外務卿って知っているけど、それ以外何も知らないので嘘ではない。
「こ、この・・下民のくせに・・・
吾輩はプトレ王国外務大臣のミソヅケール・フォン・ナッスビーである。
控えよ、下民!!」
「へぇ~、外務大臣様か~・・・頭悪いじゃない?
ナスビさん、脳みそ残ってる?
もしかして、みそ漬けで食べちゃった?」
「こっ、この~・・・・
おい、お前たち、先にこの下民をかたずけろ!」
王国第4軍の司令官らしき者に再度命令を出すが、その男は俺に顔を隠すように
下を向き動こうとはしない。
「おい、そこのおっさん、あんた、この軍の指揮官?
だったら、引き揚げなよ、その方があんたの為だからさぁ~。
それとも、ここで俺とやるか!」
「ひ、引き揚げます。」
「そうそう、反逆罪で処刑されるからな~。
引き上げた方が身のためだ。」
「全軍、演習終了! これより帰舎する。」
俺は第4軍を引き上げさせ、残るナスビと対峙した。
「お、おい待て、どこに行く・・・
おのれ、下民め・・・・」
「おい、ナスビ!!
お前さぁ、国王陛下の決めたことに歯向かう気か?
そうなるとさぁ、反逆罪適用できちゃうんだよね~。
・・・殺すぞ、お前。」
殺す気なんてないけど、少し脅しておこうと思った。
こんなどうでも良い様な事でチャチャ入れに来られても面倒なだけだ。
これで暫くは文句言って来ないだろう・・・来て欲しくない。
「お、覚えていろ!」
ナスビはそう捨て台詞を吐きながら、ビビった様子で去って行った。
戦闘回避で皆安心してホッとしているが、かなり気疲れしているようだ。
その中でアイラは下を向き悔しがっている。
まあ一段落ついて、詰所・旧宿舎の当番以外を新宿舎に皆送った。
アイラたち数名は今日の出来事を、結果を含め王城に報告に行った。
新宿舎では皆が無事問題を解決?出来たことを喜んだが
王城から戻ってきたアイラだけはまだ沈んだ感じだった。
夕食を済ませ、俺はアイラを連れて出かけようとしたら
ノアルが付いて来ようとするので二人だけにする様にノアルに頼み、
アイラを新宿舎から連れ出した。
アイラ・・・今までの事を全て忘れさせてやる!




