遠吠
副団長は朝っぱらから騒がしかった。
あれだけ元気なのだから今朝から訓練に参加してもらいたかったが
念の為、今日は不参加だ。
不参加は別にいいのだが訓練の最中、遠くから叫び声が・・・
「この下衆が・・・この下郎め・・・平民の分際で・・・」
まあ無視を決め込んだが
「処刑だ・・切り刻んでやる・・串刺しにしてやる・・」
中々もって過激な発言へと発展していった。
小さいアンパンのくせに生意気奴だなと思ったり
結構サディスティックな奴だなとか思ったり
小さいアンパン、スモールアンパンではなく
サディスティックアンパンだな・・・とか思ったりした。
今後副団長をSアンパンと呼ぶことに決めよう。
しかし、Sアンパンは決して近寄っては来ない。
まるで遠巻きに吠え散らかす子犬みたいだ。
他の団員たちと話をしている時は年齢相応(13歳)に見えるが
俺に向って話す(叫ぶ)時は胸を張り尊大に構えたりする。
どんなに胸を張ってもSサイズがMサイズに変わったりしないのだけど
とか、思ったりした。
今日一日の訓練も終えたので、俺は明日に備えようとする団長に相談した。
「副団長もあれだけ元気になったので
明日王都に向けて出発した方が良いんじゃないですか?」
そう話をしたら、どこからかSアンパンが団長の所に飛んできて
「団長、私はもう平気です。
明日の朝とは言わず、今すぐここを出発しましょう。」
話は少し遡る。
本日の訓練中、大福4人組が俺の所にやって来て副団長について
どうでも良いことだが簡単に話をしてくれた。
名前は、名前、なま・・・・・・・忘れた。
年齢は13歳、人当りも良く団員たちにも人気がある。
彼女の実家は高位貴族で侯爵家らしい。
根っからの貴族であり礼儀正しく言葉使いも非常に丁寧である。
高位貴族のご令嬢でもあるので、男性貴族たちからの人気も高く
婚姻の申し込みも団長に続き多いらしい。
しかし、何故か全ての申し込みを今まで断っている
婚姻申し込みを断る際は、団長の様にいきなり魔法を放つことはせず
丁寧に理由を説明し相手も納得して引き下がっているとのことだ。
この様な話を聞かされたが俄かには信じられない。
まるで本物の侯爵家ご令嬢ではないか・・
狂暴・凶悪・サディスト?・・まぁSなのには違いない。
大福たちが言うには、若しかしたら今回の盗賊の襲撃で
男性に対して何かトラウマを抱えたのかもしれないと・・・
どちらにしても、彼女たち皆がここを出て行きさえすれば問題は無い。
Sアンパンの提案に俺も賛同したいが、今から出発すると夜間行軍となる。
流石にそれは危険を伴う行動だ。
「副団長、貴方は騎士団員皆を危険に晒すつもりですか?」
即座に団長が応えた。
「そのような危険を伴う行動は許可できません。」
Sアンパンに団長は言い聞かせるでは無く命令口調で言った。
「お言葉ですが、ここも安全とは言い切れません。
ならば早く王都に帰還すべきです。」
Sアンパンに対し団長は怒ったように告げる。
「貴官が安全ではないと思っている場所で、貴官の身に何があったのか
思い返されては如何ですか。」
あら・・・団長、怒った。




