表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/124

37話 時計塔の中へ

♦︎♦︎♦︎

街は、こんな時間でもまだ明るく賑やかな所と、すっかり寝静まっている所がある。

どんな街にも曲者はいるもので、賑やかな所は、酔っ払いに絡まれる可能性があるし、静かな所は、誘拐などの危険もある。


要するに、夜の街は危険なのだ。まして、一目見て高級な服と分かる服を着て出歩くなど、自殺行為でしかない。

けれど、私はそんな事はお構いなしに、目的地の場所まで一直線に走っていた。


つまり、この国のシンボル、からくり時計の所へ。


今日の昼、私はアルバートに、この国の貴族の誰かが、違法に孤児を買っている可能性がある、と話した。もしこれを、犯人か、協力者が聞いていたとしたら…

彼を排除しようと動いても、おかしくはない。


そうして、全ての換気口が閉まる0時から1時までの間、アルバートを時計塔の中に閉じ込めておけば、魔石から発生する毒ガスで彼は亡くなってしまうだろう。


だが、犯人が公爵ならば、わざわざ犯人が自分しかいないと分かるような、こんな愚かな事をするだろうか。

公爵は多分、相当な切れ者。こんな明らかすぎるヘマをするとは思えない。


もしかして、彼が犯人ではない…?それとも私の推測が間違ってる?

少し、不安に思いつつ、私は一心不乱に夜の街を走っていた。


♢♢♢

「はぁ、はぁ、つ、着いた」

今、私がいるのは時計塔の真下。

多分、20分は走ったと思う。体力はそんなにないけど、火事場の馬鹿力ってやつだろうか。

汗だくで息も上手く吸えない。ゼェ、ゼェと歩きながら息を整える。


幸いにも、誰にも絡まれず、トラブルに巻き込まれる事もなく、無事にからくり時計にまで辿り着くことができた。

さて、この中に入るには入り口を探さなければならないが…


「大きいし暗いから、何処に出入り口があるのか、さっぱり分からないわね」

こんな事になるなら、事前に探しておけば良かった、と今更ながら後悔する。


高さは80〜90m(?)ぐらいだと思う。(何せ目測だから正確には分からない…)

しかも、土台の部分を1周まわるにも、数分はかかりそうだ。

けど、ここで諦めてしまうわけには行かない。


私は、出入り口を見つけるため、暗闇の中を時計塔の壁に沿って歩き出した。


「ここ、みたい、ね」

1分ほど歩いた所で、ドアらしきものを見つけた。


開いてるわけ無いよね。そう思いつつ、ドアに手を掛ける。

ガチャリ。あれ、開いた。少し驚きつつも、そんな事を気にする時間は無い。


ドアをめいいっぱい開けたまま、私は時計塔の中にある階段を登りはじめた。


♢♢♢

もし、アルバートを亡き者とするため、この時計台に閉じ込めたのだとしたら、彼は何処に閉じ込められたか。


1番の可能性が高いのは、おそらく時計台の上部。

最上階には時計機械室もあり、おそらく魔石もそこにあるはずだ。なおかつ、アルバートが助けを求めたとしても声が地上には届きにくく、脱出にも時間がかかる。


闇雲に捜すよりも、ずっと良いはずだ。私は一心不乱に階段を登りはじめた。


「ここが、さい、じょう、かい…」

息絶え絶えになりつつ、私は時計塔の最上階までたどり着いた。すぐそこには、時計盤の裏側や、ぜんまい、歯車などの時計の部品が見える。


「はぁ…アルバート様!いらっしゃいませんか!」

息を吸って大きな声で彼の名前を呼ぶ。喉がカラカラだったせいか、少し掠れ声だったのは勘弁してもらいたい。


しばらく待っても返事がなく、下の階を捜そうと階段に足をかけたまさにその時、カタ、という音が聞こえた。


普段なら気付かないくらい微かな音だった。だが、彼を見つけなければ、という緊張からか私の耳はその音を拾った。


「アルバート様!」

階段にかけた足を戻し、さっき聞こえた音の方へ走り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] えと…部屋に事情を聞きにきた騎士を、足が遅いと自覚のある令嬢が撒いたんですか? 騎士たちは急に走り出した重要参考人をぼーっと見送ったのでしょうか? 何か知ってそうなそぶり見せたのに… …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ