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雪の繋がり  作者: 神命紫月
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中編

妖精は多種多様。

そして、妖精には性質がある。

春の妖精なら花の香りがし、花の特徴が抜きん出ている。

夏の妖精は、エメラルドグリーンの瞳を持ち、暑さに強い。

秋の妖精は、それぞれ違う才能が出てくるが、主な特質は黄色が光の角度で赤色の瞳に見えること。

冬の妖精の特徴は……。

真っ白な色を持っていること。

そして、悲しいことに雪の性質を帯びていた。



スノゥがある理由でチェリィと交代しないことから、いつもなら冬が終わり、春が訪れる季節になっても冬が続き国民たちは困惑する。

冬はいつまで延びるのだろうか。


スノゥの心の内を表すように、その年はとても寒く、雪も沢山降った。

酷い時は、荒々しい吹雪であった。


国民たちは何故、冬が続いているのか不思議に思う中、淡い光を放つ小さなものを見た。

それは、王城の各季節の女王が入る塔の方へ向かって行く。

その光が何であったのか、国民たちは知らない。



イズシン53代目の王や重臣たちを含める偉い人々が冬の女王を説得しようと塔に向かった時に見たものは、沢山の光を放つもの。

指を指し、誰かが声を上げる。

「妖精だ!」

それに続いて増えていく声。

それを気にせず、光を纏う妖精たちは塔の中へ入ろうとしている。

1つの光が塔の窓をコンコンと叩くと、塔の中のスノゥが反応を示した。

スノゥはおそろおそろ、塔の窓に近づく。

そこにいたのは光を放つ妖精たち。

「冬の女王様、開けてください。」

1人の妖精がハキハキした声を出す。

だが、スノゥは首を振って否を唱えた。

しかし、ユキが彼らの言葉を聞き入れるように伝える。

「彼らはあなた様の能力を保持している妖精たちです。 冬の妖精たちですよ。 あなた様が会いたがり、守ろうとしようとした妖精たちです。 (まぁ、守り方は好ましいものではありませんが……。)」

スノゥは目を見開く。

それを示すのは驚愕であった。

スノゥは彼らを塔の中に入れるために、窓をゆっくり開いていく。

その隙間から少しずつ妖精が入って来て、窓が全開になった時に一斉に光を纏う妖精たちが入ってくる。

また、妖精たちの光が輝きを増した。

そして、妖精たち次々と喋っていく。

「ふゆのじょおうさま。」

「ふゆのじょおうさまだ。」

「あいたかった。」

「まもってくれて、ありがとう。」

まだまだ続く声。

「でも、かなしいことはもうおわりにしなきゃっ!」

「だれかをこまらせることはかなしいよ。」

妖精たちが何を言いたいのか分かったスノゥは首を振った後、言葉を紡ぐ。

「いやよ。 絶対に冬は終わらせないわ。 だって、冬の妖精が全て消えてしまうくらいなら恨まれてもいいから、ずっと冬のままでいいの。 守りたいのよ。」

その声は芯があるもので何処までも響くような音を持っていた。

そのためか、塔の近くにいた偉い人々にも聞こえたようだ。

彼らは、スノゥが塔に入り続けている理由が分かり、1人が王命で他の季節の女王を呼びにいくことになった。

その1人は走って王城に向かう。

そんな慌ただしい中でも響く妖精たちの幼声。

「ダメだよ。」

「ぼくたちがたいせつにされていることはうれしいけど、それはダメっっ!」

「じょおうさまがきらわれたりするのはヤダもん。」

少ししてから落ち着き払った妖精たちの声が聞こえてきた。

「ぼくたちはへいきだよ。」

「きえてもへいきだよ。」

「そこでおわるわけじゃないよ。」

「つぎにつながっていくんだ!!」

2人の妖精がスノゥの目の前に出る。

「女王様の近くにいた、ユキが言っていたように、僕たちは女王様の傍に在り続ける。」

「見えなくても傍にいる。」

スノゥはそれでも、嫌よ、と細々と言った。

1人は嫌なのだと声を発し、やっと孤独から抜け出すことができたのに、と声を出した。

妖精たちは彼女に抗言する。

「1人じゃない。」

「ぼくたちはじょおうさまのそばにいるよ。 いつもいっつも、じょおうさまのこころのなかにいるんだっ! 」

「めにみえなくてもいるの。」

「だって……。」

そこで、スノゥの周りが光る。

ボウッと優しい光が辺りを包んだ。

「じょおうさまのココロをてらすぼくたち。」

「さびしくないようにいつもいっしょ。 みえないだけでいつもいっしょ。」

スノゥは頰を幾筋も濡らした。

光は彼女を包みつづけた。

妖精も光を放ちながら、彼女の傍にいた。

その日はずっと、彼らと過ごした。

泣いた後は、満面の笑みを浮かべて……。

それは何かに吹っ切れたような輝かしい笑みだった。




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