プロローグ
私が選択し行動した結果は、大きな間違いだった。そう思い知らされ後悔したが、過去には戻れない為に手遅れだ。頭に血が上った私の感情と興奮が、相手にも伝わったのだろう。そこから互いに罵り合う羽目になった。それがいけなかった。
元々人との意思疎通を苦手とする私が、口喧嘩で勝てるわけがない。また言葉足らずの乱暴な口調により、思わず相手に手を出させてしまった。そこで冷静になり距離を保っていれば、まだ過ちを正せただろう。
しかしそれが出来なかったのだから自業自得とも言える。その結果、私は突き飛ばされるような格好で一瞬宙に浮いた。そしてそのまま後ろ向きに転がり落ちたのだ。
まるでスローモーションのようだった。夜の帳に包まれた中、街灯がうっすら照らした相手の表情は驚いて目を見開き、こちらに手を伸ばすような素振りをしていた記憶がある。
しかし途中で頭に強い痛みを感じ、気が遠のいた。私がここで死んでしまったら、もう取り返しがつかない。望んでいた想いを遂げるどころか最も敬遠したかった事態に陥り、強い後悔の念を抱いた。何とかやり直すことはできないだろうか。
相手が出したと思われる声を耳にし、冷たいアスファルトを背中で感じつつ、水溜りのような温かいものが顔の左半面を覆っていく。それが自分の血だと気付くと同時に、朦朧としていた意識は突然途切れた。