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46 最終回


なんだかんだで結婚をすることは決定事項になってしまった。もうあらがう元気もない。

結局、日本に帰ると決めた時にこうなることに決まっていたのかもしれない。

蓮を忘れることができなかったのだから仕方ない。彼はユカのことをなんでもないと言うけれど、わたしはやっぱりユカのことを一番に考える蓮を知ってるだけに信用はしていない。それでも良いと、高校生の時と同じように蓮の手を掴んだのだから何があっても逃げ出すことだけはしない。

若かったあの時とは違う。結婚するのだから今度は逃げてはダメだ。と言うかもう逃げられないと思う。


「まさかまだ悩んでるんじゃないよな」


「さすがにもう覚悟を決めたわ。ただ、今度は高校生の時とは違うんだから逃げることはできないんだなって思ってたの」


「まだ逃げることを考えていたのか? 今度は逃さないよ。俺だって高校生の時とは違う。あの時は周りが見えてなかったし、菜摘が一番大事だって自覚が足りてなかった。菜摘に拒否られて初めて気付いたこともある」


蓮はわたしが自分から離れてしまうことを考えていなかったと言う。確かにあの頃のわたしはそんな感じだったのかもしれない。蓮と違う大学に行こうとしてたけど、日本にいれば完全に別れることができたとは思えない。あの事件がなければユカのことを気にしながらもずるずると関係は続いていただろう。そしてそこに未来があったのか、それとも結局は別れていたのか今では知るよしもないけど、わたしは再びチャンスをもらったのだと思う。どうしても忘れることができなかった蓮との未来。蓮の隣に立つ自信ははっきり言ってないけど、蓮や蓮の両親は手助けするから大丈夫だと言ってくれた。

朝比奈コーポレーションの御曹子である蓮と庶民のわたし。きっとこれからも試練が待ち受けている。正直怖いし、逃げたい気持ちはまだある。でも蓮がそばにいてくれるのなら大丈夫。どんな試練にも耐えてみせる。わたしは長いリハビリ生活で耐えることを学んだ。毎日欠かさず続けないと一歩進んでも二歩下がるような気の長い毎日だった。逃げ出したいと何度も思った。でも逃げ出さずに頑張って歩けるようになった。きっとこの経験はわたしの役に立ってくれるはずだ。

蓮がそばにいてくれるなら、わたしはもっと頑張れる。


「ああ、そうだ。ユカにメールしないと。アイツの結婚式の方が先だから手伝って欲しいって言われてたんだ」


やっぱりと言うかユカとはこれからも付き合っていくことになるんだ。


「もう手伝うことってそんなにないでしょ。何を手伝うの?」


「それがさ、あいつら結婚したらアメリカに住むことにしたらしいんだ。俺たちがアメリカに行こうと思ってたのに、高木の方が決断が早かったな」


「蓮はアメリカに住もうと思ってたの?」


「ああ。菜摘がユカとのことそんなに気にしてるって知らなかったから、菜摘の気持ちが落ち着くまではアメリカにでも行って二人っきりの生活もいいかなって考えてたんだ」


蓮はわたしのためにそこまで考えてくれていたようだ。でも高木さんも蓮の存在は疎ましかったようで、新婚の間は蓮に邪魔されたくないとアメリカでの新婚生活に踏み切ったようだ。

わたしはハネムーンの間だけ忙しくなると思っていたけど勘違いだったようだ。高木さんがわたしを教育していたのはこのことのためだったみたい。これは思っていたより大変な気がする。アメリカにいる高木さんを日本でサポートする仕事がわたしには与えられるのだろう。

もしかしてユカとの邪魔をされまくった高木さんの意趣返しではないだろうか。わたしは半年後にある自分の結婚式の準備ができるのか不安になった。

そんなことをまるで考えていない蓮は鼻歌を歌いながら運転している。


「やっぱり、早まったかなぁ」


わたしの呟きにさえ気付かないくらい浮かれている蓮は実に楽しそうで、わたしもこれからの事は忘れて今を楽しむことにした。

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