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第一章 プロローグ3 女神学園

「ねぇ、お願いよ。私の言う事を聞いて、真央」

 椅子に座りながら、甘える声で、あたしの姉、瀬那麻里せなまりは、一枚のスクリーンを見せて、懇願してくる。



=============================

 女神学園コスモス所属 夢の悲願者ブロード


 二年 風紀委員長 瀬那真央せなまお



 貴殿に、一年 涼風司すずかぜつかさ柊佳織ひいらぎかおり

 二名の教育係を命ずる



 女神学園所属 戦闘の豪遊者テイラー 


 三年 生徒会長 瀬那麻里 

============================



「嫌に決まってるだろ! 誰が、こんな事するか!」

 当然、拒否である。

 ただでさえ、風紀委員で取り締まり等があって、忙しいのに、こんなことをしている余裕は、私にはない。



「えぇ……そこを何とかお願いよ! お姉ちゃんの言う事を聞いてよ」

 再び、猫なで声でお願いしてくる。

 本当に、うっとおしい姉だ。一つ一つの仕草が、私にストレスを与える。



 他の人から見たら、美少女で、スタイルの良いから、その仕草が最高なのだろうが、私にはそれが不愉快でしかなかった。

 何故なら、姉は腹黒く、事あるごとに私を利用しようとするからだ。

 それに、

「どうせ、また自分の楽しみの為にこんな要件、持って来たんだろう?」

 姉は、私が人間なのに、大して神人だ。どうせ、自分の楽しみの為にやっているだけだろう。



「あら、ばれちゃったかしら? 結構、演技したつもりなのに……」

 嘘を吐け。

 最初から、欲望丸出しだっただろう。てへっと、舌を出すその姿、ああ、イライラする。



 ホント、最初に、

『大事な話があるわ。今すぐ、生徒会室に来て』

 偉く真剣に電話で呼び出すから、少し心配になったが、やっぱり自分の為だった。少しでも、信用とした私を殴りたい。



「もう、そんな怖い顔しないでよ~。しょうがないじゃない、これって、神人の性だし。自分の為に、誰かを利用して、何が悪いの~」

 少し顔を高揚しながら、私に悪びれることなく話す。

 本当に、気に入らない姉だ。

 私が、いつまでも姉を睨み付けていると、冗談よ、軽く呟いてから、私に先とは異なるスクリーンを見せる。



「今、私達の女神学園って、他の学園との序列争いランクバトルで、負け続けているのは知っているわよね?」

 スクリーンに映し出されたのは、今姉が話していた日本の学園の序列争い、現在の様子だった。



 ここ、最近では、神人の中でも優劣を競い合うようになり、そこから始まったのが、序列争いだ。

 日本には、戦闘遊戯ステラを必須科目、行事として取り入れている学園は、十五校ある。その中で、上位を争っている。

 そんな中、女神学園の順位は、十三位。着実に、最下位へと近づいている。



「ああ、知っているが…………それが、どうした? さっきのと、関係があるのか?」

 残念ながら、私には、姉のお願いとの接点が見つけられなかった。とても、関係があるようには、思えなかった。



 すると、姉は少し拗ねたように話を続ける。

「関係あるわよ~私は、そこまで意味のない事は話しません! どうしても、女神学園は頂点に立ってほしいのよ……」

 その為に、彼らの教育係をやらされるのか……? そんな事して、いったい何の意味があるのだろうか。少し考えてみる。



 そこで、ふと。

「なあ、姉さん? もしかして、この二人を、戦闘遊戯祭ステラシップを出すつもりなのか?」

 戦闘遊戯祭とは、今から二か月後に開催される、現在誰もが優勝を取るために切磋琢磨する祭典のことだ。



 話が戻るが、序列争いは、学園に与えられるポイントによって、順位が変動する。

 その内訳は、学園の教育、環境、生徒個人の成績など沢山あるが、その中で一番大きく影響してくるのが、戦闘遊戯祭だ。

 それに、優勝した者達は、ポイントが他の採点とは馬鹿にならない程手に入る。個人的には、賞金が1000万円と神人の猛者達への挑戦権が与えられる。



 学園に貢献も出来、そして神人の猛者達と闘い、勝てば自分の願いが叶うという美味しい待遇が待っている。

 それゆえに、戦闘遊戯祭に向けて、どの学園も万全の準備をしているのだ。そんな戦場に、不確定要素が大きい彼らを参加させるのは、無茶がある。



 だが、その無茶を淡々と口にした。

「ええ、そうよ、私は、彼らを参加させる。よく分かったわね、真央。頭を撫でてあげようか?」

「止めろ、気持ち悪い。それより、本気なのか?」

 真剣な表情で、姉は頷く。

 どうやら、冗談ではないらしい。参ったな、これは。



「本気なのは、よく分かった。だが、彼ら以外にも適役な人物はいると思うが? 優勝を狙うなら、彼らよりもよっぽど勝てる可能性の生徒を――――」

「駄目よ、彼らじゃなければ」

 不意に、姉に言葉を遮られる。そんなに、彼らが優勝するために必要な人物なのか……?



 最初に見た、スクリーンと彼らのデータを確認する。

 涼風司。女神学園高等部一年、所属夢の悲願者。これだけ見れば、普通なのだが、あいつは何かと中等部二年の後半から、突如様々な問題を起こすようになり、今は完全に問題児扱いだ。

 学園、授業の無断欠席、器物損害など数えれば、沢山出てくる。

 あいつを使う理由なんて、どこにあるのか。



 そして、もう一人、柊佳織。女神学園高等部一年、所属戦闘の豪遊者。つまりは、神人の生徒という事だ。ただ、学園一の落ちこぼれと呼ばれ、成績が芳しくなく、噂だが、最近退学宣告をされたとか。別の意味で、彼女も色々と問題だ。

 それに、神人である彼女を出す理由が分からない。

 


「さすがに、そこまでは頭は冴えないか……なら、理由を教えてあげようかしら」

 私が、思考しているのが飽きたのか、そう呟いた。

 だったら、最初から語ってほしいものだが。



「理由は、ズ・バ・リ! 彼らの潜在能力よ!」

「潜在能力……彼らにそんなのが……?」

 何か、隠し持っているとは想像できない。



「彼らの事情を、最近色々と調べていたのよ。そうしたら、面白いのが出てきたのよ」

 そう言って、姉は小悪魔のような笑みを浮かべると、私に新しいスクリーンを突き付ける。

「こ、これは……」

 それは、彼らの生まれてから現在に至るまでの報告書だった。



 今は、一人一人の生活の記録が、神人によって記録されているようになっている。そんな事が出来るのも、神人の固有技能ソウルギフトの力らしい。

 もちろん、そんな個人情報は、普通なら見れない。だが、目の前に姉はこの学園の生徒会長。とんでもない権力を持っているのだ。



「まずは、司君の方ね。彼、生活の記録を取られているはずなのに、所々情報が無いの。特に、今から二年前の夏からの情報が全くないの」

 確かに、眺めると所々文字化けしたりとか、穴があったりして、情報がよく分からない。

 特に、姉の言う通り、今から二年前の情報が。



「この空白の二年ってね、あの伝説に当てはまらない?」

「伝説って、まさか……?」

 神人達を打倒したという、ある人間の話か……?



「あり得ないだろう、どうしてアイツがそんな伝説を打ち立てるんだ……?」

「ふうん、幼なじみ(・・・・)である真央ちゃんまで、そんな事言うんだ~」

 残念そうに、姉は呟く。幾ら何でも、夢を見過ぎた。

 そんな事があるわけがない。確かに、あいつは二年前の夏、姿を消していたが、それも二か月後には、戻って来た。だから、関係があるわけがない。



「でもさ、本当だったら、とんでもない事になると思わない? 優勝も間違いなしだって! それに、話変わるけど、佳織ちゃんの方は、とある事情で能力が使えなくて、落ちこぼれているだけだし。解放してあげたら、きっとビックリするくらい強いはずだよ」



「だが、それも全てもしもの話だろう? とてもじゃないが、付き合いきれないぞ、さすがに」

 聞いていたこちらが馬鹿だった。今、話していた事が本当だとしても、私が無駄に苦労するだけだろう。司と柊は、そっとしておいた方が良い気もしてきた。特に、あいつ、涼風司は。



「悪いが、忙しいから、ここで、私は――」

 適当に理由を付けて、生徒会室を去ろうとした。

 


 だが、姉の力によって、それは叶わなかった。

「別にいいのよ? 力で従わせても、それも大好きだし」

 生徒会室の扉が一瞬に凍って、そして部屋の中も氷に包まれた。少し、頬を染めながら、私にライフルを向けながら、近寄ってくる。



「まったく、これだから私は、姉が嫌いなんだ。ここまで、やるぐらい大事か?」

「ええ、そうね。これは、私の楽しみだけでなく、人生が掛かっていると言ってもいいわね」

 高揚しつつも、トーンの下がった声で語りかけてくる、姉は本当に苦手だ。

 何もかも見透かしたような目で私を見て、利用してくる。それでいて、私よりもスタイルが良くて、そして、私よりも一回り、いや二回りも胸が大きい。本当に厄介な姉だ。



 今、姉の抵抗しても、人間である私に勝機はない。命を懸けて、頬に傷一つ与えられるぐらいか。圧倒的差が、そこにあった。どうして、姉妹であっても神人と人間で扱いが、違うのだろうか。

 全く、昔の神人が人間に無理やり異能の力を与えるから、こんな変な事が起こる。



「はぁ……分かったよ、やればいいんだろう」

 ため息交じりに、姉の要望に応じる。

 すると、周りにあった、氷が一瞬のうちにして消え去った。もちろん、生徒会室の扉も元通りだ。



「物わかりの良い妹を持てて、姉ちゃん、幸せよ?」

「どの口が言う、仕事は引き受ける。もう、行っていいよな?」

 くそっ、ストレスがこれでまた増えるじゃないか。

 帰ったら、銃の研究に没頭しようと思っていたのには、これでは無理そうだ。

 


「うん、いいわよ。お疲れ様、いや、ここはよろしくね~かしらね?」

「そんなのどっちでも、いいだろう。それじゃあ、失礼するぞ」

 最後に姉を軽く睨み付け、私は生徒会室を後にした。

 








 




 

 

 



 

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