第5話:決断のとき
ここ最近、心ちゃんの帰りが遅くなった。1時間とか2時間じゃなくて、ほんの10分程度。だからあたしは何も聞けない。ちょっと仕事が忙しかったのかな、とか自分に言い聞かせるしかないんだ。
でも、きっとそろそろごまかしがきかなくなる頃。だって、あんまりキスしてくれなくなったもん。多分それはあたしに対する愛情がなくなったからじゃない。後ろめたいと思う気持ちが愛情に勝っちゃったから。きっと愛情は0%になったわけじゃなくて、ただあたしに対する愛情より、すずに対する愛情の方が上になったんだろう。
心ちゃんから別れを告げられたら、あたしはどうするかな。きっとその時にならないとわからない。今は考えただけで息苦しくなるけど、心ちゃんの口から別れの言葉を聞いたら頭が真っ白になると思うから。
あたしは今までに撮ったプリクラを眺めた。馬鹿みたいにふざけてる2人がそこにいる。今はこんな風に笑えないね。お互い心に迷いがあるから。
涙は自然と出た。プリクラ1枚1枚にちゃんと思い出があって…3年前のプリクラだって見るだけで会話が思い出せちゃう。記念日は必ず休みを取って出かけたね。その日は毎回夜景を見に行った。来年も再来年もずっとずっと一緒に過ごすはずだったのに…。心ちゃんの嘘つき…。
はっと気付いて時計に目をやると、もう夜の11時を回っていた。今日はいつもより30分も遅い。覚悟を決めろってこと?今日言うつもりでいるの?やだよ、あたしまだ心の準備が出来てない。
きっとそんなのいつになっても出来ないだろうけど…。
ガチャ、とドアの開く音が聞こえた。
決断のときが来たんだ。