表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/42

第23話:友達

夏の暑さも和らいだ9月末。

約1年ぶりに高校時代の友達と飲み会をすることになった。毎年このくらいの時期になるとメールが回ってくる。仲良しだった同じ部活の友達。中には結婚した人もいるし、未だに恋をしたことのない人もいる。そんなみんなと人生について語るのは、すごく楽しい。まぁ、そんな語れるほど年はとってないけど。

でも、今日は別れたことを報告するはめになるだろう。何せあたしは昔から嘘が下手だったから。

飲み会は地元でやることになった。卒業後地元に残った人が多いから、こればっかりは仕方ない。地元はあたしの大好きな場所だったけど、心ちゃんと別れてから、行きたくても行けない場所になっていた。あそこに行ったら、あたしはきっと無自覚に心ちゃんの姿を探すだろう。…2人並んで歩いてる姿はなるべく見たくないけど。

「かづみー!久しぶりぃ。」

「あー、ちかぁ。元気しった?」

学生時代、1番仲の良かったかづみが駅まで迎えに来てくれた。

「…かづみ痩せた?」

「わかる?ちょっとダイエットしてんの。」

かづみはニッコリ笑ってそう言ったけど、それが嘘だということにはすぐに気付いた。

もともと、ダイエットをするような子じゃなかったし、いつもの笑顔と違かったから。この歳になって、友達に相談するのが恥ずかしいのだろうか。それとも、無駄な心配はかけたくないと大人ぶってるのだろうか。どっちにしろ、あたしにはかづみの嘘が気に食わなかった。何があったのか、はっきりはわからないけど、おそらく彼氏がらみだと思う。

「…かづみ。あたし心ちゃんと別れたんだ。」

「えっ?」

かづみはびっくりした表情を見せたけど、すぐに笑顔を取り戻した。

「嘘でしょー?」

本当にあたしの告げた事実を、かづみは嘘だと思ってるんだろう。あたしたちをよく知っていたし、あたしが結婚すると言っていたのもわかってるから。

「嘘じゃないよ。」

少し困ったように言ったあたしに、かづみは表情を曇らせた。

「ほんとに…?」

「いろいろあったんだよ。」

「え、だって…考えらんないよ…」

かづみは泣きそうになりながら、震えた声でそう言った。きっとあたしの声のトーンで、心ちゃんから離れていったと察知したんだろう。

「…大丈夫?」

かづみの問い掛けにあたしは首を横に傾けた。大丈夫な気もするし、そうでない気もする。でも、別れた頃に比べればだいぶマシになったかな。

「…あたしもね、渉と別れたんだ。」

「…そっか。今日は語り合えそうだね!」

あたしはかづみと手を繋ぎ、腕をぶんぶん振って歩き始めた。まるで子供の頃に戻ったみたいにはしゃぐあたしに、かづみもつられて笑った。20を過ぎた大の大人が、手を繋いで歩くなんて少し恥ずかしいけど、これも友情ってことでありでしょ?

「…聞いてもいい?」

「いいよ。」

かづみが何を聞きたいのか、あたしにはわかっていた。でも、とても言いずらそうにしているので、あえてあたしはかづみの言葉を待つことにした。

「…まだ好き?」

「…今はね。」

「いつ別れたの?」

「2月。」

「そっかぁ。」

その後少し沈黙が流れて、かづみは立ち止まった。きょとんとした顔でかづみを見ると、かづみは大きく息を吸い込んだ。

「会いたい?」

今回の質問は超難問だった。余計な考えを省いて、素直な気持ちで答えるなら…会いたい。でも、会ってどうなる?心ちゃんはもう違う人生を歩んでる。その姿をまじまじと見たって悲しくなるだけ。何も話すことは無いし、普通に話せる自信も無い。会いに行ったら、忘れるのが遅くなるだけだ。

「…あたし、ちかの気持ちよくわかるよ。どっちを選んでも後悔すると思う。だから、1番正直な気持ちを選んでもいいんじゃないかな。」

どっちを選んでも後悔する…確かにその通りかもしれない。かづみは渉君に会ったのかな。でも、あたしには会って話しをするとか、そんなこと考えられない。心ちゃんがどれだけ悩んであたしと離れたかわかってるから、気安く会いに行ったり出来ない。心ちゃんが困るのが目に見えてわかる。でも…やっぱり…

「…遠くから見るだけでもいい。心ちゃんをもう一回だけ見たい。…ついて来てくれる?」

不安そうに問い掛けたあたしに、かづみは

「いいよ。」

と笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ