第22話:わかんの。
「で?」
「は?」
休憩に入るなり大樹に詰め寄って問い掛けたあたしに、大樹は当然迷惑そうにそう言った。
「『は?』じゃなくて。好きな人いないの?」
「何、突然。嫌な予感するんだけど。」
「何でよ!」
「協力する、とか言うんでしょ。」
大樹は煙草に火を付けて、眉間にシワを寄せた。何でこんなに迷惑そうな雰囲気を醸し出しているんだろうか…。
「いないの?」
「…いるよ。」
意味深な表情でそう言うと、大樹はあたしに煙りを吹き掛けた。
「ちょっと!」
あたしは手で仰いで煙りを大樹に返した。…今の表情はなんだろう。
「本当にあたし協力するよ?お世話になってる、お礼っていうか…。」
「いらねぇし。そんなこと言うなら、もっとしっかりしろよ。」
「うっ…。」
まぁ、確かにね…。あたしは何も言えなくなり、ただ俯いた。結局大樹には敵わない。
「ちかってほんと単純だな。みんなが付き合ったから、俺もって思ったんだろ?」
あたしは一つ頷いた。
「安心しろよ。とうぶん、付き合うつもりないから。」
「…何で?」
「誰でもいいわけじゃないし。」
「好きな人いるんでしょ?」
ちらっと目をやると、大樹は困ったような顔をして窓の外を見ていた。
「それが脈無しだから。」
「そんなのわかんないじゃん。」
「わかんの。」
呆れたようにため息を着いた大樹に、あたしは少しむっとした。あたしは行動する前から諦める人間が嫌いだから。
「何で?」
「好きだから。」
そう力強く言った大樹の言葉にあたしは息を飲んだ。本当に好きなんだと、その言葉で伝わって来たから。あたしも心ちゃんを本当に愛してたから、心ちゃんの気持ちがわかった。大樹もそんな感じなのかな。
「別に俺、長期戦でいくつもりだし、気にすんなよ。」
煙草の火を消して、立ち上がる大樹が今までよりも男らしく見えた。
あたしもくよくよしてらんないなぁ。




