本音と建前
ストックはまだありますが、なくなったらこっちも追加しますね。
肩を落としてとぼとぼともとの位置に戻っていくバルトを見送る。
自然溢れたこの村において料理ができる者は貴重ゆえ、許して欲しい。次は【魔獣使い】か【採取】を与えるから。
「次はサイスだ。こっちに来てくれ」
サイスはビクッとして恐る恐る目の前に来た。さすがに人生を採取一筋で生きてきたサイスにとってはトラウマかもしれない。
「サイスは1.0を越えたスキルが二つあったが、【採取】と【観察】どちらがいいか?」
選択肢を出すと先程【料理】スキルを与えたバルトが親の仇でもみるかのようにサイスを睨み付けていた。
与えられることでも幸せなんじゃないのか、バルトよ。
「俺はこれまで採取をして生きてきた。そのためか冒険者ランクは最低のFランクから上がったことはなかった。だけど、これまで生きてこられたのは採取のおかげでもある。だから採取をください」
サイスは真摯に頭を下げた。
その心意気に心が踊った。スキル枠をあげる方法がわかれば一番にサイスに授けることにしよう。バルト?知らない子ですね。
「サイスには【採取】を授ける。受け取ってくれるか?」
「もちろんだ」
ウインドウに文字列が流れ、サイスにはもとの位置に戻ってもらった。
「次はアッシュだ」
それから順々にスキルを与えていった。アッシュには【斧術】、ライゼルには【嗅覚】、フリードには【女子力】を。この時間経過でアルベルトの【魔獣使い】が1.0に上がったので、アルベルトにも与えた。
フリードの【女子力】については私が相当渋ったが、フリードが今度夜這いをするという脅迫を受け、脅迫に屈して授けた。
なんだよ、女子力って。
「今回は残念ながら1.0までたどり着いていなかったが、次回見たときに授ける。力になれなくてすまないな、王鬼、ワークマン」
「気にしないでくれ、お頭。俺の努力が足りなかっただけだ」
確かに努力は大切だ。王鬼はバランスがいいから、時間が解決してくれるだろう。
「俺のことも気にしなくていいぞ、村長。今はまだ農業をしていない。きっと一番最初に生えてくるのは農業スキルだ。前もそうだった。だから、そのときは頼みますよ、村長」
なんも言えねぇ。取得可能スキルが四つまでだからどう頑張っても最初に【農業】スキルは生えてこない。頼まれても懇願されても、何をされても一番最初に【農業】スキルは生えてこられない。その事実だけは伝えておこう。
「ワークマン」
「なんですかい?」
「一番最初に【農業】スキルは無理だ。それだけは伝えておく」
「なんでですか!?」
ワークマンは驚きのあまり目をひんむいた。
「ワークマン最近農業した?してないよな?どう頑張っても最初に授けるのは【採掘】か【木こり】か【腕力】か【斧術】だ。諦めろ」
ワークマンは膝から崩れ落ちた。そんな彼を横目に王鬼に近づく。ワークマンにだけ手に入れられるスキルを教えるのは平等じゃない。
「王鬼」
「なんです?」
「王鬼は剣を磨け。そうすればスキルを授けよう」
「承知した!」
王鬼は嬉しそうに小屋の方へ走っていった。
全員にスキルを授けるあるいは磨くスキルを言い渡したので、スキル枠獲得のためにシステムウインドウをいじることにした。
このイベントが終わることを待っていたみんなには採取やらなんやら好きなことをするように指示を出した。
ゴブリン達は皆、剣をもって森の方へ走っていき、コボルト達は解体用のナイフを持って海に向かった。
それに続いてフリードとアルベルトが海に向かった。今日も漁をするのだろう。
ラビとサイスは採取に行き、バルトは食堂へ片付けにいった。食堂の方角からは相変わらず聖気が漂っている。まだコントロールできていないようだ。
落ち込んでいたワークマンはアッシュに連れられて木こりに向かった。最初に取るのは斧術に決まった瞬間だった。
あとスキルを取得していないのは自分だけだ。
小屋の近くに置かれた木材に座り、システムウインドウを開く。忠臣達のスキルも続々と増え、レベルも上がっていた。
もっとも上がっているのはセラフィムの【聖気】だ。もうすぐでレベル5になる。
「あの様子を見るとまだ制御できてないのか」
食堂から溢れる聖気は屋敷も覆い、屋敷が綺麗になっていく。村の屋敷だけあってボロボロなのだが、今はちょっと年期のはいった屋敷程度になっている。
「お、レベル5になるな」
《セラフィムの【聖気】がLv5になりました。》
《SPを1獲得しました。》
「Lv5でステータスポイントをまた1手に入るのか。このステータスポイントの使い道はなんだ?」
セラフィムのステータスには2SPあり、一つ減ったところで大丈夫だろう。新しく加わったスキルに【信仰】があった。しかもすごい勢いでレベルが上がっていってる。
誰を信仰しているのか知らないが、見なかったことにしよう。
SPをタッチすると獲得できるものが表示された。
1SP:能力値+1、スキル枠+1
2SP:無条件スキル1
5SP:1属性魔術
10SP:スキル合成、スキル進化
スキル枠は最初にあった一つのことだ。能力値は武力や技力、無条件スキルとは努力して剣を磨かなくともスキルを手に入れることのできるものか。
魔術はよくわからないが、いいものに違いない。10SPはそのままの意味なのだろう。今のところ使い道はないが。一先ず全員のスキル枠を1になるように調整する。
「あとは私のスキルだが…」
【話術Lv0.78】【観察Lv1.09】【目利きLv0.41】【歩行術Lv0.20】
「微妙だな…」
観察を取得し、スキル枠を獲得する。
「次は何が生えたかな?」
【話術Lv0.78】【指示Lv0.02】【目利きLv0.41】【歩行術Lv0.20】
「微妙だ…」
これからはもっと色々しようと誓った。