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挑戦者~成長を続ける者達よ  作者: 熊原 大智
新世界、第一の試練
6/11

5.鳥かごに捕らわれた青い鳥

今日は休み。

何も予定のない日――のはずだった。

本来なら、適当に起きて、適当にスマホをいじって、気づけば一日が終わるような、そんな“普通”を過ごすつもりでいた。

だが、その平穏は、スマホの通知ひとつであっさりと崩れ去る。

「……は?」

画面に表示されたメッセージを見た瞬間、思考が止まった。

『今日、集合な。忘れんなよ』

送信者――西恵。

数秒遅れて、記憶が浮かび上がる。

「……あ」

そうだ。

今日は――SNSで募集した覚醒者たちと顔合わせの日だった。

「終わった……」

ベッドに寝転んだまま、天井を見上げる。

現実逃避したい衝動を押し殺しながら、ゆっくりと体を起こした。

(いや……でも行かないと始まらないよな)

そう、自分に言い聞かせる。

仲間が必要だと判断したのは自分だ。

だったら、この場から逃げるわけにはいかない。

とりあえずベッドから降り、適当に朝食を用意する。

トーストをかじりながら、ぼんやりと考える。

(正直、行きたくねえ……)

相手はネットで集めた覚醒者。

信用も保証もない。

むしろ――まともじゃない可能性の方が高い。

「……やめとくか?」

一瞬、本気でそう思う。

だが、その考えはすぐに打ち消された。

「……いや、ダメだな」

一人では限界がある。

それはもう、嫌というほど分かっている。

ダンジョンでの戦闘、持久力の不足、判断の甘さ――どれも致命的になり得る要素だった。

だからこそ。

「……使えるなら、アリか」

多少危険でも、価値があるなら切り捨てる理由はない。

そこまで考えて、ふとスマホを置く。

そして――

「……よし、ゲームしよ」

現実逃避を選択した。

コントローラーを握り、電源を入れる。

今日くらいは平和に過ごしてもいいだろう。

そう思った、その瞬間だった。

ピンポーン。

「……は?」

インターホンの音に、嫌な予感が一気に現実へ引き戻される。

恐る恐るドアを開けると――

「よ、準備できた?」

そこには、西恵が立っていた。

「……なんでいるんだよ」

「迎えに来たに決まってんじゃん」

当然のように言い放つ。

その後ろには、原付が止められていた。

「……お前、それ」

「16の時に取った」

「いや、校則――」

「もう卒業したけど?」

「……あ」

言い返せなかった。

確かに、もう縛られる理由はない。

「ほら、乗りなよ」

「いや、ちょっと待て」

拒否権はなかった。

気づけばヘルメットを被せられ、後部座席に押し込まれていた。

走り出す。

風が強く当たる。

思っていた以上にスピードが出ている。

「おい、飛ばしすぎだろ!」

「大丈夫大丈夫」

全然大丈夫じゃない。

「落ちたら死ぬぞ!」

「その時はごめん」

「軽い!!」

そんなやり取りを交わしながら、俺たちは集合場所へ向かった。

到着したのは、小さな喫茶店だった。

外観は落ち着いていて、どこにでもあるような普通の店に見える。

だが――

「……ここに、あいつらがいるのか」

扉の前で足が止まる。

中にいるのは、

怪鳥(黒羽)

女帝(QUEEN)

私刑囚(プー太郎)

奇行子ヒカル

仲裁者(黒羽 人)

どう考えてもまともじゃない名前の連中だ。

「……帰っていい?」

「ダメに決まってんでしょ」

背中を押され、強制的に入店させられる。

カラン、とベルが鳴る。

店内を見渡す。

そして――思わず呟いた。

「……誰?」

そこにいたのは、想像していたような危険人物ではなかった。

普通の青年。

落ち着いた雰囲気の女性。

気だるそうな男。

無駄に元気そうな少年。

そして――一人だけ、明らかに空気を掌握している男。

「……え、マジで?」

拍子抜けする。

だが、その認識は次の瞬間に覆された。

「君が、“次代の挑戦者”かな?」

その一言で、場の空気が一変する。

軽い空気が消え、緊張が走る。

こいつらは――“本物”だ。

「とりあえず、自己紹介から始めようか」

落ち着いた声で口を開いたのは、黒羽正利だった。

その一言で場が締まる。

ただの進行ではない。

自然と主導権を握るタイプだ。

「私は黒羽正利。その……この気だるそうにしているのの兄だ」

視線の先には、椅子に深く座り込む男。

やる気があるのかないのか分からない表情。

「来る前は楽しみにしていたらしいが……今はこの通りだ」

「いや普通に楽しみっすよ?」

間髪入れずに返す。

軽い。

だが、軽さの裏に妙な余裕がある。

「ヒカルっす。大学三年。“奇行子”とか呼ばれてます」

(……絶対クセ強いな)

直感で理解する。

次に視線を移す。

「大四の、水無月詩乃です」

落ち着いた声。

整った姿勢。

自然と目を引く存在感。

「QUEEN、とか呼ばれてます」

柔らかく微笑む。

場の空気が少し和らぐ。

「中学三年です!」

勢いよく声が飛ぶ。

「水無月恒一です!プー太郎とか私刑囚って呼ばれてます!」

情報量が多い。

「詩乃お姉さんの甥です!」

(……あだ名、絶対何かやらかしてるだろ)

内心でそう思う。

そして最後。

黒瀬(くろせ)です。よろしくお願いします」

短い。

だが、一番印象に残る。

(この人、たぶん一番危険だな)

根拠はない。

だが、確信に近い直感があった。

視線が集まる。

俺の番だ。

「……こんにちは」

一度、息を整える。

「源藤仁です」

言葉を選びながら続ける。

「皆さんとパーティーを組んで、ダンジョンを攻略していきたいと思っています」

言い終えた直後。

「西恵です!よろしく!」

横から割り込まれる。

空気が少し緩む。

だが、すぐに本題へ戻る。

「それで、聞きたいんですけど」

正利を見る。

「“次代の挑戦者”って、どうやって知ったんですか?」

迷いなく答えが返ってくる。

「私たちの称号が、“次代の随伴者”だからです」

「……は?」

「効果の一つに、“次代の挑戦者の位置を把握する”とあります」

淡々とした説明。

だが、その内容は重い。

「さらに」

詩乃が続ける。

「一緒に行動すると、経験値補正が入るみたいなの」

「つまり」

ヒカルが肩をすくめる。

「俺らにとって君は当たりってことっす」

「……マジかよ」

想像以上に重要な立場だったらしい。

そのとき。

「ちなみに!」

恒一が割り込む。

「俺たち、もう一ヶ月くらい活動してます!」

「レベルも10くらい!」

「……一ヶ月で?」

「うん!頑張った!」

(……俺、もっと上がってるけど)

口には出さない。だが、差は理解できた。

「あとさ」

恵が口を挟む。

「覚醒者なら“挑戦者”のこと、だいたい知ってるよ」

「……そうなのか」

 聞くと、いつの間にかに知っているそうだ。

ダンジョンのこと、試練のこと、挑戦者のこと、をいつの間にかに。

「でね」

恵は笑う。

「もう決まってるっぽいよ」

「……何が?」

「私たちがパーティー組むの」

「……は?」

周囲を見る。

誰も否定しない。

むしろ当然の空気。

その瞬間、理解した。

「……運命、ってやつか」

冗談半分に呟く。

だが、不思議と違和感はなかった。

ゲームで何度も組んできたような感覚。

最初から決まっていたような自然さ。

一人ずつ見渡す。

クセは強い。

信用もまだできない。

それでも――

「……分かりました」

息を吐く。

「じゃあ」

少しだけ笑う。

「これからの試練の乗り越え方と、パーティーについて話していきましょう」




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・覚醒者_覚醒した者、

・探索者_ダンジョンを攻略する者、

・挑戦者_試練を乗り越える者、



小説家になろうの読者の評価ほど信頼できる評価は無いと思っています!評価とコメント、お願いします!

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