30.NDGU入学式
入学式当日。
久しぶりに、晴れた。
目の前に広がるのは――
スーツ姿の大学生……ではない。
白衣や軍服、ジャージなどを着ている者、
刀やサーベルを帯刀している者。
明らかに、歪だ。
「……大学、だよなこれ」
思わず、呟いた。
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朝。
少し早く目が覚めた。
リビングに出ると、両親がいた。
「早いな」
父さんが、新聞から目を上げる。
「入学式くらいはさすがに」
そう返すと、母さんが小さく笑った。
いつもと変わらない朝。
だが――
どこか、少しだけ違う。
朝食を済ませ、支度をしていると。
「仁」
呼ばれた。
振り返ると、父さんが何かを持っている。
「これ、持っていけ」
渡されたのは――
サーベル式の軍刀だった。
「……これ」
「お前の祖父の物だ」
静かな声。
祖父は、日本刀を二振り。
そして――
戦地で使っていた軍刀を遺品として遺した。
「俺が持ってても仕方ない」
「お前の方が、使うだろ」
否定は、できなかった。
昨日。
試練のこと。
今、何をしているのか。
全部、話した。
「護身用、なんて言葉で済むかは分からんがな」
苦く笑う
何かあった時に困る、と言ったら
「もう一組、日本刀もあるしね~」
母さんが、軽く言う。
「……ありますね」
「それに」
少しだけ、得意げに。
「柔道と棒術くらいはできるわよ?」
「初耳なんですけど」
「言ってなかったかしら」
さらっと、とんでもないことを言う。
話を聞くと。
二人は、お見合いで結婚したらしい。
親同士が、軍で上司と部下の関係だったとか。
――知らないことばかりだ。
母方の祖父には、会ったことがない。
そもそも、家族の話自体が少ない。
(……まあ、いいか)
今は、それどころじゃない。
「行ってきます」
そう言って、家を出た。
エンジンをかける。
向かう先は――
国立対ダンジョン総合大学だ。
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大学に着くと、ヒカルが待っていた。
「遅くないか?」
「まだ時間前だろ」
軽く返す。
ヒカルは高校を中退した。
ダンジョンに専念するためだ。
正利さんも説得したらしいが――無駄だったらしい。
「で、結局何の仕事に着くんだよ、ダンジョン攻略だけじゃ正利さんが許さないだろ」
「NDGUでヒーラーの指導だとよ」
肩をすくめる。
こいつが指導できるのかと思うが、それは口に出さない。俺も指導なんてやったことが無いからだ。
高校で友達に宿題を教えていたのとは訳が違う。
地下にある競技場へ向かう。
中に入った瞬間、空気が変わった。
人が多い。
だが――
普通じゃない。
スーツ姿は少数。
白衣やジャケット、制服に軍服などなど
「……ジャケットで来て正解だったな」
「俺なんかTシャツなんだけどな...」
「せめて攻略の時に着ていた服とかにしとけよ」
警備員に案内され、職員席へ。
そこもまた、異様だった。
空席が目立つ中。
白衣の老人。
袴姿の男。
軍服の将校。
統一感が、まるでない。
(……濃いな)
ちなみにヒカルは、完全に私服だ。
浮いているようで、逆に馴染んでいる。
天井を見て、現実逃避をしていると――
壇上に、人影。
学長が登壇した。
「はじめまして皆さん」
落ち着いた声が、響く。
「学長の直井哲哉です」
場が静まる。
「皆さんはここで、ダンジョンについて学びます」
「研究し、理解し、それを生かす」
「――人を守るために」
空気が、わずかに引き締まる。
「ダンジョンを正しく知る者は、まだ少ない」
「だからこそ、多くの人が命を落としてきた」
淡々としている。
だが、重い。
「諸君には、それを変える側に立ってもらう」
「試練を越え、人を救うことを期待している」
端のほうで、誰かが小さく手を打った。
静寂は崩れ、
次の瞬間には、会場全体が拍手に包まれた。
拍手が収まるのを待ち、司会が進行を引き継ぐ。
「続いて、現在この場にいらっしゃる教員の紹介に移ります」
名前が、順に呼ばれていく。
戦術装備開発学部。
学部長――天城健二。
対ダンジョン戦術学部。
学部長――佐々木恒一。
特殊戦闘学部。
特別講師――源藤仁。
ざわめきが、広がる。
「……あれが」
「マジかよ……」
視線が、一斉に集まる。
(まあ、そうなるか)
ヒカルが小さく笑う。
「有名人は大変だな」
「他人事じゃねーだろ」
軽く返す。
統合指揮学部。
学部長――鷹宮恒一朗。
「以上が、本日出席されている講師陣です」
淡々と、進む。
「これにて、入学式を閉式といたします」
あっさりと、終わった。
「……雑だな」
「こんなもんだろ」
「では、各学部ごとに案内を行います」
「指定された会議室へ移動してください」
人が動き出す。
特殊戦闘学部はすぐ上か、
「じゃあまた後でな」
「俺は医療学部の前線治療学科だから別の建物か…」
そう言い、二手に別れた。
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