28.第二回 主要国ダンジョン対策会議
当日。
空は、やけに澄んでいた。
――嵐の前とは、こういうものか。
「随分と静かですね」
車窓の外を眺めながら、そう呟く。
「嵐の前は、いつもこんなもんだ」
正利さんが、短く答えた。
都内某所。
表向きは国際会議場。
だが、その実態は――完全封鎖区域だ。
周囲には警察。
さらに内周には自衛隊。
その内側。
探索者。
三重の警備。
「いくら何でも過剰じゃね?」
ヒカルが聞く
「むしろ足りん」
即答だった。
「今日は“世界の重要人物”が集まる」
「それに加えて、仁みたいな指1本で国を滅ぼせるのもな」
「そんなことしませんよ...」
……まあ、そうだろうな。
そう考えると妥当なのかも知れない。
車が止まる。
扉が開くと同時に、空気が変わった。
重い。
視線が、刺さる。
「行くぞ」
中へ。
長い通路。
すれ違う人間の“質”が違う。
スーツ姿の官僚。
軍人。
そして――探索者。
明らかに、空気が違う。
「……濃いな」
「世界の上澄みだ」
正利さんが笑う。
「嫌でもそうなる」
やがて、扉の前に到着する。
警備が二重。
さらにその奥――
「確認します」
身分証。
魔力認証。
そして、金属探知機。
「失礼しました。仁代表、問題ありません」
こちらを、と言ってイヤホンを渡してくれた。
扉が開く。
―MDC8。
その会場だった。
各国の代表。
見覚えのある顔もある。
モニター越しで見たことのある人物。
そして――
「……あれが」
視線の先。
各国の主要覚醒者。
座っているだけで分かる。
――強い。が、
「どうせ、Aランク程度だ。」
正利さんが小さく言う。
議長の後ろの席に着く。
わずかな沈黙。
やがて、
「それでは――」
進行役の声。
「MDC8を開始します」
空気が、一段階締まる。
「まずは、ダンジョンブレイクの報告から」
スクリーン、タブレットに映像が出る。
永田町。
そして、各地。
「今回の件により、既存の管理体制の限界が露呈しました」
誰も反論しない。
事実だからだ。
「よって、今後は――」
「探索者主体への移行」
「国家は補助、及び緊急対応へ」
すでに国内で決まった流れ。
それが、世界へ拡張される。
「異論は?」
無さそうだ。
……いや。
「一つ」
声が上がった。
低い。
確か、アメリカ国防長官だったはずだ。
「探索者の制御についてはどうする」
場が、わずかに揺れる。
「現状、統制は不可能に近い」
「力を持ちすぎている」
正論だ。まさにアウルム帝国が良い例だ。
正利さんが立ち上がった。
「その点については」
正利が口を開いた。
静かに。
だが、確実に場を取る声で。
「“枠組み”を用意します」
視線が集まる。
「各国に、ダンジョン対策課に準ずる機関を設置」
「探索者を“組織”に組み込む」
「……なるほど」
小声だが、声が聞こえた。
異質な男が、わずかに笑った。
「完全な支配ではなく、誘導か」
「現実的だな」
場の空気が、少しだけ緩む。
だが、まだ終わらない。
「次に、資源管理」
オークションの話へ移る。
各国の反応は様々だが、
「……受け入れざるを得ないな」
結論は、ほぼ決まっていた。
その後も、同一法の話や、国連加盟国の話、他にもアウルム帝国への対応などが話され、本会議は終了した。
ここからが修羅場だ。各々がそれぞれの会議室に赴く、自分と正利さんが行くのは第二会議室。研究者や、官僚と思われる人が続々と流れ込んでいる。その中には健二さんもいた。
「……そちらも忙しそうですね」
「現場ほどではありません」
短い返答。
だが、その声には疲労が混じっていた。
「今回の件で、研究側も動かされています」
「想定より、ずっと早く」
苦笑しながら席に着く。
「では、会議を開始します」
進行役の声。
「主に、制度・研究・情報共有についての最終調整となります」
資料が一斉に表示される。
さっきより細かい。
いや――現実的だ。
「まず、オークション制度について」
話が始まる。
売り手、買い手、手数料。
国家間の取り分。
細かい条件のすり合わせ。
「……利権の匂いがすごいな」
思わず呟く。
「そりゃそうだ」
健二さんが肩をすくめる。
「ダンジョンは“資源”だ」
「取り合いになるに決まってる」
議論は進む。
だが――
「次に」
進行役が、少し声を落とした。
空気が変わる。
「探索者の分類について」
スクリーンが切り替わる。
――来たな。
まず表示されたのは、現在の分類表、継承機関で使われている、F~Sランクの分類と、各ランクが対処にあたるダンジョンの等級。
次が問題だった。
【S級探索者(継承機関所属)】
一覧。
その、一番上。
――俺の名前。
「……は?」
思わず声が漏れる。
その下には
正利さんや恵、各国の覚醒者などが連なる
それ以外にも見覚えのある名前が並ぶ。
「当然だろ」
正利さんが、あっさり言った。
「今回の件で確定したようなもんだ」
「いや、そんな急に――」
「世界は急だ」
「それに仁は選ばれた者の中でも特殊な立ち位置、こんなこと第1波の覚醒者なら誰でも知ってる。」
……否定できない。
「ん?」
後ろから、声がした。
「……俺、載ってなくね?」
ヒカルだ。
「載ってないな」
「なんでだよ」
「ヒーラーだから別枠だろ」
「は?」
「これ戦闘評価じゃなくて、火力評価見たいなもん、火力だけだとお前Aランクだろ」
「……あー」
「それに、回復役は戦略資産だから本当は前に出せないんだよ」
一瞬で納得した顔。
「それ、責任重くない?」
「軽いわけないだろ」
正利さんが淡々と言う。
「お前が居なくなったら仁が掃討戦に参加できん。」
「ヒカル並みだから前に出せてるしね。」
ヒカルは少し考えて――
「……まあ、そうか」
納得したらしい。
「続いて」
声が、少し低くなる。
スクリーンが切り替わる。
赤色。
【特別監視対象】
空気が、変わった。
並ぶ名前。
アウルム帝国。その主要メンバー。
“皇帝”
そして幹部。
「……全部載せるのか」
誰かが呟く。
「当然だ」
他にも
アメリカの連続殺人事件の容疑者や、イギリスで探索者能力を使用し、未来予測をするなど、。
現在、行方不明の者も載っていた。
「最悪だな……」
さらに。
暴走個体、スキルにより理性を失った者や、 失踪者。 裏社会に潜った探索者。などなど、
――管理不能。
そんな連中の名前が並ぶ。
「これらは全て」
進行役の声。
「特別監視対象」
「発見次第、情報共有」
「必要に応じて――排除となります」
静まり返る。
「でさ」
ヒカルが、小声で言う。
「これってもう、国が探索者を管理しきれてないってことだよな。」
シンプルに言えばその通りだ、日本では継承機関が、アメリカや、他の国々では軍の覚醒者部隊がいるからバランスを取っているが、Sランクとなると、軍と同じだ。
「仁はともかく、黒瀬や俺、プーはもはや国と一緒だよ」
正利さんが恐ろしいことを言う
ただ、事実だ。
「弾丸も身体強化さえしてれば通さないし、ヒーラー要らずだろ」
ヒカルが愚痴る。
もうこの世界は変わってしまった。
国は、
いや、世界は人をどう管理するのだろうか。
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