プロローグ_始まり、
小説を書いてみたいとふと思ったのは数年前、もし、小説を書くなら今が最後のチャンスだろうと思い書いてみました。
高三の冬――それは、本来なら「終わり」の季節だった。
だが、その日。世界は終わらなかった。
——壊れた。
空が割れた。
黒い亀裂の奥から、“何か”がこちらを見ている。
瞬き一つしない、巨大な“目”。
「――選別を開始する」
頭の奥に、直接声が響いた。
【ステータスを解放しました】
周囲から悲鳴が上がる。
だが、その中に――空を見上げていない人間が混じっていた。
(……見えてない?)
違和感が、確信に変わる。
——“選ばれている”。
その日、世界は確かに変わった。
----------------------------------------------------------------
受験を終え、進路も決まり、残るは卒業式だけ。
長かった学生生活に一区切りがつき、誰もがほんの少しだけ気を抜く、そんな穏やかな時間のはずだった。
俺――源藤仁も、その一人だった。
大学はすでに決まっている。
努力の結果とも言えるし、運が良かっただけとも思う。
将来への不安は薄く、どこか現実感のないまま日々を過ごしていた。
ただ一つ、胸の奥に引っかかるものがある。
「……これで、しばらく会えなくなるな」
隣を歩く幼なじみに、何気なくそう呟いた。
西恵。
腐れ縁で、気を遣わずにいられる数少ない相手。
気づけば、ずっと隣にいた存在だ。
「別に、会えなくなるわけじゃないでしょ。今どきスマホもあるんだし」
恵は前を向いたまま、あっさりと言い切る。
「まあ、そうだけどさ……」
分かっている。
連絡を取ろうと思えば、いくらでも取れる時代だ。
それでも――“今まで通り”ではなくなる。
その事実が、妙に引っかかっていた。
しばらく無言で歩く。
冬の空気は冷たく乾いていて、吐く息が白く広がる。
見慣れた帰り道も、どこか遠く感じた。
やがて、いつもの分かれ道に差しかかる。
「じゃ、またね」
「おう」
恵は軽く手を振り、別の道へと消えていく。
その背中を、なぜか少し長く見送ってしまった。
(……終わるんだな)
学生生活も、この関係も、全部が一度区切られる。
そう思っていた。
――その時までは。
家の前に着いたとき、不意に違和感が走る。
視線。
誰かに見られているような感覚が、背中に張り付いていた。
振り返る。
誰もいない。
いつも通りの住宅街。夕方の静かな風景。
「気のせい、か……?」
だが、ざわつきは消えない。
もう一度、振り返る。
やはり、何もない。
その瞬間――
ズンッ、と。足元が、揺れた。
「……は?」
地震じゃない。
揺れ方がおかしい。
地面だけじゃない。空気ごと歪んでいる。
パキン、と。乾いた音が響く。
反射的に、空を見上げた。
――割れている。
ガラスのように砕け、黒い亀裂が空一面に走っていた。
その奥には、底の見えない闇。
そして。
そこから“何か”が、こちらを覗いている。
巨大な目。
瞬き一つしない、無機質な存在。
「……なんだよ、これ」
現実感が追いつかない。
遅れて、恐怖が押し寄せてくる。
周囲では悲鳴が上がっていた。
スマホを向ける者、立ち尽くす者。
だが――
空を見ていない人間がいる。
異常に気づいていない者と、固まっている者。
(……見えてる奴と、見えてない奴がいる?)
理解が追いつかないまま――
「――選別を開始する」
頭の中に、再び声が響く。
「試練を与える。成長し、生き延びよ」
視界の端に、文字が浮かぶ。
【ステータスを解放しました】
【称号:次代の挑戦者】
意味は分からない。
だが――体の奥で何かが“動き出した”。
その感覚だけは、はっきりしていた。
視線を落とす。
庭の奥。
そこに、黒い穴が開いていた。
見覚えのない、明らかに異質な存在。
「……ダンジョン?」
自然と、その言葉が浮かぶ。
(……逃げるか?)
一瞬だけ考える。
だが、すぐに消えた。
あの空。あの声。あの視線。
ここで何もせずに終わるとは思えない。
むしろ――何も知らないままの方が危険だ。
「……なら」
知らないまま終わるくらいなら、自分で確かめる。
「行くしかねえだろ」
家に入り、押し入れから日本刀を取り出す。
祖父、久和の形見。
鞘からわずかに抜く。
刃が光を反射する。
問題ない。
外へ出る。
黒い穴が、そこにある。
本能が、拒絶している。
それでも。
一歩、踏み込んだ。
視界が、闇に飲まれる。
----------------------------------------------------------------
光が消えた。
音も、温度も、すべてが途切れる。
完全な暗闇。
「……見えねえな」
スマホを取り出し、ライトを点ける。
白い光が、狭い通路を照らし出した。
湿った石壁。
どこか遠くで滴る水音。
現実とは思えない空間。
一歩、踏み出す。
足音だけが響く。
進むほどに、背中にまとわりつくような違和感が強くなる。
やがて、突き当たりに出た。
「……扉?」
異様なほど整った扉。
この空間には似つかわしくない。
だが、不思議と迷いはなかった。
手をかける。
軽い。
抵抗もなく、扉は開いた。
ギィ、と軋む音がやけに耳に残る。
その先にあったのは――
黒い“渦”。
煙のようで、水のようで。
だが、そのどれでもない。
見ているだけで、吐き気がする。
本能が警告する。
近づくな。触れるな。
それでも。
踏み込む。
刀を振り下ろす。
ズブッ、と。
刃が沈む。
柔らかい。
だが、確かな抵抗。
(……違う)
その瞬間。
衝撃。
「っ……!」
視界がぶれる。
気づいた時には、壁に叩きつけられていた。
息が、抜ける。
肺が焼けるように痛い。
(今の……)
普通なら、終わっている。
それでも。
立ち上がる。
刀を握り直す。
痛みを押し殺す。
「……そういうことか」
手応えの違和感。
反撃のタイミング。
繋がる。
見えてきた。
「なら――いける」
踏み込む。
今度は、迷わない。
斬る。
黒い粒子が弾ける。
もう一撃。
渦が歪む。
さらに叩き込む。
形が崩れる。
そして――
弾けた。
黒い粒子となって、空間に散る。
音もなく、消えていく。
静寂。
荒い呼吸だけが残る。
「……戻れねえな」
その時。
――いた。
気づいた時には、すぐそこに立っていた。
黒いフードの人影。
「私は、先代の挑戦者」
空気が凍りつく。
理解不能な存在。
だが、その言葉だけは妙に現実味を帯びていた。
「次代の挑戦者に、ほんの少しのプレゼントを」
「……ふざけんな」
踏み込む。
刀を振る。
だが、届かない。
触れる直前、その体は霧のように崩れた。
「――どうか君にとっての正しい選択を」
最後の言葉だけが残る。
そして。
頭の奥に――
四つの“試練”という言葉だけが、焼き付くように残った。
辛口コメントOK、小説家になろうの読者ほど信頼できる評価は無いと思っています!プライベートもあり、更新が週一くらいから週三までぶれると思いますがよろしくお願いします(笑)




