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挑戦者~成長を続ける者達よ  作者: 熊原 大智
全ての始まり?
1/10

プロローグ_始まり、

小説を書いてみたいとふと思ったのは数年前、もし、小説を書くなら今が最後のチャンスだろうと思い書いてみました。


 高三の冬。


それは、本来なら“終わり”の季節だった。


受験を終え、進路も決まり、残るは卒業式だけ。

人生の一区切りとして、誰もが少しだけ気を抜く時期。


俺――源藤仁も、その一人だった。


大学はすでに決まっている。

努力の結果というよりは、運が良かっただけかもしれないが、それでも将来への不安は少なかった。


ただ一つ、引っかかっていたのは――


「……これで、しばらく会えなくなるな」


隣を歩く女友達に、そう呟いた。


西恵。


幼なじみで、腐れ縁で、そして――多分、俺が一番自然体でいられる相手。


だが、進学先は別々だ。

これまでのように、毎日顔を合わせることはなくなる。


「別に、会えなくなるわけじゃないでしょ」


恵は前を向いたまま、そっけなく言う。


「今どき、スマホあるんだし」


「まあ、そうだけどさ」


分かっている。

分かっているが――それでも“今まで通り”ではなくなる。


それが、妙に現実味を帯びてきていた。


しばらく無言で歩く。


冬の空気は冷たく、どこか乾いていた。


吐いた息が白く広がる。


いつもと変わらない帰り道。

いつもと変わらない会話。


 そのまま、いつもの分かれ道に差しかかる。


「じゃ、またね」


「おう」


 恵は手を振って、別の道へ消えていく。


 その背中を、少しだけ長く見ていた。


(……終わったな)


 そう思った。


 色んな意味で。


 恋も、学生生活も。


 全部が、ここで一区切り。


 そう思っていた――はずだった。




----------------------------------------------------------------




 家の前に着いたとき。


 ふと、違和感を覚えた。


「……なんだ?」


 背中に、視線を感じる。


 振り返る。


 誰もいない。


 ただの住宅街。いつもと変わらない景色。


「気のせい、か……?」


背中が、妙にざわつく。


視線。

気配。

何かが“いる”ような感覚。


振り返る。


だが、そこには何もない。


住宅街。

静かな夕方。

通り過ぎる人影。


どれも、異常はない。


「気のせいじゃない?」


恵は軽く言った。


「最近ぼーっとしてるし」


「……かもな」


自分でもそう思う。


受験が終わって、気が抜けているのかもしれない。


そう納得しかけた――その時。


ズンッ――


足元が、揺れた。


「……は?」


最初は、ただの地震だと思った。


だが――違う。


揺れが、止まらない。


いや、“揺れ方”がおかしい。


地面だけじゃない。


空気そのものが、歪んでいる。


そして。


パキン、と。


何かが割れる音がした。


反射的に空を見上げる。


――そこにあったのは。


「……なんだよ、これ」


空が、割れていた。


ガラスのように。


黒い亀裂が、空一面に走っている。


その向こう側は――暗い。


深淵のような闇。


そして。


その奥から、“何か”がこちらを覗いていた。


巨大な“目”。


瞬き一つしない、無機質な存在。


人間のそれとは、明らかに違う。


「……はは」


思わず、笑いが漏れた。


現実感がない。


あまりにも非現実的すぎて、逆に恐怖が追いつかない。


周囲もざわついている。


叫び声。

スマホを向ける人。

その場に立ち尽くす人。


だが――


どこか、ズレている。


「……見えてないのか?」


よく見ると、空を見ていない人間もいる。


異常に気づいていない。


逆に、俺と同じように空を見上げて固まっている奴もいる。


(なんだよ……これ)


理解が追いつかない。


その時だった。


「――選別を開始する」


頭の中に、直接声が響いた。


冷たい。


感情が、一切ない。


まるで機械のような声。


「試練を与える。生き延びよ」


「……っ!?」


反射的に周囲を見る。


だが、誰も反応していない。


(俺だけ、聞こえてるのか……?)


次の瞬間。


視界の端に、文字が浮かんだ。


【ステータスを解放しました】


「……は?」


思わず声が漏れる。


ゲームのような表示。


ありえない。


現実じゃない。


だが、消えない。


さらに――


【称号:「次代の挑戦者、才覚を秘めし者」】


「……なんだよ、それ」


無意識に、その表示に触れる。


瞬間。


頭の中に、ノイズが走った。


■■■̷̡̾■■■■̷̩̓■■


「っ……!」


激痛ではない。


だが、不快な情報が流れ込んでくる。ダンジョン、試練、終焉、訳がわからない。


文字が壊れている。


読み取れない。


バグのように、意味が崩れている。


「なんだよ……これ……」


理解できないまま。


再び、世界が揺れた。


そして――


気づいた。


家の前。


見慣れたはずの庭。


その“奥”に。


「……なんで、こんなのがあるんだよ」


ぽっかりと、穴が空いていた。


黒い。


深い。


光を吸い込むような闇。


明らかに、今まで存在していなかったもの。


「……ダンジョン?」


なぜか、そう思った。


根拠はない。


だが――


“そういうものだ”と理解してしまった。


頭の奥に、情報が流れ込んでくる。


試練。


覚醒者。


選別。


(……ふざけんなよ)


誰が決めた。


何のために。


そんな疑問が浮かぶ。


だが。


同時に――


理解してしまう。


「……行くしかねえか」


逃げる、という選択肢が。


最初から存在しないことを。


家に入る。


親の姿はない。


まるで、世界から切り離されたような感覚。


無言で、物置を開ける。


取り出したのは――


じいちゃんの遺品。


古びた、日本刀。


鞘から抜く。


鈍い光が、刃に宿る。


「……なんで、これなんだろうな」


銃でもない。


ナイフでもない。


なのに――


これが、一番しっくりきた。


深く息を吸う。


震えは、ない。


恐怖がないわけじゃない。


だが、それ以上に――


「……やるしかねえ」


覚悟があった。


庭に戻る。


黒い穴の前に立つ。


底は見えない。


何があるかも分からない。


それでも。


一歩、踏み出す。


視界が、闇に飲まれた。


完全な暗闇。


音も、光もない。


「……見えねえな」


スマホを取り出し、ライトをつける。


白い光が、狭い通路を照らす。


湿った空気。


滴る水音。


現実とは思えない空間。


一歩ずつ進む。


足音だけが、やけに響く。


そして――


突き当たりに、それはあった。


「……扉?」


異様に整った扉。


この場所に、あまりにも似つかわしくない。


だが。


「……開けろってことだよな」


迷いはなかった。


手をかける。


その瞬間――


わずかに、空気が震えた。


扉は、驚くほど軽かった。


ギィ、と音を立てて開く。


その先にあったのは――


空間の歪み。


部屋ではない。


現実でもない。


中央に浮かぶ、黒い“渦”。


煙のようで、水のようで。


だが、そのどれでもない。


「……気持ち悪ぃな」


本能が、拒絶する。


近づくな、と。


触れるな、と。


だが――


「……関係ねえ」


一歩、踏み込む。


刀を握る。


そして。


振り下ろした。


ズブッ、と。


嫌な感触。


柔らかいのに、抵抗がある。


その瞬間。


「――■■■■■■」


頭の中で、悲鳴が響いた。


渦が歪む。


揺れる。


崩れる。


「おおおおッ!!」


止まらない。


考えない。


ただ、叩き込む。


一撃。


二撃。


三撃。


そして――


弾けた。


黒い粒子となって、空間に散る。


静寂。


荒い呼吸だけが残る。


「……は?」


何を斬ったのか。


何が起きたのか。


何も分からない。


だが――


確実に、一つだけ分かることがある。


「……戻れねえな」


もう、日常には戻れない。


その時。


背後に、気配が生まれた。


振り向く。


そこに立っていたのは――


黒いフードの“人影”。


「私は、先代の挑戦者」


空気が凍る。


理解不能な存在。


だが、その言葉だけは、はっきりと意味を持っていた。


「次代の挑戦者に、ほんの少しのプレゼントを」


淡々とした声。


感情はない。


ただ、事実だけを告げる存在。


「……ふざけんな」


刀を構える。


踏み込む。


「お前、何者だッ!!」


斬りかかる。


だが――


届かない。


触れる前に、その体は霧に溶けた。


残ったのは。


最後の言葉。


「――どうか君にとっての正しい選択を」


そして。


静寂だけが、そこに残った。

 

辛口コメントOK、小説家になろうの読者ほど信頼できる評価は無いと思っています!プライベートもあり、更新が週一くらいから週三までぶれると思いますがよろしくお願いします(笑)

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