表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

第九話 裏

いきなり、大規模修正するとは思わんかったわ……

※なろう運営からの警告によって一部分黒塗り措置を施しています。

「知ってるか? 誰にでも最適な物件を紹介してくれる不動産屋があるってよ」


「へぇ、面白い。何処にあるんだ?」


 ここ最近、魔物の間で広がる噂だ。


 国を強大に栄させたアーエール王は、国民から絶大な支持を得ていた。しかしこの国には裏があった。アーエール王は気に入らない人間がいれば、王国に飼い慣らせた魔物を使って襲撃させ、不慮の事故として処理してきたのだ。

 ゼティアは王直系の娘ゆえ、国王の裏の力も自由に使うことができた。そして王国付きの魔物に、屋敷へ呼び込ませるよう噂を流布させていたのだ。前回に引き続き、今回のターゲットもゴブリンになりそうだ。

 ゼティアは情報を受け取ると、当該ゴブリンの身辺を調査させ、財産の差し押さえをフォルグに命じた。

 後は、ターゲットのゴブリンが屋敷に来るのを待つのみだ。


「こんな場所に、不動産屋があるとはナァ」


 ちょうど手狭になった巣を、大きくしたいと思っていたその矢先、ゴブリンは不動産屋の噂を聞いたのだ。

 ギギギ……と、扉を開く音。


「あら、いらっしゃい。待ってたわ」


 部屋の奥から現れたのは、令嬢ゼティア。


「ハハハ! マジか。ここの店主は人間の女か。こりゃ傑作なんだナァ」


「なにかおかしい事でも?」


「いや、てっきり魔物が出てくるのかと思ってナァ。しかもお前、ゴブリンの言葉が理解できるのナァ」


「そんな事を言いに此処にいらっしゃったの? 違うでしょう?」


「そうだったナァ。俺は巣を構え、子を作りたい。良い物件を紹介して欲しいんだナァ」


「ご予算は?」


「はぁ? 予算? 人間に払うもんは何も無ぇナァ!」


 ――これだからゴブリンは嫌いだ。

 ゼティアは思った。このくだり、何回やるのか? 毎回違うゴブリンのはずなのに大凡おおよその展開は毎回同じだ。どうせまた私に襲いかかるのだろう。フォルグに任せておけば、自分に被害が及ぶ事は無い。


「ひ、ひぃぃいい! 勘弁して欲しいんだナァ!」


 ――ほら、結局こうなる。


 ゴブリンはフォルグにボコボコにされた後、財産の全てをゼティアへ支払う事を同意させられる。その後、令嬢と共に内見へ出発したゴブリンは、物件を見るなり感嘆の声を上げた。


「っほ〜ん。こりゃあ〜確かにいい巣だナァ」


「気に入って頂けたようね」


 ゼティアが紹介するその巣は前回も紹介した物件だった。洞穴は綺麗に清掃されていて、まさかゴブリンバスターに殲滅せんめつされたいわく付きの物件だとは気づかない。

 それは今回だけの話ではなかった。その前も、その前の前も。ゼティアは代々ゴブリンに、この物件を紹介し続けてきたのだ。


「ああ、これなら今すぐにでも引っ越したいんだナァ」


「でも一つ約束して欲しいの。この物件を使い続ける限り、決して人間とその家畜を襲わぬと」


「ナァんだと?」


 財産を奪い、そして人間を襲う欲望を制止する。それは、人間を守るため、果ては悪役令嬢の悪行を抑止して断罪されないよう……なんて小細工の為では無い。

 しゅを増やすことしか能のないゴブリンは、その内追い込まれて人間を襲う。ゼティアはそれを狙っていた。制限するほどにゴブリンは残虐性を増すのだ。


「簡単でしょ?」


「お断りだナァ。████████████████が出来るんだナァ」


 流石のゴブリンも最大の目的である『種の繁栄』が完全に塞がれてしまっては、反発しか覚えない。そこでちょっとした飴を与えるのだ。そうすると簡単にこの条件を飲む。目先の問題解決しか見えていない。つまりゴブリンは馬鹿なのだ。


「そう言うと思いましたわ。そこで、ご紹介したい方がいらっしゃるの」


 ゼティアはそう言うと「パン」と手を叩きメスゴブリンを呼ぶ。


「ナ……!?」


「イヒヒ、驚くのも無理はないわ」


「あ……ありえない。メスゴブリンなんて見たこと無いんだナァ」


 このゴブリンの言う通り、この世界にメスゴブリンは存在しない。ではゼティアは如何いかにしてメスゴブリンを用意したのか。


 メスゴブリンは、ゼティアを離れオスに近づく。


(おい! 助けてくれ!)


 何かを必死に訴えるも、声が酷くしゃがれて上手く伝わらない。それもその筈、喋られないように声帯が傷つけられているのだ。


「あら、おアツいこと」


「ほーぅ。これは期待できるナァ。色々と」


(違う! 何を言ってるんだ。俺は体をメスに改造されているだけで、オスだギャ! この女は……コイツは悪魔ギャ!)


 ゴブリンは██████████ことができる。それにはメスオスも関係ないのだ。例え██████████元(オス)のガルムだったとしても同じことだ。


「さあ、来い。早速子作りをするんだナァ」


 オスゴブリンは、ガルムの腕を荒々しくつかみ苗床へ連れ込む。


(い、嫌だ! 待ってくれ! ██(ようたい)になるなら死んだ方がマシだ! やめろ! やめてくれぇぇえええええ!)


「イヒヒヒ。私はこれで失礼いたしますわ。御機嫌よう」


 ゼティアは特殊な能力(チート)などは備わっていない只の女性だ。しかし、早希だった時の記憶と、与えられた環境をフルに活用して計画を実行する。


「ほら早希。この展開前回までと同じだよ? このままじゃあ、また悪評が広がってしまうかも。断罪されるとおしまいだ」


 フォルグの嘆きも早希にとってはなんのその。

 令嬢は午後のティータイムを始める。それは彼女にとって大切な時間なのだ。今日の紅茶は『ヒュードル』。アーエール北部にあるヒュードル山系に産する紅茶だ。紅茶を少し飲んでから、令嬢は答えた。


「いいのいいの! これも私の計画の内なんだから……」


「その計画、僕にも教えてくれればいいのに」


「イヒヒヒ。ヤダよ!」


 ちょっとおどけて否定してみせる。だが早希はフォルグに計画を絶対に教えないと決めていた。仮に彼が計画を否定して、協力してくれなかったとすると全てが破綻はたんしてしまう。彼はそれほど重要な役割りを担っているからだ。それと、フォルグに引かれて嫌われたくない……という乙女ゴコロも少し入っていた。


「フォルきゅんは、私の事信じられないの? 近衛兵なら忠誠を誓ってみてよ」


「ふぅ。わかったよ……」


 フォルグは観念したかのように、ゴホンと咳払いをして、ひざまずく。


「忠誠を誓います。ゼティア様」


「だーめだよ! 早希様と呼んで!」


「分かりました。あなたを信じます。早希様」


「よろしい……ぷっ! イヒヒヒ。真面目顔のフォルきゅん可愛い!」


「あー! ちょっと真剣にやってんのに! 茶化さないで、恥ずかしいだろ!」


「イヒヒヒ。ごめんごめん。でもね、フォルきゅん」


 目に涙を浮かべるほど笑った早希は、それを拭いながらフォルグに告げる。


「断罪イベントなんか、どうって事ないんだから!」


 悪役令嬢は破滅エンドを恐れない。


とりあえずゴブリン編はこれで終わります。

3ヶ月以内には次話投稿できれば……と思います。


縦書きpdfはこちら

https://ayano-narou.blogspot.com/2019/03/blog-post_7.html

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ