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この恋を叶えるために  作者: つよちー
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最終回「この恋を叶える」

【前回のあらすじ】

演劇部に入部した春香の高校の文化祭で彼女の演劇を見届けた蓮。

彼女を褒めていると、春香は突然涙を流して蓮の元から去って行った。

小さな頃、春香の家に泊まりに行ったことがあった。お互いに数日前から楽しみにしていた。一緒に遊んだり、一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たり。殆どの時間を彼女と共にした。最後の日の夜、彼女と同じ布団で寝ているときに彼女は俺にこう言った。

「約束したいことがあるの」

小指を絡ませて俺と彼女は

「ずっと一緒だよ」

と約束を交わした。俺はその約束をずっと守ってきた。でも、彼女はそれを忘れてしまった。それが俺の心の闇。彼女の記憶は殆ど戻ってきている。同様に俺の心の闇も晴れてきている。だが、まだ彼女の記憶の欠片は揃ってない。そして俺の心の闇も晴れていない。


走り回って春香を探し続けた。彼女が病院に運ばれたときのように、息を切らしながら走る。喉が枯れ、息を吸うのが苦しくなっても走り続けた。彼女の家に行っても居なかった。ここに居ないのなら、もうあの場所しかない。再び俺は走り出した。涙の訳を知りたい。お前にいったい何が起こったんだ?もう、お前から離れたくない。約束を破りたくない。丘の頂へ続く階段を上がり切る。そこには春香がいた。息を整えて、彼女にゆっくり近付く。

「全部、思い出したよ」

そう言って彼女は振り返った。その表情に幼さはなく、あの告白のときのような綺麗な瞳で俺を見ていた。

「逃げ出してごめんね。なんか、蓮くんと一緒に過ごした時間を忘れたって思うと、ちょっと辛かったから....」

彼女は俺の手をそっと握る。

「ずっと、私の傍に居てくれてありがとう。私よりずっと辛かったよね?大好きな人に忘れられるなんて....私だったら耐えられない。それに、私がちゃんと気を付けていれば、事故も起こらなかった。蓮くんもこんな辛い思いをしなくて済んだ」

彼女の手を握り返す。

「お前は悪くない。確かに、何度もあの事故さえなければって嘆いた。でも、そのおかげで、お前を本当に理解できた。理解できていると勘違いしていた。その勘違いを正してくれた。こんなこと言っていいのか分かんないけど、感謝してる。もっと他の形で気付きたかったけど」

そう言って彼女に小さく微笑んだ。すると、彼女は俺に抱き付いてきた。

「本当にごめんね。蓮くんは、私よりいっぱい頑張ったよ。ずっと私を支えてくれた。見守ってくれた。慰めてくれた。優しくしてくれた。約束も守ってくれた。もうありがとうの一言じゃ感謝し切れないよ」

俺はそっと彼女の背中に手を回した。優しく彼女を抱き締める。そのままでいると、彼女は俺から離れた。

「ねえ、告白さ....やり直してもいい?」

その言葉に嬉しさを感じた。今までにない程の嬉しさが心を満たした。俺は頷き、彼女と向き合った。

「お前のことが好きだ、春香」

「私も大好きです」

そう言って彼女は微笑んだ。その笑顔は幸せで満ちていた。その笑顔につられて、俺も笑った。本当に幸せだ。その言葉で俺の心の闇は完全に晴れた。

「これからは、どんなことがあっても、お前の側から離れない。ずっと一緒にいる」

「うん、私も」

彼女としばらく見つめ合う。そして彼女は静かに目を閉じた。俺も目を閉じ、ゆっくりと彼女に唇を重ねた。そっと彼女から離れて目を開ける。彼女は少し顔を赤らめて笑った。俺と彼女の思い出の丘は、地平線に沈みかけている夕日に赤く照らされていた。そして次第に夕日は沈み、空は暗くなると同時に隠れていた星たちが顔を出した。綺麗な星空が頭上に広がった。彼女は俺の手をそっと繋ぎ、

「帰ろっか」

と言った。俺は小さく頷き、彼女と横に並んで歩き出した。これからはどちらかが先じゃなく、互いに助け合いながら同じ道を歩んでいこう。


東から電話があった。一緒に遊ばないかと、春香も含めて。了承の返信をして春香に連絡した。そして彼女と一緒にあの喫茶店へ行った。東はいつものテーブルで待っていた。あの店員さんは俺と春香を見るなり驚いた顔をしていた。そのときにどうやら店員さんは俺と東が付き合っていると本気で勘違いしていることに気付いた。

「はやくー」

東のその声で俺たちは彼女が座っているテーブルに座った。

「加藤くん、春香さん、本当におめでとう」

そう笑顔で春香の記憶が戻ったことを祝ってくれた。

「ありがとう、響子ちゃん」

「加藤くんにはいろいろと助けてもらったからね」

「それは俺の方だと思うが」

「気にしないの。今日は私の奢りよ。気が済むまで食べて行って」

そう言うと彼女は私の金額が持つとこまでと付け足した。気が済むまで頼めねえじゃねえかと突っ込んで笑った。互いに頼んだ飲み物のグラスを持ち、乾杯をした。

「響子ちゃんは蓮くんとどうやって知り合ったの?」

春香がそう質問すると、照れ臭そうに笑った。

「加藤くん、不眠症に悩まされてたの。それで昔の自分と重ねちゃって、助けようと思ってね」

「最初は本当に嫌な奴としか思えなかった。まあお前を知っていく内に仲良くなりたいって思ったかな」

「そうなんだー」

春香は俺と東の話を楽しそうに聞いた。

「それでね。私、加藤くんのことが好きになっちゃって告白したんだよね。まあ春香さんがいるから振られたんだけど」

「え!?蓮くん告白されたの!?」

「ま、まあ....」

「響子ちゃん可愛いし、魅力的だからお似合いだと思うなー」

「お前俺と付き合ってるの忘れてない?」

「んー?忘れてないよー」

その後も楽しく会話をしていて、気が付けば時間が過ぎてすっかり夕方になっていた。

「もうすっかり夜になるわね。楽しかったよ」

俺たち三人は立ち上がり会計を済ませた。本当に東が言った通り、彼女が全額払った。その後は自分の財布を悲しそうに見つめていた。その光景を見て笑っていた。

「響子ちゃん、わざわざ誘ってくれてありがとう。また遊ぼうね。今度は女の子だけで」

「そうね」

そう言うと二人は俺をニヤニヤと見つめる。東は俺に別れを告げると俺たちとは反対の道を歩いて行った。俺と春香は一緒に帰る。すると春香がそっと俺の手を握った。

「ねえ、蓮くん」

「なんだ?」

「大好きだよ」

夕焼けに照らされた綺麗な笑顔でそう言った。

「なんだよ今更。そんなの言わなくたって分かってるよ」

「そ、そっか。何か恥ずかしい」

そう言って彼女は照れ臭く笑う。

「私の気持ち、伝わってて良かった」

「そうだな。因みに俺の気持ちも伝わってるか?」

そう言うと彼女はニヤついて

「伝わってないなー。言葉で言ってくれないと分からないなー」

と意地悪をしてきた。俺は溜息を吐いて彼女にその言葉を言った。

「愛してるぞ」

予想外な言葉に驚いた彼女は酷く動揺した。

「そ、それはずるい....」

俺から顔を逸らす。

「自業自得。ほらお前も言え」

「蓮くんも意地悪だよぉ」

そう言うと彼女は優しい幸せに満ちた笑顔で

「私も愛してます」

俺は彼女の頭を撫でた。

あとがき


最後まで読んでくれてありがとうございます。

毎日二話投稿なのであっさり完結しましたが、その短い間でも読んでくれて、そして評価してくれてとても嬉しく励みになりました。

春香と蓮の結婚式を書きたかったのですが、それだと時間が飛び過ぎなので我慢しました(笑)

感想や指摘など頂くと嬉しいです。

それではまた何処かで。


これらに登場する人物、地域、団体は全てフィクションです。

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