第一話「儚く散る」
はじめまして、つよちーです。
昔から恋愛小説を書くのが好きで、次第に人に読んでもらいたいと思うようになり、投稿してみました。
まだまだ慣れていないので読みにくい部分があるかと思いますが、最後まで読んでくれると嬉しい限りです。
「ずっと一緒だよ」
小さな頃、一人の女の子と約束を交わした。今でも忘れることはない。
「皆、卒業おめでとう」
そう先生が言うと皆一斉に立ち上がって礼をした。
「三年間ありがとうございました」
笑顔で言う生徒、涙を流しながら言う生徒、敬意を込めて言う生徒。その姿がとても立派に見える。今日は中学校の卒業式だ。先生が教室から出て行った後、皆はそれぞれで集まり、思い出を語り出した。俺、加藤蓮は、今からしようと思っていることに少し緊張を抱いていた。
「おい加藤」
名前を呼ばれ、その声の主の方を見る。
「早く琴原のとこ行ってこいよ。もしかしてビビってるのか?」
「そんなことない。少し気持ちを落ち着かせてるだけだよ」
「そうか。まあ頑張れよ。俺、応援してるからよ」
そう言われ、俺はそいつに礼と別れを告げ、教室から出た。琴原とは俺の幼馴染で俺の好きな人でもある。名前は春香。卒業式に告白しようと決めていた。彼女がいる教室へ向かう。扉を開けて春香を呼び出した。周りの生徒に冷やかされ彼女は顔を赤くしながら教室から出てきた。
「ちょっと、恥ずかしいじゃんか....」
「一緒に来てくれ」
「わかった。その前に友達にお別れさせて」
「わかった」
彼女は教室に入りしばらくすると出てきた。
「行こっか」
俺は頷いて歩き出した。彼女は一言も喋らず、黙々と俺について来る。校門から外へ出て、桜並木の道を通る。地面は散った桜の花びらでいっぱいだった。坂を登り、小さな丘に着いた。ここは俺と春香の思い出の場所だ。
彼女は小さな頃、嫌なことがあればいつもここに来て泣いていた。ここから見える景色を見れば、嫌なことを忘れられるらしい。俺はここで落ち込んでいる彼女を慰めていた。今ではもうそのようなことはない。彼女はただ黙々と景色を眺める。そしてこっちを向いて口を開いた。
「懐かしいね、ここ」
「そうだな....」
「小さい頃、よく来てたよね」
「ああ....」
静寂が生まれ、風の音だけが響く。緊張がどんどん大きくなってくる。心臓の鼓動が聞こえるくらいに。
「....なにか私に言いたいことがあるんじゃないの?」
突然彼女はそう言った。深く息を吸い、彼女と向かい合う。彼女に想いを伝えるための、好きというたった二文字の言葉がなかなか口に出せない。俺は大きく息を吸い、彼女に想いを告げた。
「お前のことが好きだ」
彼女は少し驚いたように目を見開いてすぐに俯いた。俺はただじっと彼女の返事を待つ。緊張がついに頂点に達した。今までに無いほど心臓が激しく脈を打つ。彼女は顔を手で覆った。そしてその指の隙間から涙が流れた。
「こ、琴原?」
「すっごく嬉しい」
彼女は顔を上げる。涙を流しながら笑っていた。
「私も、加藤くんが好き。ずっと前から大好きでした」
その言葉を聞いて安心と同時に尋常じゃない嬉しさが心を満たした。
「あのときの約束、忘れてないよね?」
"あのとき"というのは小さな頃に交わした約束のことだろうか。きっとそうだ。
「忘れるもんか。これからもずっと守るつもりだよ」
そう言って俺は彼女を抱きしめた。
このまま一生離したくない、そんな思いが俺の感情を支配した。俺と彼女は結ばれた。それからの毎日が楽しくて仕方がなかった。でもその幸せな日常は、儚く終止符をうたれた。
息を切らしながら走る。喉が枯れ、息を吸うのが苦しくなっても走り続けた。春香が搬送された病院へ行かなければならない。彼女の無事を祈る。そうでないと嫌だ。息が上がり、呼吸がままならない。一度も立ち止まらずに病院に着いた。入り口で彼女の母親、早苗さんが俺を待っていた。
「早苗さん....春香は....」
「なんとか無事みたい」
その言葉を聞いて心の騒ぎが収まり安心した。呼吸を整えるために、胸に手を当て深呼吸をする。
「それで....春香はどこに?」
「今は病室でゆっくり眠っているわ。あの子のために傍にいてやって」
「分かりました。ありがとうございます」
そう言って春香がいる病室へ向かう。本当に良かった。最悪の結末を考えると足が竦んでしまいそうなくらい怖くなった。春香がいる病室に着き、扉をゆっくり開ける。そこには体じゅう傷だらけで包帯を巻いた痛々しい彼女の姿があった。見ているだけでも辛くなるくらい嫌な光景だ。でも、彼女が無事なのが嬉しくてそんなこと気にしなかった。近くにあった椅子を彼女の近くに寄せて座った。しばらくすると早苗さんが入ってきた。
「ぐっすり眠ってるわね」
「はい。無事で本当に良かったです」
そう言うと早苗さんは再び扉を開けて外へ出る。
「どこへ行くんですか?」
「お医者さんのとこに。話を聞きに行くの」
「そうですか」
小さく微笑むと彼女は病室から出て行った。
病室は静かだった。ふと窓の景色を眺める。空は雲に覆われ、今にも雨が降りそうな雰囲気だった。彼女の手をそっと握る。暖かい。彼女が生きていると感じられる。視線を春香の手から顔に移すと、彼女は目を覚ましていた。
「春香!」
彼女の手を強く握る。無事に目を覚ましたのが本当に嬉しくてじっとしてられなかった。またあの時と同じように、互いに幸せを感じられる日々を過ごせる、と思うと胸の高鳴りが収まらなかった。彼女は俺の顔を見ると首を傾げた。
「....だれ?」
その言葉を聞いて、体が固まる。最悪の事態を想像した。嘘だろ。そんな訳ない。きっと春香の悪戯に違いない。
「冗談はよせよ。俺だよ。蓮だよ」
笑って彼女にそう言う。それでも彼女は首を傾げた。
「覚えてないのか....?」
「わたし、あなたのこと知らないよ?」
その言葉で俺の心の高鳴りは一瞬で消え、確信した。彼女には記憶がない。俺のことを、覚えていない。俺が抱いた希望は儚く散り、心を暗闇が覆った。
春香が記憶喪失になって数ヶ月が経った。彼女は俺のことを蓮ではなく、"お兄ちゃん"と呼ぶ。何もかもを忘れてしまった彼女を見ていると、胸が苦しくなる。あれ以降、何度も病院に通い、春香の記憶を取り戻そうと努力した。でも、たった一度も彼女が何かを思い出したことはなかった。今はもう病院に通っていない。もうあんな彼女の姿を見たくない。あんな思いをしたくない。
「蓮?」
体を揺さぶられ目が覚める。
「お母さん、何か用?」
「蓮が心配なの。最近ずっと寝てばっかでしょ?」
「ああ、大丈夫。ただの寝不足だよ」
そう言って立ち上がった。
「俺のことは心配しなくていいよ」
「ならいいんだけど....」
俺は自分の部屋へ向かった。春香があんなことになってから、まともに眠れていない。毎日睡眠不足で眠気に悩まされる。自分の部屋へ入り、ベットに横たわった。春香との楽しい思い出。思い出すと心が安らぐと同時に切なさを感じる。もうあの頃には戻れない。医者も今の状態だと記憶を取り戻すのは難しいと言っていた。希望がない。春香が生き延びた時の嬉しさは、今ではもうない。こんなにも近くにいるのに、手を伸ばせば触れられる距離にいるのに果てがないくらいに遠く感じる。突然机の上に置いてあった携帯が鳴り出した。ベットから立ち上がり画面を見ると早苗さんから電話がかかってきた。
「もしもし?」
「蓮くん、春香が....」
それを聞いた途端俺は部屋を出て急いで病院に向かった。
「春香!」
扉を開けて春香の名前を叫んだ。春香は俺のほうを見て笑う。
「あ、お兄ちゃん、久しぶり!」
俺のことを"蓮"と呼ばない。俺は早苗さんを見て疑問の表情を彼女に向ける。
「早苗さん....?」
「蓮くん、ごめんなさい」
「俺の名前を呼んだって....」
早苗さんは申し訳なさそうな顔で誤った。
「春香、お母さんちょっと外に出てるね」
「はーい」
扉を開けて俺の方を見る。
「ちょっと来てくれるかしら」
俺は頷いて彼女について行った。病室から少し離れたところせ立ち止まり、俺と向き合った。
「春香は、小さい頃の記憶が戻ったの」
「小さい頃の....?」
「そう。だから、小さな頃の蓮くんのことを思い出した。でも今の蓮くんのことは思い出してないの。春香は自分のことをまだ小さい頃の自分だと思い込んでる」
「つまり、今の春香は子供の頃の春香ということですか?」
「そういうことになるわね。お医者さんには記憶が戻るのは難しいって言われたけど、今日みたなことがあれば、まだ希望はあるわ」
まだ希望はある。その言葉を聞いて心の闇が少しだけ晴れたような気がした。時間を掛けて、彼女の記憶を蘇らせよう。俺は大きな決意を抱いた。
春香の記憶が戻って、俺の不眠症は少し治った。そして再び病院に通うことにした。彼女は事故のせいで歩けなくなっている。なので毎日リハビリに励んでいる。俺はそれを見守る。春香は手すりを掴み、腕で体を支えながらゆっくりと歩いている。
力が入らない脚に力を入れ、倒れそうになってもそれを堪えて歩き続ける。身体中から汗を垂れ流し、ゴールへ進み続ける。彼女の一日でも歩けるようになりたい気持ちが見ているだけでも伝わってくる。あと一歩のところでバランスを崩し、倒れてしまった。
「春香、大丈夫か?」
そう言って春香の方へ寄る。
手を差し伸べたが彼女はそれを払った。
「まだいけるよ....」
息を切らしながらそう言い再び手すりを握り締める。残った力を振り絞って立ち上がろうと頑張ったが、彼女は立ち上がれなかったもう今の彼女には力が残っていなかった。
「春香、無理するな。今日はここまでだ」
そう言って春香を抱え起こし、そして車椅子に座らせた。
「できるって言ったじゃん....」
納得いかない表情でそう言う。
「最後立てなかっただろ」
彼女に飲み物を渡し、彼女はそれを受け取り飲んだ。春香が座っている車椅子を後ろから押して、春香の病室へ向かう。
「お兄ちゃん、レンくんはどこなの?」
レン....それは俺のことじゃない。名前を聞く度に胸が痛くなる。俺が蓮だと訴えたい衝動に駆られるが、それを抑えて春香に優しく言う。
「レンくんは春香が元気になったら来るって言ってたよ」
そう言うと春香は笑顔になった。
「なら早く元気にならなくっちゃ!」
「そうだな....。でも無理しちゃ駄目だぞ。無理矢理なものはまた壊れるんだ」
春香は首を傾げる。まあ仕方ない。今の春香は昔の春香だ。知力もその時の状態なのだろう。
「どういうこと?」
「分からなくてもいいよ」
「えー気になるじゃんー」
俺は軽く笑みをこぼす。春香を見ていると昔を思い出す。彼女は気になることは何があろうと知ろうとする、そういう性格だった。今のこの状況を懐かしく感じる。彼女のわがままば性格に俺は文句一つ言わずに付き合ってたな。
「じゃあ春香、時間を掛けて使ったロボットと、すぐに完成させたロボット、どっちが壊れにくい?」
「時間かけた方!」
「そう、いくらすごいロボットでも、手を抜いたらすぐ壊れるんだ」
「そうなんだー」
そう言うと春香は体を捻ってこっちを向く。
「じゃあわたしもゆっくり治さないといけないの?」
その目から少し寂しさを感じる。そうだな、と答えたいところだが、それを言えば彼女を失望させるような気がして言えなかった。
「まあ自分のペースで頑張ればいいと思うよ」
「わかったー」
今の彼女には難しいことは言わないでおこう。順調回復していってくれれば、俺も早苗さんも喜ぶ。春香の病室を開けて中に入る。車椅子をベットの近くに寄せると、彼女は腕で体を起こしベットに寝転んだ。俺はその上に布団を被せた。
「はやく歩けるようになりたい」
「俺もそう思うよ」
そう言って俺は春香の頭を優しく撫でた。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
実は小説を投稿するのは初めてではないのです。
でも、そちらはあまり満足のいく活動ではなかったので、ここでやり直そうと思い投稿しました。
一応この小説は完結させているので投稿はスムーズにいくと思います。
感想や指摘など頂くと嬉しいです。
続きを楽しみにしてくれると更に嬉しいです。
これらに登場する人物、地域、団体は全てフィクションです。




