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祭り囃子  作者: SecondFiddle
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貸し農園



 大根を植えようと思った。



僕は会社員だが、週末は近所の貸農園で野菜を作っている。

 貸し農園と言っても猫のひたいほどの狭さで、借賃も僕の小遣いで賄えるくらい僅かな金額だ。

 さらに平日は、貸し農園のプロ管理人に草むしりや水やりをしてもらっているので、ありがたい。


 季節は十月――

 雲ひとつない晴天だ。


 今日は週末の土曜日。ひなが一日、農作業ができる。

 自転車の後ろの荷台に小型の鍬をくくりつけ、前カゴには大根の種袋と軍手を放り込んだ。


 遠くで太鼓や笛が、景気よく聞こえている。

 そういえば、秋の祭りが始まるな……と僕は思った。


 到着すると、隣の畑では顔なじみになった年寄りが、白菜の手入れをしている。

「出来はどうですか」

 僕は老人に声をかけた。

「うーん、まだ巻きが悪いんだよ……今日は?」

 僕は老人に答える。

「大根を植えようと思って」

 老人は微笑んだ。

「それはちょうどいい。今が種まきにはいい時期だね」


 一通り話をすると、農作業に取り掛かることにした。

 大根が植えられるように、先週から畑を耕してある。


 遠くの鬱蒼と茂った林の中で数羽のカラスが鳴いている。

 餌場か天気の話か、僕には解らないが、賑やかだ。


「さて……」

 今日の作業に入るため、自転車にくくりつけていた鍬をおろし、大根の種袋を前カゴからおろした。


 僕は軍手をはめ、鍬を持ち、耕し始めた。


 ザク……ザク……


 鍬を入れ土を掘り起こす。

 乾いた土が、鍬の先で崩れ落ちていく。


 順調だ――


 と、その時、振り下ろした鍬に、何か固いものに当たった。

 地中には、拳ほどの大きさの石が隠れていることが、よくある。


 どうせまた石ころだろう……


 僕は深く考えもせず、それを拾い上げ、土を払った。


 そしてでてきたもの――僕は驚いた。


 それは『骨』だった――


『え?』


 人間か動物か解らないが、明らかに骨だ。

 人ならば、大腿骨辺りだろうか……?


 薄気味悪くなり、その骨を畑の隅に置き、僕はさらに畑に鍬を入れる。


 カチン――


 また、手応えを感じた。


『今度は?』


 いいようのない不安がよぎる。


 土を払いのけると、かなり大きいものが出土した。


『うわ』


 それは間違えようがない。


 下顎のない頭蓋骨だ――


『なんでこんなもんが……』


 僕は手にした骨を地面に放るように置くと、慌てて老人に声をかけた。


 しかし、さっきまで白菜の手入れをしているはずの隣人がいない。

 いつもなら一言声をかける律儀な老人なのに、こつ然と消えている。

 ただ、移植ゴテがそこにあるだけだ……


『一体、どうしたんだ……?』


 気がつくと、遠くで聞こえていたはずの祭囃子が、やんでいる。

 騒がしかった林のカラスの声も、聞こえない。


 そして一陣の風が、頬に当たる。


 永遠に時が止まったように、僕は立ち尽くした……


 完


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