1話 ロストマシン
黒い光沢のあるバイクがただ1台道の真ん中を走る。 それを見て驚く人々もいるが彼、天城カイは気にしない。彼は世間体を気にしない、いや、彼はバイクに乗ることが好きなのだ。
大学に着きバイクを降りた瞬間。
「何それー、まさかロストマシン?」
ロストマシンとは交通手段が自動運転ポッドに切り替わる前に使われていた乗り物の総称である。
「その前に、君、誰? 同じ大学の人っぽいけど。」
「私の名前は白川ノア、あなたの名前は?」
「僕の名前は天城カイ、バイク、好きなの?」
「私はロストマシンが好きかなー、ゆっくり話がしたいから午前の講義が終わったらここの大学のカフェに来てよ!」
そう言ってノアは立ち去った。
カイの頭は混乱した。
「なんなんだ、あの人?普通ロストマシンに興味持つか?一定数はいるんだとしても女性が?珍しすぎる。」
そうこう考えている内に午前の講義は終わった。
「せっかく誘われたんだし行くか。」
カイは大学のカフェに行った。カフェの前でノアは待っていた。
「待たせてすまないな。」
「いいよ、行こ。」
カイはクロワッサンとアイスコーヒーを頼み、ノアは昔ながらの固めのプリンとブラックコーヒーを頼んだ。
「で、話の続きなんだけど。」
ノアは目をキラキラさせて言った。
「あのロストマシンってネイキッドっていうバイクだよね。」
カイは淡々と返答した。
「分からない、気にしたこともなかった。」
ノアは納得がいかなそうな顔で「じゃあ何でネイキッドのバイクを持ってるの?」と聞いた。
カイはまた淡々と返答した。
「あのバイクは親の忘れ形見でね。」
「あ、あーそうなんだ。」
急に話が重くなったのでノアは困ってしまった。
「あ、そういえば伝えたいことがあったんだ。」
ノアは必死に空気を明るくしようと努力した。
「この大学にはロストマシンサークルがあってね、そのサークルに入ろうと思うんだ。」
「で?」
カイは興味無さそうに答えた。
「一緒にそのサークルに入らない?人数は多い方が楽しいよ!」
ノアは熱意のある目でカイを見た。
カイは間髪入れずに返事した。
「僕はバイクに乗るのだけが楽しいんだ、だから悪いけど遠慮しとくよ。」
カイは少し考え事して言った。
「だけど僕のバイクがネイキッドであることが分かった。非常に有益な情報が得られた。お礼に奢らせて貰うよ。」
そう言うとカイは立ち去った。
午後の講義も終わり帰ろうとすると、ノアがある大柄な男と緑色の髪の男と揉めているところが見えた。
「何で私はロストマシンサークルに入れないの!?」
「女にロストマシンのロマンは分からんだろ。」
「だけどこのサークルは俺たち加えても2人だ。サークルの存続にも入れてあげた方がいい。」
「しかし、このサークルは男しか入れないのが伝統だ。それにあの女はロストマシンをもっていないんだとよ。」
「ロストマシンは今ではほとんどが廃棄されて手に入らないはず。」
ノアは理解できない顔で言った。
「うちの家系は代々車、自動運転ポッドの会社に勤めていてね。それ経由で手に入るんだよ。」
「ちょっといいか?」
カイはひょこっと現れ会話の間に入った。
「ノアがこのサークルに入れないのはおかしい。」
「なんだお前?」
大柄な男は舌打ちした。
「じゃあ聞こう、お前はロストマシンをもっているのか?」
「ああ、もってる。」
大柄な男は舌なめずりをしながら。
「面白い、ならばこうしよう、今日の12時にあとから伝える山岳地帯の旧道をレースする。お前が勝ったらノアの入部を認めてやろう。」
大柄な男は語気を強めて鋭い目で言った。
「ただし、俺が勝ったらお前のもっているロストマシンは俺がいただく。」
「だけどあのロストマシンは親の形見なんでしょ、負けたら取り返しがつかないよ」
「大丈夫だ、ちゃんと勝算はある。」
緑色の髪の男はすまなそうに言った。
「すまないね、君たち。そこの女性は入部を諦めてくれないかな?」
「僕は理不尽なことがあるとそれを放っておけない、勝負に乗ろう。」
「面白い、腕が鳴るぜ」
「ドルン!!!」
人けのない山岳地帯にバイクの音がこだまする。
「ほう、ここまで来たことを褒め、名前を教えてやる。俺の名前は堂本ゴウだ。」
「君の名前に興味はない、さっさと始めよう。」
「そうしようか、俺はそのロストマシンがはやく欲しいんでね。」




