第43話 剣
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第43話 剣
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俺は八歳になった。転生しから一年ちょっとだ。
振り返ってみると、充実した一年ちょっとだった。
しかも前世の後輩である椎名まで転生していた。
もうさ、驚きが一周回って冷静になった感じ。
椎名……じゃなかった、リンダはあれからエルバニス子爵とバニトール公爵との縁切りを、皇帝に申し入れた。
当然ながら凄い騒動だった。
祖父ゴーラスは毎日帝城にいき、帰ってきたら楽し気にその日の話をしていた。
大嫌いなバニトール公爵の顔が歪むところが見られたと、本当に嬉しそうだ。
皇帝の判断はまだ示されていないが、リンダが子爵家と公爵家は受け入れられないと強く主張しているから縁切りはさせるのではないだろうか。
さて、話は大きく変わるが、もうすぐ弟ジョルジュの七歳の誕生日がやってくる。
何かプレゼントをと考えているが、何がいいだろうか。
剣の稽古をがんばっているから、剣を贈るのがいいだろうか。
せっかく魔法で金属を創り出せるのだから、剣も創れるのではないか。
鎖だってできたし、剣だってできるだろう。
といってもこの世界の剣なんて作ったこともなければ、その知識もない。
とにかく丈夫でよく斬れるをイメージして創ってみればいいか。
「よし、気合いで創ってみますか!」
フンヌーッ! うおーっ! 丈夫でよく斬れる剣、こい!
俺の魔力が剣を模っていく。
でき上った剣は子供でも扱えるやや小ぶりのものだが、ちゃんと剣に見える。
だが、剣というのはものを斬る武器だ。鈍らではいけない。
ということで試し斬りをすることにした。
訓練場で竹を一本立てて、剣を構える。
「ふー……ふんっ」
竹は斬れた。
まったく問題ないし、剣に刃こぼれはない。
だが、手に残る手応えが普通だ。
普通というだけで、斬れ味が特別いいというわけではない。
もっと斬れ味を上げることができないだろうか。
そこで剣に風属性の魔力を追加してみたらどうかと思って、やってみることにした。
フンヌーッ!
剣を創る際に、風属性の魔力を閉じ込める。
これ、結構難しい。
だが、そこは気合でなんとかするのが、俺だ!
オラーッ!
パリンッ。
「……失敗か」
風属性の魔力と剣が馴染むことができなかったようだ。
失敗は成功の母というし、何度でもチャレンジだな!
パリンッ。パリンッ。パリンッ。パリンッ。パリンッ。パリンッ。パリンッ。パリンッ。パリンッ。パリンッ。パリンッ。パリンッ。パリンッ。パリンッ。
ふー、集中力がきれそうだ。
少し休憩を挟むか。
「フェリクス様!」
「どうしたジェミニス」
騎士団で武具の手入れをする鍛冶師のジェミニスだ。
悲壮感のある声を出してどうしたというのだ?
「その鉄を見せてもらっていいでしょうか!?」
「いいけど?」
「ありがとうございます!」
ジェミニスは剣の残骸を手に取ろうとして、指を斬った。
今、指を斬る要素があったか?
「やっぱりだ……」
何がやっぱりなのか?
「ちょっと失礼します!」
そばにあった訓練用の剣の先を残骸に近づけると、シャッシャッシャッシャッという音が聞こえた。
「まさか、その残骸か?」
「はい。この残骸に風の効果があるようです」
よく見れば、その風のせいか破片が振動しているようにわずかに動いている。
俺が風属性を封入しようとしたため、こんな状態になったようだな。
「この剣の残骸をいただいてもいいでしょうか!?」
俺の足元には、十数回に渡って失敗した剣の残骸が散らばっている。
「構わんが、そんなものを何に使うんだ?」
「これで剣を鍛えます!」
「ほう、剣を……。その作業は俺も見ていいか」
「作業をですか? そんなに楽しいものではないですが、どうぞ見てください」
残骸は素手で拾うと怪我をすることから、ゴミはさみで拾って金属製の容器に入れた。
ジェミニスの鍛冶工房で、残骸をるつぼにいれて高熱を加える。
ジェミニスは熱属性を持っていて、次第に残骸が熱で真っ赤になっていく。
その時、ジェミニスが「ほう」と感嘆の声をあげた。
「どうした?」
「通常の鉄ですとこの温度で溶けますが、この鉄はまだ溶けません。このまま温度を上げていきます」
「了解だ」
そのまま見ていると、残骸が溶け始めた。
「通常の鉄よりかなり高い温度で溶けました。これは面白い」
ジェミニスがニヤニヤする。
こういうのを鍛冶莫迦と言うのだろう。頼もしいな。
溶解した鉄を型に入れて冷やし、その塊を加熱して真っ赤になったらハンマーで叩いて鍛える。
何度も過熱と叩きを繰り返し、伸びた鉄を折り曲げて短くし、また加熱と叩くを繰り返す。
ハンマーで叩くと、風が巻き上がる。
それが熱風となって俺に届き、肌を焼かれているような錯覚を覚えた。
それほどの熱量を一番受けるのはジェミニスだが、まったく怯むことなく鉄に向き合っていた。
尊敬する姿勢だ。これぞまさしく職人の鏡だと、俺は思う。
ジェミニスの作業は三日ほど続いた。
その間、彼は睡眠時間さえ削って作業に没頭した。
俺もその作業を見続けた。
「出来上がりました!」
「出来たはいいが、なんで剣が薄緑色に輝いているんだ?」
「風の力が鉄を緑色に変えたようです」
「風の力もあるかもしれないが、ジェミニスの情熱が剣に命を吹き込んだのだろうな」
「嬉しいことを言ってくださいますね、フェリクス様は!」
「試し斬りしていいか」
「剣は斬るための道具です。どうぞ、試してください」
訓練場に場所を移し、竹を前にする。
「ふんっ!」
竹を斬ったと思うが、まったく手応えを感じなかった。
なんだ、これは……。空振りしたというのか?
竹がボトリッと落ちる。
手応えはなかったが、斬れていたようだ。
「ヴァスト。丸太を用意してくれ」
「はい」
ヴァストが丸太を用意し、俺はそれを斬ってみた。
丸太は綺麗に斬れた。
「竹よりは手応えを感じたが、それでもまるで紙でも斬っているような感じだ。凄い斬れ味だな、これ」
「試しだ、鎧を持ってきてくれ」
ヴァストが訓練用の防具を持ってくる。
盾も持ってくるとは、分かってきたじゃないか、ヴァストよ。
そして鎧も盾も綺麗に斬れてしまった。
さすがに紙とは言わないが、俺のような中途半端な腕でも斬れるのだから、騎士たちがこの剣を持ったら洒落にならないんじゃないか。
「鎧や盾を斬っても刃こぼれはないな」
ジェミニスに剣を渡して確認してもらうが、俺の見立て通りなんの問題もない。
「これは預からせてもらう」
父バニアスに報告しておかないといけない案件だろう。
「それはフェリクス様のものです。どうぞ、好きにお使いください。ただ、そのままでは危険ですので、鞘を造りますので、少しだけお時間をください」
「もらっていいのか?」
「もちろんです。フェリクス様の素材がなかったら、その剣は造れませんでした。どうぞ、お使いください」
鞘を造ってもらい、俺はその足で父バニアスに面会を求めた。
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