第37話 フェイダーゲン
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第37話 フェイダーゲン
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父バニアスに今回の件を報告しに向かった。
「アルフェニス准男爵の屋敷には、攫われた子供が八人囚われていました。現在はアルフェニス准男爵の余罪を調べています」
「アルフェニス准男爵は最近領内に屋敷を構えたが、まさか我が領内でそのような暴挙に出るとはな」
アルフェニス准男爵が領都フランチェスコに屋敷を構えたのは、つい二カ月ほど前だ。
ガラス製品をうちが供給しているので、そこに一枚噛みたかったというのが理由らしい。
実際に何度か父バニアスに面会を求め、ガラス製品の販売の権利を求めていた。
しかしそれは表向きの理由で、本来の目的は子供を誘拐して売り飛ばすことだったようだ。
今回捕縛した者の中に、アルフェニス准男爵はいなかった。
俺がアルフェニス准男爵だと思っていたのは、その手下の幹部らしい。
「アルフェニス准男爵を呼び出しますか?」
「呼び出してくるとは思えんな」
それもそうか。わざわざ捕まえてくださいと、ここにくるわけがない。
「だが、呼び出さなければ、舐められる」
「アルフェニス准男爵の屋敷で誘拐された子供が発見され、その子供たちを売り飛ばした証拠の帳簿もありました。きてもこなくても、アルフェニス准男爵はお終いでしょ?」
「そう簡単なことではない。アルフェニス准男爵の後ろには、バニトール公爵がいると思われるからな。バニトール公爵は色々と黒い噂がある人物だ、一筋縄ではいかんだろう」
公爵家は皇室の一門衆になるため、絶大な権力を持っている。
そのバニトール公爵がアルフェニス准男爵の子供誘拐に関わり、利益を得ていたのなら面倒なことになるかもしれない。
もし俺がバニトール公爵だったら、アルフェニス准男爵を始末して知らんぷりを決め込むかな。
だが、罪のない子供を誘拐し、売り飛ばすなど絶対に許せない。
なんとか罪を問いたいところだ。
「とりあえず、アルフェニス准男爵を召喚し、罪を問う。召喚に応じなければ、皇帝陛下に上申書を出し処分してもらうことになるだろう」
父バニアスがアルフェニス准男爵に召喚状を送り、あとは彼らの動向を見守ることになった。
貴族の領内で行われた犯罪行為は、貴族が裁くため皇帝でも口出しはしない。
複数の貴族領に跨って犯罪が行われていた場合は皇帝が主導するが、今回は他領に関する犯罪の証拠はなかったから、うちが主導している。
それでもアルフェニス准男爵はうちの家臣ではないので、召喚に応じない場合は皇帝に動いてもらうことになる。
「この報告書にあるシトラスという子供は、それほどの者か」
「養父のダーゲンに確認しましたが、水属性の才能レベルが三、生属性の才能レベルが五、そして無属性の才能レベルが一〇だということです」
「ほう、無属性が一〇か。おそらく、フェイダーゲンだな」
高い才能レベルを持った子が、訓練しなくても無意識に魔法を操ることができることをフェイダーゲンと言う。
フェイダーゲンの子は謂わば天才であり、最初から高いレベルで魔法を扱うことができるのだ。
今回、シトラスが無属性のフェイダーゲンだったのは幸いだった。
もし火属性のような攻撃性の高い属性だった場合、その力を暴走させたりしたらあの辺り一帯が灰燼に帰していたかもしれない。
だから、無属性の力をコントロールしてもらわないといけない。
今のままではかなり危険な状態だからだ。
「はい。その可能性は非常に高いと思われます」
「フェリクスの配下にすると聞いたが?」
「護衛の女性騎士ジュミルの従士見習いにしました。あの子が力の制御を覚え、騎士としての礼節や知識を身につけたら俺の護衛として騎士に引き上げたいと思っています」
フェイダーゲンの数は少ないが、まったくいないわけでない。
事実、俺の目の前に、そのフェイダーゲンがいる。
そう、このイケメンパパさんは、フェイダーゲンなのである。
「うむ。それでいい」
フェイダーゲンは、簡単な詠唱で魔法を発動できる。
その詠唱の文言は、認識した時に頭に浮かんでくるのだとか。
俺のような気合い魔法ではないが、まさに天才の領域の話だ。
訓練場でシトラスの訓練風景を見るが、かなり無属性に振り回されているようだ。
フェイダーゲンの訓練法は、ある程度確立されているからそれに沿って訓練を行っている。
そのためイケメン副団長がシトラスについてしまった。
「フェリクス様! 稽古をしますぞ!」
ムッキムキの筋肉を纏った巨躯を揺らし、怒鳴ってもいないのに怒鳴り声のこの赤毛の男は、騎士団の特殊突撃部隊を率いるシャジ。
今後、俺の稽古担当になった男だ。
「先ずは、この石を持ち上げてもらいます! もちろん、身体強化はなしで」
「おう、望むところだぜ!」
フンムーッ!
うおーりゃっ!
およそ三〇キログラムの石を持ち上げる。
七歳で身体強化を使わずにこんなことができるのは滅多にいないぞ!
何せ、今の俺とほぼ同じくらいの重量だからな!
「おー! さすがは、フェリクス様だ! それに比べて、お前らのへっぴり腰はなんだ?」
ヴァストとアル・エド兄弟は苦戦している。
普段の鍛え方が足りないようだ。
「オラオラオラーッ。そんなことでフェリクス様の肉盾にはなれんぞ!」
いや、肉盾にする気はないんだが……。
「「「はい!」」」
お前たちも返事をするんじゃない。しかもいい返事じゃないか。
そんな訓練場の横では、シトラスが空気椅子をしていた。
「あれがフェイダーゲンの訓練なのか?」
まあ、何か意味があるのかもしれないな。
「よう、シトラス」
「ううう」
足がブルブルして喋ったら崩れそうだな。
「副団長、俺もやっていいか?」
「構いませんが、キツイですよ」
「望むところだ」
空気椅子なんて何年振りだろうか。
足がプルプルするシトラスと並んで空気椅子をすること三〇分。
この体がハイスペックなのは気づいていたが、相当なものだ。
このままどこまでできるか、試してみるか。
「フェリクス様。終了です」
「おう……ふー……」
ドサッ。
「ん……」
横でシトラスが全身プルプルさせて倒れていた。
訓練は始まったばかりだ。がんばれよ。
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