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王妃教育〜カイル編〜

刺繍課題が出された。

机にネクタイを広げて悩む。

最後に殿下の物をと刺繍依頼されてやったものは目の前で殿下に捨てられて踏みにじられた。

今回もそうなるとわかって作るのだから面倒だ。

糸の無駄である。

とは言え課題が出たならやるべきだ。

私は針と糸を手にとった。

…ここでふと考える。

何故、テレサ様は私にこのような課題を出されたのか?

見本として?

それだけ?

何か裏がある。

大体、テレサ様は殿下が私が作った物は目の前で容赦なく破棄すると知っているのだ。

それでもやらせたのは私の心を強くする為。

愛されてなくても夫に仕えるのは当然という貴族の考えを染み込ませるため。

そして存分に染み込んだ辺りでやらせなくなった。

正直ずっと続くと思っていたのに打ち切りにされて驚いた覚えがある。

それを今再びやれと言う。

何故?

そもそも何故アリスに同じ課題を出した?

私と違って殿下はアリスが作った物を踏みにじったりはしないだろう。

私とは違う理由での指示。

腕前をあげる為?

ううん、彼女の腕は充分だと思う。

貴族令嬢の作品は偶に見るが、大抵はこれぞとい大作を見せられる。

ハンカチやネクタイにする程度のものはまず見ることはない。

だが、その差分を差し引いても彼女の腕は貴族令嬢と充分張れる。

刺繍の腕をあげるための練習ではない。

私にわざわざ見本となれと言った理由は…!

私はピンときた!

では、私は何をすればいいのか。

さて、どういう風に刺繍しようか…。

私は悪戯でもするかのような面持ちで針を進めるのだった。




完徹した次の夜はよく眠れる。

私はまさに深い眠りについていた。

しかし、それでも部屋の外から聞こえる足音で意識は覚醒する。

ただ瞼が重くて起きたくなかったのだ。

規則正しい足音がドアの前で止まった。

ノックの音は三回。

失礼しますといういつもの言葉と共に入室してきたのは言うまでもなくスチュワート。

いつものように私を起こすためにベッドの側に来て…ふと足音が一瞬止まった。

そして、ベッドを通り過ぎる。

おや?

眠たいが気になるので薄目を開けた。

スチュワートがベッドを通り過ぎて向かった先は私の机。

やばい、昨日の刺繍作業やりっぱなしだ。

目を覚ましたら怒られる!

「…っち!」

舌打ちした!!

スチュワートが!あのスチュワートが!!

舌打ちした!

そこまで!?ちょっと片付けなかっただけで!?

心が狭いと思う!

このまま寝たふりをしていたいが、どうせ起こされて怒られるならせめて自力で起きたよという感じでいきたい。

「う、うーーん」

我ながらわざとらしさ満点の目覚めの伸びをする。

スチュワートがすぐさまベッドまでやってきた。

怒られる…。

私は覚悟を決める。

しかし。

「おはようございます。」

「お、おはよう…」

若干びくつくのは仕方ないだろう。

だって、舌打ちするスチュワートなんて初めて見たのだから。

表情は見えなかったけど、きっと鬼の形相だったに違いない。

いや、それともやはり無表情だったのか?

どちらにしても怖いのだが。

「いかがされましたか?」

「えっと…」

「喉が乾かれたのですか?どうぞ、水差しです。」

「あ、ありがとう…」

びくびくしながら受け取る。

彼は今何を考えているのだろう。

無表情なのでさっぱりわからない。

水差しを返す。

「朝の湯浴みの準備が整ってございます。」

「そ、そう。」

「朝のお支度が済み次第お食事となります。」

「わかったわ。ところで…」

ごくりと喉をならす。

地雷だとは思うがこのまま黙っていても怖くて仕方がない。

ここはあえて踏み抜く。

「さっきまで私の机にいなかった?」

「…それが何か…?」

「いえ、何かなって思って。」

「ただ、裁縫道具が出ていたのでまた作品が出来たのかと思いまして。」

「ああ、今回のは処理は不要よ。」

だから怒らないで。

「ええ、殿下への贈り物のようですね。」

「そうそう!まさしく!!」

「何故今更?お嬢様の作品は私が全て処理しますので、わざわざ殿下に渡さずとも…」

ちらっと机を彼は見る。

「私も面倒なんだけどね、テレサ様から出された課題なのよ。」

「…………課題………」

「そう。だからあんな。」

私はちらっと机を見た。

「そうでしたか。」

何故か少し口元が動いた。

何かを形どろうとしていたが、結局わからず元の無表情に戻った。

「あれは後で片付けておくわ。…湯浴みの準備は整ったのよね?」

「はい。」

「じゃあ、行ってくるわ。」

私はベッドから降りてバスルームに向かった。

「……今更殿下になど自らの意思でお渡しする筈もなかったか……」

それは小さな声であり私とスチュワートの距離を考えれば絶対に聞こえないはずだった。

しかし、私の耳は問題なく捉えたのだった。



学園に行けばアリスがいた。

昨日同様殿下はいない。

アリスは王妃教育関係で昨日はいなかったけど、殿下は昨日今日となんでいないのか。

しかし昨日はいなかったアリスがいるのでそのぶんクラスが騒がしい。

「おはようございます!アリス様!!」

「王妃教育ご苦労様です!」

「あの!アリス様!今度我が家でお茶会をしますの!

是非いらしてほしいのですが…」

「アリス様!こちら我が家の領地で取れました蜂蜜です!

アリス様に食べて頂けたらと思いお持ちしました!」

予想通りクラスメイトは彼女に媚びを売っている。

そのひとつひとつに面倒臭がるでもなく笑顔でこたえていくアリス。

「王妃教育はやはり大変なのでしょうか?

目の下に隈が…」

「ああ、これは課題に手間取ってしまって…」

「まさか、寝ずにやられたのですか!?」

「なんと、次期王妃として努力を惜しまないそのお姿に感動しました!」

…私もやってたんだけど、誰も感動はしてくれなかったなぁ。

誰かを感動させたくてやってたわけじゃないから別にいいけどさ。

「しかし、寝る時間を削ってまで課題をされているという事はもしや殿下とのお時間がとれていないのでは?」

「いいえ、そんなことありませんよ。

ご飯は毎食一緒に食べてます」

「毎食?」

「ええ、今、私王城でお世話になってますので。」

「なんと!」

「既に王城入り!」

クラスが歓声にわく。

「だから、寮にお戻りにならないのですね!」

「王城に与えられたお部屋は殿下の近くですか?

それとも既に同じ部屋で寝泊まりを?」

言われてアリスは真っ赤になる。

「違います!私の部屋は使用人用の屋敷の一室です!」

その言葉にクラスメイトが怒り出した。

「なんだって!?」

「次期王妃たるアリス様を使用人用の屋敷に寝泊まりさせるなんて何を考えてるんだ!」

「…さてはあの人の策略では…?」

「アリス様が王妃になると決まったも同然だというのにまだアリス様に無体を働くとは!」

「立場を分からせるべきですよ!」

「あの、落ち着いてください、その、あの人が誰かわからないですが、王妃教育担当の方々の近くにいた方が勉強が捗るのでこれでいいんですよ。」

「素晴らしい!あの人をさりげなく庇いしかも無体を働かれたにも関わらず許すだけでなく、与えられた劣悪な環境に良いところを見出し活用するとは!」

「あの人涙目!」

「今更どんな手を使ったって王妃の座も殿下も手に入らないのにね!」

クスクスと笑い声がおこる。

それを不思議そうにアリスは見ていた。

…アリス、あんた本当に『あの人』が誰を指すのかわかってないんだね…。

そしてクラスメイトはそれに気づかないと。

こうやって遠巻きに見てるぶんには本当に面白い。

即興の漫才を見ているようだ。

私は今日も誰にも構われずルンルンで学園での授業を終えた。




そして、昨日に引き続きレッスンルーム。

私が一番に到着した。

アリスは皆に囲まれて中々クラスからでれなかったのだ。

そこにゆっくりとした足音が聞こえる。

決してのんびりとしているわけではない。

貴族は優雅に歩く。

走るなんてご法度だ。

ゆっくりと歩けば歩くほど美しい所作と持て囃される傾向があるが、ふざけているのかというほどゆっくりと歩くのもNG。

まさにこのゆっくりとした足音はゆっくりだけどゆっくりすぎないベストな速度であった。

貴族の歩き方の見本といえよう。

…この速度が必要に迫られてやっているのでなければ。

そんな足音がレッスンルームの前で止まった。

そして入室する。

入ってきたのだが顔は見えなかった。

いつものことである。

「手伝いますか?」

「ああ、もう来ていたのか。…頼む」

言われて私は近づく。

そして頭をさらに超えた高さにまで両手で抱えて運んでいた本を何冊か受け取る。

漸く顔が見えた。

薄茶色の髪に灰色の瞳。

母親によく似たキリッとした顔立ち。

貴族の美形に見慣れていると大したことがないと感じるが平民枠で考えればかなり外見が整った方といえる。

「しかし、相変わらず量が多いですね。」

「これでも厳選した。」

「厳選という量ではありませんよ」

私達は机に本を置いた。

それだけで机がいっぱいになってしまった。

この本のせいで彼の足取りがゆっくりだったのだ。

「男爵令嬢はまだか?」

「クラスメイトに囲まれてましたからまだではないでしょうか?」

「はあ。既に王妃気取りか。」

「と、言うより周りが彼女を王妃として扱ってますね。」

「太鼓持ちを既に抱えるとは…」

彼はため息をついた。

アリスは多分そんなこと思ってない。

純粋にお友達が声をかけてきたから話しているのだ。

「彼らは皆アリス様のお友達ですよ。」

私の言葉に彼は鼻で笑う。

「王妃がお友達ごっこってガキかよ。

お友達だと思ってるのは男爵令嬢だけだろ?」

「….まあ…皆さん必死なんですよ、次期王妃に気に入られたくて。」

「次期王妃はお前だろう。」

「優秀な教育係の手により私は来月の舞踏会を経て婚約破棄されるのです。」

肩を竦めて私は言う。

そうなるといいなぁ!

頑張れアリス!頑張れ教育係!!

「……そうはさせない。10年だぞ。10年も殿下の為に頑張ってきたというのに、身分も礼儀もなってない小娘に奪わせはしない。」

いやいや!奪って欲しいんです!

「では、どうするのです?」

「潰す。」

本格的に不味い!

「王妃教育の学問の壁で潰してやるし、二度と王妃になりたいなどと世迷いごとなど言えぬようにしてやる。」

あ、これほっといて平気だ。

詰めて詰めて詰めまくり結果として王妃に必要な知識を短期間で手に入れられるパターンだ!

「全てカイル様にお任せしますわ。」

「安心してお前は堂々としていればいい。

しかし、そんな状態ならクラスは居心地悪いだろう。

王城に自習しに来るか?」

「それは結構です」

私はきっぱりと断った。

居心地いいです。なのにカイル様とのマンツーマンレッスンをわざわざ受けに行く理由がありません。

「……そうか、お前は強いな」

ふっと微笑まれた。

そこにバタバタと急ぐ足音。

明らかに走っている。

…昨日競歩だって言ったじゃん!

私はため息をついた。

「し、しつれーします!」

息を乱してアリスはレッスンルームにやってきた。

「遅い!」

「す、すみません!」

「お前の為に時間を割いているんだ!

特にリナさんは本来、来る必要がないのにわざわざいらしているということを忘れたか!?」

男性の叱責というのはかなり怖い。

私に向けられた訳ではないがかなり怖い。

アリスだってやはり怖かったのか縮みあがって…

「貴様!未来の王妃になんという口の悪さ!

無礼にもほどがある!」

え!?

殿下!?

私は横から出てきた殿下に驚く。

え?足音したか?

アリスの走っていた足音なら確かに聞こえていたが….?

「これは殿下、このような場所に何用でございましょう?」

「ふん!決まってる!悪の権化たるリナ嬢とのレッスンだ。

さぞや辛い思いをするに違いないと思い様子を見にきたのだ!

そしたら案の定!リナ嬢!!貴様、教育係を抱き込み少し遅れた程度のアリスを叱責するとは何事か!」

ぎろりと睨んでくる殿下。

この人、こんなにアホだったかな?

実に不思議である。

…と、いうか、今言った理由は半分だろう。

もし全てがその理由に当てはまるなら、昨日も来てないとおかしい。

昨日と今日の違いは何か?

答えは一つ。

殿下ってば、カイル様がアリス様を口説かないか見張りにきたんだなー。

何を馬鹿な事をと思わなくもないが、アリス様は大変男性受けの良いお方。

適当に呟いた言葉が彼の琴線に引っかかり惚れてしまう可能性もあるのだ。

実際彼の側近二人がまさにそれに当たることを鑑みれば殿下の行いは正しいといえよう。

モテる彼女を持つ彼氏って大変なんだなー。

「殿下。それを、本気で仰っていらっしゃるのでしたら今一度帝王学を一から学び直すことをお勧めします。」

「なんだと!?」

カイル様の冷静なツッコミに熱くなる殿下。

「さて。見学がいるのは想定外でしたが授業をはじめます。

アリスさん、おとといお伝えした通り学園.の成績表はお持ちになりましたか?」

「はい!これです。」

「では拝見。」

言って彼は成績表を見る。

「算学が一なのが非常に不味いですね。」

五段階評価で一とは…しかも学園の成績評価方法は相対評価。

マジで最下位と言われたに等しい成績だ。

「しかし、現代文学と古文学が三と同水準維持は珍しいですね。」

本当。大抵は古文がひとつ下がる。

「私、文字読めなかったので古文現文の区別つかないんですよね。」

なんと、文字が読めないことがそんな働きを生むとは!

「文字の読み書きが出来ない状態で学園に入学とは…。

つまり、入学試験を受けなかったんですね?」

「え?入学試験なんてあったんですか?」

「ありましたよ。」

私が一言付け加えた。

まあ、学力的になんの問題もなかったから特に心配はしてなかったけど、万一落ちてもお金で解決できる緩いものだ。

でも、最初っから受けずに入学も珍しい。

さては男爵めっちゃ金を積んだな。

「全く、今の学園の入学試験のあり方に私は常々疑問を持っていました。

これは一言学園に提言すべきですね。」

「しかし、アリスは努力し文字の読み書きをマスターした!

文字の読み書きが出来ないものにも広く門戸を開くべきだ!」

はあ…と、ため息をカイル様がついた。

こいつ邪魔なんだけど的な視線を送る。

「殿下…。文字の読み書きが出来ないレベルの者は十中八九生活苦です。

そんな彼らには学園に通う金銭的余裕はありません。」

「ならば王家から援助すればよい!」

「殿下素晴らしい考えです!私は文字の読み書きが出来るようになって世界が広がりました!

是非私と同じように文字の読み書きが出来ない者に手を差し伸べたいと思います!」

「…でしたら、貴方が王位を継承した暁にはそういう法案を議会に提出されればいいかと思いますよ。」

色々言いたいことはあったのだろうが全て飲み込んだようだ。

「では、成績の続きを…文字の読み書きが出来なかったせいで…いやおかげで…帝国語も三の成績を保持してますね。」

「話すのは苦手ですが、読み書きは出来ます!」

「帝国語は話せてなんぼですからね?」

「しかし、入学してから僅か一年で王国語だけでなく帝国語の読み書きをマスターしたのは素晴らしい成果かと。」

思わずフォローしてしまう。

「確かにそれは認めよう。アリスさんはどのようにして文字を覚えた?」

「はい!とにかく本を読みました。」

「ほう?」

「学園の図書室に毎日通って絵本から初めて今では大衆小説が問題なく読めるようになりました。」

図書室とな?

ああ、さてはそこでお兄様に会ったのですね。

あの、小動物ならアリス程のおばかさんならビクビクせず接することが出来たでしょう。

「なるほど、図書室なら本はタダだものな。」

「はい!おかげでたくさん読めました!

平民だった頃は文字の読み書きも出来なかったですし、本は高価ですし、一生縁がないって思っていたのでたくさん読めて嬉しかったです!」

「そうか!本が好きか!」

「はい!大好きです!」

「そんなお前にこれを貸そう。」

言って視線を机に山積みされてる本にうつす。

「これは…」

「今回は王国内地理に厳選した。」

「ちり…」

「因みにお前の成績は二か。」

「行ったことの無い場所のことは中々頭に入らないのです…」

「勉強の為に世界一周する気か、たわけ。

本とはそこに行かなくても知ることが出来る素晴らしいものなのだ。

しっかり活用して覚えろ。」

「まて!こんなものを覚えている暇はないぞ!」

殿下が口を挟む。

「それは何故でしょう?」

「来月の舞踏会ではそんなもの使わない。

使うものを優先して覚えるべきだ。」

「具体的に使うものとは?」

「礼儀作法。…今のアリスで何一つとして問題はないが、誰が何をして足を引っ張るかわからないからな。

完成度を上げることに問題はない。」

そう言う殿下に対してカイル様はこめかみを抑えた。

「…頭が痛い…私は本格的に殿下の教育係に苦情を申し立てることにします。

…それは置いておくとして…リナさん。」

「はい。」

「説明を」

「畏まりました。殿下、結論から申し上げて、アリス様は早急に地理を学ばれるべきです。」

「何も不要とはいわん!だが、それは今ではないだろう!」

「いいえ、まさに今です。」

「何故!」

「舞踏会にて使うからです」

「…使う…?」

「地理を…ですか?」

「はい、舞踏会でアリス様は無言で過ごされますか?

それはあり得ません。まず不可能でしょう。

ならば、何を話すか、です。」

「はい!刺繍の話をします!」

「ええ、趣味の話も大事ですし、盛り上がります。

しかし、王家主催の舞踏会に招かれる貴族令嬢との語らいは趣味の話だけでは終わりません。

ある程度仲良くなり場の空気が温まれば次の話題に移ります。」

「次の話題?」

「殿下もお分かりになりましょう。

殿下の子息達とのやりとりをそのままに私達令嬢もやっているのです」

「…」

漸く思い当たったのか、殿下は唇を噛む。

「つまり、趣味の話が終わったら政治の話に移るのです。」

「せーじ!?私には無理!」

「勿論、今回はそこまで求めません。

しかし、何も話さないのは不味いです。

そこで、地理です。」

「なんで政治から地理に…」

「招かれている令嬢は王国内の何処かに領地を親が持っているのです。

その位置、特産品、良い点、悪い点などを理解把握しておくことで会話を繋げるのです。」

「な、なるほど…」

「わかったか?」

「だが、この量は多いだろ!」

殿下が負けじと言い放つ。

確かに多い。この量は嫌がらせが八割本気で必要と思ったが二割だ。

「王国は広いのです。しかも未だ今回の舞踏会の招待客が不明な以上全て網羅する必要があるのです。」

「招待客リストは私が早急に用意する!」

「でしたら、リストが用意され次第その領地に特化した授業を行いましょう。

しかし、現在は不明なのですからひとまず全て読みきってください。」

「今日一日で?」

「そこまで面倒みきれません。次回の授業までの宿題と致しましょう。

とりあえず、今はこちらの入門的書物を読んでください。」

言ってアリス様に手渡したのはブロック塀かと言いたくなる程の分厚さをほこる本だった。

アリス様もさすがに顔をひきつらせる。

「さあ、特に重要なところを一緒に確認しましょう。まずは…」

そういって確認したページが一万を超えるのに、数時間を要したのだった。






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