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RELIS  作者: 孤独
謡歌編
634/634

進歩


はぁっ……はぁっ……



お腹の痛み、眩暈、足の悲鳴。人の限界を迎える。それでもそれは個体の限界。

そーやって告げられる。

ヤバイ奴が、先頭を歩いている。


「休めないわ。謡歌」

「……バードレイ、あなたは何をするの?」


生き伸び続けること。それではダメだ。だからって、何をしている?

ぼやぼやしている目でも分かっている。それは謡歌も、後ろからついてくる……



「…………」



ヒュールも同じようにやっている。

そう、


「歩いて、どうするのです?」

「歩くだけよ」


人は利便性に慣れすぎてしまっている。今、バードレイが言ったことが面倒臭いとかあるかもしれない。しかし、それは距離や目標が見えているからだ。そんな考えになる。

バードレイには目標あれど、あまりにも無限のことだ。少しずつ"SDQ"を黒く染め上げて消しているところを見て、知る。

直接、バードレイが触れないと"SDQ"は消えない。クォルヴァが増加を止めて、バードレイが消すという作業。そう簡単じゃないのは分かっているが、途方もないが先に来る。このフォーワールドだけならともかく、バードレイはそれでもやる気だ。



「世界中を歩くの?」

「ええ。正確には"無限牢"の中、全部。くまなく、ね」


言葉には、行きたい場所や行く理由を全て粉砕していることだった。


「私だけが出来ることでしょうね。全部、"SDQ"に包まれているけど」


これまで数多くあった異世界の全てを歩く。夢みたいで素晴らしい事だけれど、そこに観光目的も、楽しさもあるとは良い難い。もう景色なんて、どこも同じだろう。飽きというか、死にたくなる無駄ばかりだ。それでもそれは、イカレていても行動だ。文字通りの進歩だ。


「私ね。死にたいなら、そんな感じで。やりたい事の中で死にたいの。選んで死ねるくらいの強さが欲しいわ。持つべきモノよ」



オカシイよ。


分かってたけど。分かるけど。


じゃあ、それは



「あなた1人でやるの!?」

「ええ」


そんな惨いことを刑や罪と思わず……。

そして、おそらく。クォルヴァのようにわずかながらだ。本当にわずかながら、


「叶わないのなら、私でもそれまでだったのね。何が足りないのかしら?友達?共通の仲間かな?」

「……じたばたしないでって、良い事だと思いました」

「じたばたでもないわ。管理人がいては世界を自由には周れなかった。世界旅行なんて、誰だって夢の1つに入るでしょ?」

「こんな白だらけになって、住めない場所ばかりなった時に!それが夢だったなんて!答えてしまうこと!!どー考えてもあなた、おかしいです!!あなた、なんで……」


イカレている。

常識が通じないってレベルじゃない。

なにがそうさせている。なんでそんなことを思う。これから、あなたの時代が作られるとしたら、あなたのような人は生まれて欲しくない。そう願いたいことだ。

願うついでだ。


「バードレイが思っている世界は、どーいうものなんです」

「さぁ?流れに身を任せるわ」

「流れに?」

「ゆっくり考える時間はあるじゃない。どんなときでもね」

「…………」


はぐらかされているのか。本当に何も考えていないのか。

分かっているのはこんな惨状だからこそ、その答えが人間のそれではない事だろう。生きようという気概なく、寿命など見向きもせず。バードレイのゆっくりは様々な時代を指していると、謡歌にも分かるくらいだ。絶対的な強さと引き換えになってしまった代償なのか?そうでなければ、いけないことだったのか。

それでも正しいことは、バードレイはバードレイなんだろう。これが事実だ。

自分本位なのは間違いない。

だからって、



「どーしてこーなるまで、居たんですか!?」



それを正しいと伝えてしまってはダメだ。

そして、謡歌も分かったんだ。



全人類はバードレイに救われていた。


ではない。


バードレイが全人類の敵となって、人類を救ってきたことを。



「隣に誰か居なかったんですか!?あなたの声を拾ってくれる人!あなたを慕う人!独りでこれからを過ごすというのですか!?そんなに凄い力を持っていて、これから長く独りでいるのはあんまりです!!あんまりだよ!」


管理社会を産むキッカケは、この"時代の支配者"の存在だ。

かろうじて、人類がそこから奇跡的な再建を始めたのだ。そして、こうして懸命な会話をして分かる。彼女は凶悪ではあるが、純真としたものではない。飾られている悪なのだと。

悔いれば、



「あなたを早く知りたかった。意地悪だけれど、分かってくれる人でいて欲しいよ」



時代の波がまた襲う。人類が滅ぶと、繰り返してくる波だ。

その波を一度ならず、また今度も、その力で跳ね返す。

だが、波は大きくなって、今度は自分が人類を滅ぼそうとする物語。

人類が行なう、歴史最大の挑戦である。



ドタァッ



「…………戦っちゃ、ダメ」



謡歌は衰弱しながらも、歩き続けていた。

転んだとき、死が直前と思った。

それでも声と言葉は、意志と同じことだった。



「お兄ちゃん……」



けれど、願いは叶わない。

人類は形が違えど、繰り返してきたことであるから。これから先も変わらず。

ただ、"時代の支配者"という最大の敵だけは消えず……。変わらず、君臨していた。



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