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RELIS  作者: 孤独
謡歌編
632/634

生道


ドタァッ



「……………」

「……………」

「……………」

「……………」




歴史、時代にはこう書かれる。



 消えた過去と現在、未来から。

 選ばれた7人が消えた時代を持って、新時代と戦うこととなった。

                                   』


彼等を見送り終えた残った者達は、ここまで堪えていたものが決壊し、その場で恐怖と悔いと無念。そして少しの希望で、地面へと倒れこんだ。

今を支えていた者達を失って、未来を護るため。

それに意味はあったかどうか?

ただ、分かっているのだ。

ここに残る者達には悔しい気持ちで、分かっている事がある。



彼等が、今の自分達を助けるという意味がない。



分かっている。受け入れてもいた。

残る人類は一丸となって、彼等を許すための悪行もした。記憶操作をしてでも、それが正常だって判断をした。歴史が違っていると答えても、今の人としては間違いではないからだ。

命が尽きたと知り、心はそれで死ぬ。

百数人の人達が、彼等を失って20人ほどとなった。

まだ遣り残しがあるように、立ち上がった。



「やることがないのである」



そう告げてもだ。行動は違っている。



「死も、もう止めない。法はないのである」



苦しいと感じているから、生きようとする。その辛さを感じながら、最後の1人になろうと1人は群れから離れていく。酷いかもしれない。けど、酷いことかもしれない。

立ち上がった20人には、そんな彼の歩みについていく勇気も気力も、体力もなかった。ここでまた死んでいった。

それでも去った彼が残すものに、死でも残る。

薄い意識の中、懸命に見上げて映ったものがもう、羨ましい事ではない。



パリッ



「…………」



高いところに座り、汚く乾いた残りのビスケットを頬張り、倒れる人々の様子を分単位で記録する。

こうして語られる、人類の終焉の様子を納めて保管すること。

千切れてしまうかもしれない。抹消されるかもしれない。

だが、今の者が今を残すことに罪はない。未来が今という過去をどう判断するか決めればいい。



人が、1人。また1人。命を散らしていく。



「!」



だが、彼のように。1人の彼女は立ち上がった。

生きたいからじゃない。苦しみから逃れたいだけじゃない。



それでも記録をとる彼からは、その彼女の動きが生きているという事を認識させた。

絶望しかない雪が降り始め、もうここも危ないというのに、生きていくって事を思った。

どんな恥を知ろうか、どんな苦を知ろうか。


「ううん」


きっと、笑いたいんだ。幸せなのかな。悔しいはもう、彼女の瞳にも。彼の瞳にもない。

これからの時代に彼女は説いた。

胸中。正直に。



「苦しいよ」


時代に生きること。


「無茶だよ。諦めてよ」


人ではないから、その言葉がよく響く。


「このまま、全部が終わって欲しいの。人の結末はもう決まってる。お兄ちゃんとは、戦わないで……」


時代はなんと言うか?


「そうかしら。それって、あなた達が言う常識の中ってもの。根底から否定しなければ、人は変われない。人が人を決めるのもおかしいこと」

「……あなたがどうやって先の時代で生き残るか。考えたの。すぐに分かったけど」


それだけで苦しくなる事だ。今、自分達が弱く、崩れているというのに。

やり方がとても単純なんだ。


「ホントに生きているつもりなの?私、死んじゃうよ。やっぱり死んじゃう。一緒にいられる時間よりも遥かに長い時間。あなたは生き続けるの!?どーかしている!!苦しいって、生きるって辛いのに……今が辛いのに。あなたは生きて……」

「それが時という概念」

「なんで人がそれになろうとするの!?無茶苦茶!神様になろうとしても、そんな代償を払ってすること!?誰もがそれを、願いや希望にするだけのこと!そうならないの!?そこまでのことなの!?」

「ええ、すること。あなた達が死んでも、忘れてもね」


ただただ、待っている事。んなわけでもないか。

彼女の必死の訴えなど、声量の違いしか時代は感じてくれない。


「あなた達の希望と戦うのも、私がやりたい事も、どれも一緒。別にね、神様になるのは目的でもないし、そーいうのとは違うから」


堪えていたのだろうな。

きっと。

でも、時代はもっと膨大なものを抱えている。

泣いている人、死んでいく人、小さい錘にしかならないんだろう。


「傍にいて、いい?私は寂しい」

「……あなた達がいられるのなら、構わないわ。私はあなた達に何もしない」


動く時は来た。


「よっ」


それは普通に歩いた。懸命に時代と共に歩んでいく。腐りそうな体を、花のような心で動かす。

時代が向かう先、ハッキリ言って。目的地などない。しかし、目的はある。彼女の想定を遥かに上回る、絶望。虚無感。そんなもの時代にとっては、なんも意味はないんだろう。

生きている2人が、その無謀を知った時。


心と人の死に辿り着いた。




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