童謡
空もないところで
地を踏んで人が生きている
人が見上げて、空がようやく見つかった。
空は照らしながら、人へ微笑んだ
♪ ♪
歩んできた跡を長く見て来た
転んだ場所を心配そうに感じた
交わった足の深さに震えても
進んでいくその先に同じ光はあった
人が戻れない道を振り返り、止まっても
泣いて拒んでも、人も地も空も行ってしまう
人が分かち合い、笑い合っていること
いつかの人も、そこにきっと行けるよ
♪ ♪
熱い土を踏みしめる人
どこまで歩いても終わりはないよ
さぁ走りだして進んでいこう
焦らなくても待っていることがあるよ
それに何を求めているのだろうか
道を歩く人達
♪ ♪
ゆっくりと変わる時の変化にも
荒れ狂う嵐の現在にも
どこにでも人達は生きてきて
様々に在られていた
悲劇と出会ってしまった人が
立ち向かえたり 挫折を知りえたり
強くなっていかないと できないことでもいいと
許されなくても 人で在らせて
♪ ♪
青い空を見上げる人
君が空を分かるなら 人だと望んでいるよ
輝き光らせて見渡していこう
先は今を楽しんでできているだろう
自分もそう見つけていけばいい
人を知った人達
♪ ♪
そうしていなくなる人 止まってしまう気持ち
動かなくてもいい 痛いも分からない
分かっていることを伝えていく
伝わっているんだね
♪ ♪
地の足跡を見る者
そこには人がいただけではないから
空の明かりはまだ眩いだろう
どんな過去にも明かりが待っていた
人がいない時も
空と地は人を待っている
人の帰りを待っている
それはずっと
ずっと
ずっと
◇ ◇
曲名は"そこに人達はいた"……だそうである。
どんな時にも人がいること、どんな時にも歩くための地面と見上げる空があること。待っている者がどんなときにもあること。
そーいう想いを込めて、謡歌が作ったという。ちょっと照れくさいものである。
声だけであるから、上手いとか下手とかいう状況じゃない。
伝えただけって、その気持ちだけである。それが精一杯。
「ははは、恥ずかしいなぁ」
「ううん。良かったよ」
春藍は頷く。結構音楽は好きだし、彼からすればやっぱり上手くないって、思ってそうだが。
「次の世界で音楽とかがあれば、謡歌の気持ち。作ってもらうよ」
「え」
「芸術って残るものさ。継げたり、護れたりする。うん……そーやっているものだよ」
春藍は謡歌をナデナデして、それを約束した。最期に兄らしいところと、兄なんだなってところを、思わせ、思い知れた。嬉しいねぇ。
「お兄ちゃんは……」
泣くなって決めてたけど、やっぱり泣けって言ってる。
そう言っている。
「覚えていてくれる?」
「うん」
飛びついて、その胸を叩いて
「私!!絶対に!お兄ちゃんを、覚えてるっ!水羽ちゃんも!ライラさんも、アレクさんも!夜弧さんも!ロイさんも!!そこにっ……バードレイもっ」
「……………」
「覚えてるからっ!!死んでも、忘れられない事!だからっ!」
全部を正しく選べないこと。最強だろうと無敵だろうと、一般人でも、同じ事であった。何を選べばいいか、分からずに死んでいくこと。在り来たりでも、受け入れる。難しいなぁ……。
「どうか、みんな。元気でいてね」
「うん。謡歌も元気でいるんだよ」
どこにも行かないでって、強い力だった。強い願いという、悲しい現実だ。でも、その力を徐々に、心を込めて解いていく。謡歌の崩れた泣き顔が辛いことをさせている。でも、お互いに思っている。
ギュウゥッ
「お兄ちゃん……」
「兄らしいこと、何もしてやれてなかったね」
だから、自分の方が辛いって伝える。謡歌に悲しいことをさせたくない。兄っぽいかなって、くらい。
抱きしめて。時は止まらず。
謡歌の方から徐々に力が抜けて、離れたとき。春藍も、ゆっくり離した。
泣いている眼に、泣いていない眼。
「ごめんね」
「……ううん」
でも、伝わったものはちゃんとある。分かっているんだ。
大丈夫。
「護ってね」
兄は護りたいものを護ってくれる。私がそうでないって事じゃない。もっと大切な者がそっちに沢山いるから、選んだんだ。苦渋って事にならないのは、苦しんだからだ。
一生懸命に護り抜こうと見て来た、知っているから。分かること。
ゴゴゴゴゴゴゴ
ガシャァッ
そして、春藍達がタイムマシンに乗り込んで行く。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
おかえりも、ただいまも。聞けない。
表情が見えなくなると、吹き出てくる。泣いちゃうよ。
ビイイィィィッ
「いつかまたっ」
ビイイィィッ
「お兄ちゃん達に会いたいから!!私達!」
死んでも、待ってるから!
時代がいくつも変わっても、終わっても、始まっても……。
人は終わらない。
パァァァンッ
春藍達は、とうとう未来へと飛んでいった。
これで新たな未来に謡歌達が残したコトは無事に届くだろう。
現実は終わることも確定した。