面会
反骨心は大事なものだ。
この世の中。降ってくる死の雪を何気ないものだと思い、とても小さいスペースで穏やかに平穏に過ごしていく様。
1つの人間の強さを思わせる。一方で、
「こう野宿が続いて疲労は溜まっていくばかり」
「居住を第一に造りあげることを優先にしておくべきです」
「みんなのため、協力して設営しましょう」
0からの人類生活のスタートにしては、ゴールは0.01ぐらいで来ちまう。滅亡というオチ。
ここに残そうとする物。全ては潰える。
ゴールにボールを入れた結果だ、実績だ、楽しさなんてものもだ。
「いっくぞー!」
「こーい!」
明日死ぬかもしれない。それを遠くないって知らせを影に落とさせ、子供達が遊んでいる姿を罪と問うか?
お爺さんが最後の楽しみで選ぶ飯が、餅ということが罪に感じるか。
時計の秒針を指で止める悪足掻き。壊すことを何に思う。
「……………」
することもなく、ただただ待つバードレイ。
住民達からは当然、敬遠されているものだ。
しかし、彼女が住民達の様子を眺めることくらい許されていて、何を抱かせるだろうか。進んで向かうことはない。
むしろ来られる。夜弧がやってきたように
「少々、宜しいであるか?」
「私はお悩み相談室をやっておりませんけど」
「どうかね?」
2人目はヒュールであった。
「アレク達以外に生き残る者がおるのなら、ぜひとも。私共は託したいのである」
「私はあなた達を滅ぼしに来ただけ。約束した以上、今は動かないだけ」
「ならば訊いてくれ。そして、答えてほしいのである」
隣に座って、目を合わせずとも良い。
人の論である。
「君が救えないにしろ。滅ぼすという言葉は偽りであろう」
ヒュールは何も知らないが、そこから導く答えもある。
「あくまで君が滅ぼすきっかけを背負って、生きようとするかのようである。それはまるで魔王のように振舞った人間の仕草のようである」
バードレイはアレク達とは違い、逃げずに真っ向から"SDQ"と渡り合える。
「罪を背負うことであるのか?君だけが生きた世界に、君は何を知れるというのである?」
分かったもんじゃないさ。彼女の若さある見た目に反して、自身以上の人生の執着と経験を物語らせている。
「くだらないものじゃない?人の命の在り方って」
「くだらない?いいや、失敬な言葉であるな。私は人材教育の管理を任されておったからだ。そのような解釈は管理人からも思われた節はないのであるよ」
ヒュールも、バードレイも尖らない。
「……………」
「……………」
バードレイは問わない。だから、ヒュールから尋ねるしかなかった。
きっとどう転んでもそうで、選べることを抱けただけか。
「こうして生きて、残すことをくだらないと問うのであるか?」
住民達の記憶操作はほとんどが終わっている。滅亡の恐怖を緩和され、まだ意図的な記憶操作、思念の妨害が続いている間で残されている、前向いて生きていく生活が今。
偽りだろうと思うか。
「私達は死ぬのである。だが、生きていく事にお前はどうするのである?」
その強大な力で、敵という悪意を見せて、これから先の命を奪っていくのであるか?
「あなたはそうして欲しいの?」
「率直に、わずかな希望を信ずるなら、人類を立て直したいのである。お前がやるのは立て直す糧やきっかけを産む、損な役回りと私の見立てで感じたのである」
"時代の支配者"などと、大それた名を借りて、人の本能にある生存本能を揺らす力だ。
恐怖が生きるという希望を作るなんて、誰かが言っていた気がする。
この全滅における恐怖は誰かがしっかりと、見届ける義務がある。
「あなたは記憶操作をしないの?」
「するつもりはないのである。住民達の混乱を抑えられる手段が、そのような外法な事である。いや、こうして面会できるとは私も思っておらんのであったよ」
「……それは確かに。私って優しいから」
「うむ」
ヒュールの立場からしたら、ラスボスに意見が出来る凡人代表だ。特別な力を持てず、友達というカードもなく、奇妙なことにできる、下々(しもじも)からの言葉があった。
滅ぶ文明の前に、まだ生きようとしている住民共の姿だ。
「醜いであるか?」
「個人が決めなさい。あなたも重大な任をついていたのでしょう。記憶を作り変えてでも、人らしく生きようと扇動したのは大きな決断と功績じゃなくて?」
バードレイは関係ない、そんなフリ。当然でもあるか。
「私共に力はないのである。それでもこうしてでも。あなたを乗り越えるため、こうして共にするための人類の覚悟を削ったのである」
「それで?」
「ありがとうである。どうか、私達人類の最後の1人になるまで、あなたは見届けて欲しいのである。この頼みをしたかったのである」
「……そうすれば、あなた達の生き方が私の中に宿るというわけか。戦国時代の真田家?かしらぁ」
「言論の封殺が残酷であるように、存在の封殺など1人1人の人間が持ってはならんであろう?君にとっては過去であってもである。こんな時でもあるからである」
コロコロ……
そんなタイミング良く。子供達のサッカーボールがこちらの方へ転がって来た。
「むっ」
「ヒュールさん!蹴ってー!」
「分かった。蹴るぞぉー」
馬鹿じゃないって思わない。そんな平和の切り抜き。
ポーーーンッ
子供達に渡る上手いパス。ヒュールはパスをし終えた後、バードレイの方に振り返る。
一方で、バードレイはずーっと子供達を眺める。この時、ただただ理不尽な者でないとヒュールは確信する。おそらく、自分の読みにも合致した。
「君が造りし、支配する世界を問わないつもりである」
ビジョンもないのかもしれない。
これからっていう将来の子らしい一面もあるだろう。
「だが、今くらいの親切さがあって欲しいのである」
「それは当たり前なんじゃない?何気ない事を忘れるくらいのこと」
ただ意地悪なだけしか残らないというのなら、意味なきこと。