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RELIS  作者: 孤独
終焉編
623/634

達成

誰も知らない世界。



「伊賀吉峰。お前は必死になっていたよな」



誰も知らない時代。



「人が成るべき人になる。……そんな時代。お前は求め、走った。また、ダーリヤ。お前も。人類の進歩を掲げ、世界に働きをかけた」



激しい戦争の末。

世界全土で死者だけでなく、絶望を撒き散らした。

いかに多くの人類を従えても、強力な軍事力を有しても。人社会に人は不可欠。

強大な支配者を失って、世界のバランスは崩れた。

生き残った者達はこの穴を埋めるため、とある技術を人類に適応する義務化をした。人の生産はそう易々とできず、人の能力を向上させるという。人類の多くが敬遠し続けた問題に飛び込む結果となった。




「その中で死んだお前等にとっては悲願だったのか、皮肉になったのか。わかんねぇな」



生き残っているのは、三矢正明だけである。それも相当なほど年老いている。

これはオリジナルの彼である。もう本体の寿命が近いことを悟り、あの頃の者達に会っていく事が最後の勤めと思っている。

伊賀吉峰とダーリヤ・レジリフト=アッガイマンの両名の肉体を再現する事ができ、眠る彼等の様子を眺めていた。

報告って形なんだろう。

それらは本人ではないって事を知っているにも関わらずにだ。


「あなた方の悲願の通り。人類の9割は俺達のゲームによって、人間の個性、ステータスを選び、生きていける世界になった。残りの1割はまぁ……死ぬのかな?」



あの戦争によって、数多く隠れていた力は曝け出され、核となる能力を研究させてもらった。

人々が努力をしようと到達しない、その奇跡を科学の力で持って、再現。さらには安全に教養できるまでに達する技術へとなった。

それはとある男の止められない暴走が生み落とした、狂気な人工知能と奇跡の人体改造であろう。



死も人生も賭けて、たった一人の女の夢のため。

それだけで多くの人類に今のところは希望を与え、遥か未来で絶望を生ませる。奇跡な事だ。

そんな男が人間社会に癒着。結果、伊賀吉峰とダーリヤの求めた社会が作られるという、面白い事になった。



「夢は達成されたわけだが、デカイ代償だな。その目でこの社会を見ればどう見える?」



障害なく、差異もない、人間達の著しい成長。そして、知ったのは本当の限界だった。

幸せに困難なく、真に平等で自由過ぎる技術交流。そのため、人間と同じく物の価値もまた下がった。

法など必要なきほど、安定した秩序ある規律に喜びは6割減ってところ。感情の揺れが減っていく。



人間は強くなった。同時に、感情がいかに愚かであるかと知る事に、あまり時間は掛からなかった。



誰もが選ばれた者達になり、逆に選ばれない社会が崩壊し、憧れや夢を奪われる。何にでもなれるなんて社会は生命の概念を失った。

機械と同じく。

それらを強く否定する必要はないが……。




「人間っていう生物が変わった瞬間だったな。あんた等にとってはよ。良かったか、どうかわかんねぇ」



未来になって、答えを聞かせてくれ。

お前等は何を思う。



もう、お前達の望みが叶ってしまった。この時代の先で……



"時代の支配者"と、どう向き合う?




◇       ◇



バシィッッ



「肉体を変えているが、魂は同じでよ。それはバードレイとは技術違いだが、同じことよ」


記憶を掘り起こすとしたら、大樹の年齢ぐらいの残留思念よりも深海の底にいる生物の生態を探るほどの、深くて未知の領域。夜弧の能力の自信と、自らの生存への理由。三矢は精神力は穏やかな海のように響かない。

伊達に自ら、藺兆紗の"黄金人海"と接触しても、ある程度抑制できると言っていただけある。



「進んでいく未来を逆走して、過去の記憶を引きずり出そうとするのなら、お前の時間。足りねぇだろ?」

「…………」

「源記憶だけ引き出せるか?悪いが、長いこと生きてんだぞ。フェイクも混ぜるわ。くだらんくてな」



三矢は何もしていない。体の抵抗を奪われようと、完全なる自白すら疑わせる飄々とした態度。

夜弧が三矢の隠し事を割り出すことはできるだろう。

しかし、その割り出しの前に妨げるカードが目の前。いや、三矢の膝の上に乗っている。



「バードレイは起きちまうぜ。起こすぞ?」

「そちらを許すと?」

「はっ」



バヂーーーンッ



バードレイ、とばっちり!!三矢に屈辱のビンタを喰らう!

ジンジンと張れる頬に、脳内に来るショック。

パチリと起きるバードレイの両目。


「……痛いわね」


起きたはいいが、話しは聞いてねぇ。

ライラは一歩彼女から退き、夜弧も三矢以上の警戒感を示した。


「どーするよ?」

「私に言ってる?三矢くん。あなたの魔法のランプをやってるわけじゃないわよ」

「何を狙う。約束の反古を狙うつもり?」


その言葉に残虐性を求め続けたものか。


「……ああ。私、あなた達に危害を加えないと約束したかしら?」


そこに酷さを思わせない事。

自分の約束を守り、夜弧にすら興味を抱かない。それが夜弧に与えた屈辱というダメージは大きいもの。睡眠を妨げた三矢にしか、意識を向かせない。

三矢を押し飛ばして、立ち上がる。



「離れて寝るわ」

「おいおい。勝手に寝たのはそっちだろ」

「三矢くんと離れるだけよ」



解析すらせず。夜弧の"トレパネーション"を破ったと言える行動だった。攻撃も、防御も、回避もねぇ。ただただ、1つの工夫で三矢を護ったと言える。

能力で訊くことと、真意を問えること。


「あなたは死ねるの!?」


夜弧の咄嗟の言葉に寝起きに水をかけるくらいの衝撃。

微妙な変化は



「いくらでも死んでるわよ」



関わらないと言った自身の約束を破るものだった。しかし、ヒントにはならないだろう。

それっきりの回答で離れていき、また眠りにつく。

夜弧に調査されようが、三矢に調査されようがバードレイは気にも留めないだろう。

答えは三矢が語ったとおり。毒を打たれようが、クォルヴァとアレクの予測通り。夜弧はできても、何も成果を挙げられない。



「あなたも寝た方がいいわ」

「ライラ…………ですけど。この機を逃すなんてマネは愚策です」

「あいつは手を出してこない。けど、こちらからは手を出しても良いのかも。強いからやってる感じには捉えにくいけどさ」

「約束は護る主義だぞ。残り3日。アレク達が順調なら無事にはいけそうだ」

「休んだ後でしっかり問答をさせればいい。奴の言うとおり、意味がなさそうな感じがするけど。やらないよりはマシよ」



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